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松尾愛美さん(ひまわり訪問看護ステーション代表)人材が育って時期が整ったら事業拡大もvol.3


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事業を順調に拡大し、収益を確実にのばしてきた松尾さんだが、さらに事業を広げるには、人材の成長がさらに必要だという。質のよい看護や介護を提供するためには、スタッフが育ち、ツブがそろうことで、初めて新しい事業展開ができると。スタッフ教育、理念浸透のために松尾さんが行っているきめこまやかな配慮について伺った。

医療の知識はわかりやすく説明 スタッフの育成は日常業務のなかで実施

――松尾さんは訪問看護から事業分野を増やしていったわけですが、だからこそできることやこだわっていることはありますか。

まず挙げると、ヘルパーさんには医療の知識をわかりやすく伝えるようにしているということでしょうか。例えば、嚥下をしやすい背中の角度は「○度で」とイラスト入りで説明したり、食事にとろみをつけるときは「◯グラムで」「ソースぐらいのとろみに」と数字や事例を掲げて具体的に教えたりしています。うちのST(言語聴覚士)もヘルパーさんにはそのように伝えてくれているので、私の考えていることをSTもわかってくれていると思います。

 

――そうしたサービス提供のあり方や理念については、スタッフ全体にどう指導しているのでしょう。

「指導」といった特別なことをしているつもりはありません。むしろ、日常一緒に業務をしているときに、私が気づいたことを「ここはこうしたらいいよ」とか「これはよくできたね」というのを1対1で伝えたり、スタッフから何か相談が来たらそのつど話を聞いて答えたりというかたちが多いですね。
でも、いまはスタッフ数が増えて全体で35人くらいいるので、理念やサービスのあり方を1対1で伝えるというのは難しくなってきていると思います。立ち上げ当初からいる第1世代、その後入ってきた第2世代、さらに次の第3世代とスタッフの層が分かれてきて、組織も大きくなってきているので、スタッフの隅々にまで理念が届くようにするにはどうしたらいいかなと考えているところです。
その一方、私はいつも訪問看護提供のため事務所にいないことが多いので、スタッフとゆっくり話をする時間がなかなかとれない。自分の訪問の数も見直すべきか、ちょっと迷っているところです。

 

――松尾さんはいつも1日につき何件ぐらい訪問を?

きょうは7件でした。

 

――それではたしかに事務所にいる時間も少なくなりますね。

そうです。スタッフと時間をとって話がしたくても、結局は外からスタッフに電話して、切るときにちょっとだけ「調子はどう?」とか聞いたり、やってもらったことに対して「ありがとう」「よくできたね」と短く言葉をかけたりすることしかできないですね。私がそういう状況なので、上のスタッフたちには、ほかのスタッフの話やいろんな思いを受け止めるようにしてほしいと私は言っていて、実際にみんなもそのようにやってくれています。

 

周りの協力で仕事と子育てを両立 スタッフの定着率も経営も良好

――松尾さんはお子さんもいてご家庭もお持ちですから、仕事との両立も大変では。いまこうしてインタビューを受けていただいている時間もすでに夜7時で申し訳ないのですが、仕事で帰りが遅い日はどうなさっているんですか。

主人や義理の両親、同居している私の弟が子どもたちを見てくれているので大丈夫です。今日は鍋と焼きそばの材料を用意しておいたので、いまごろそのどちらかを食べているんじゃないかな(笑)。本当は子どもたちとももう少し遊んであげたいなとも思ってはいるんですけどね。でも、スタッフも私のそうした状況をわかってくれているのか、最近は夜勤の担当順を私なしで回してくれていたりするので、いろいろな人の理解と協力で仕事と子育てができていると思います。

 

――現在、スタッフ全体の定着率は?

うちはいいですね。転勤とかがある場合を除いて、ほとんどのスタッフが辞めずに続けてくれています。

 

――経営の状況はいかがでしょう。

うまくいっているといえます。立ち上げ当初に自分が会社に貸したお金は、いまも順調に返済が続いていますし、自分への給与も最近もらうようになりました。実は、いままで私は自分への給与は受け取らず、職員に給与を払うことを優先してきました。そういうこともあるので、周りのスタッフは辞めずについてきてくれているのかもしれません。


あかつきデイサービスのスタッフと

訪問看護の仕事の醍醐味をもっと知ってもらいたい

――今後やりたいことはありますか。

これまでうちで喀痰吸引研修を受けた人たちに、フォローアップ研修をやりたいと考えています。研修してその後やりっぱなしにするのはなく、何か困っていることはないかなどを聞いて、そこを補っていきたいと。うちのヘルパーだけでなく外のヘルパーで受講した人もいるので、その人たちが旅立っていった後どうしているかも、やっぱり気になりなります。

 

それと、看護師さんたちには訪問看護の仕事の醍醐味をもっと伝えてあげたいなと思っています。訪問看護は1人で利用者宅に行くのでプレッシャーが大きい。いまだに私も、初めてのお宅へ訪問するときなどはドキドキします。利用者さんの気分を害してしまって「もう来ないで」とか言われたらどうしようかとも思って。でも、やればやるほど楽しい仕事でもある。冒頭(第1回)でもお話ししたように、もうじき最期を迎えられる方のケースをお手伝いすると、大変だけども、それを上回って余りあるほどのやりがいがある。なので、そういうケースのときにほかの看護師さんも同行させて、訪問看護の仕事の魅力をもっと伝えていきたいと思っています。

 

ただし、いきなり最期の方のお宅に同行させても、それを受け止めるところまで経験や心の準備ができていない看護師さんたちは受け止められず、「自分には無理だ」と思って辞めてしまうかもしれない。なので、比較的元気なケースの方の担当経験をある程度積んでもらってから、「もうそろそろ同行させても大丈夫かな」と思われるようになった看護師さんに、「いまこういう状況で最期をお迎えになる方のケースがあるけど、一緒に行く?」と声をかけています。その辺のタイミングを図るのが重要でかつ難しいです。

 

――さらに事業を拡大することも考えているのでしょうか。

やはりスタッフの給料を増やしていってあげたいので、その意味で事業は広げていきたいと思っています。訪問看護ステーションだけでは経営が安定しないので。

それと最近、訪問看護が必要でない方にも訪問看護を提供するなど営利追及型の訪問看護ステーションも増えてきていて、利用者が不必要に訪問されても断れないで困っているという話も聞いているので、そうした事業者が入り込んでこないようにという意味でも、事業所を増やしたいと思っているところです。でも、すごく拡大したいというつもりはありません。事業所を増やすとしても当面は2ヵ所程度かと。というのも、事業拡大というのは人材がある程度育っていないうちはできないからです。だから、信頼できる人材が育って時期が整ってきたら、そのときはやりたいなと考えています。

お天気のいい日の外出。日当たりのいいデイの庭で日向ぼっこ。

(完)

<事業所プロフィール>

ひまわり訪問看護ステーション
病院の脳神経外科、内科などの看護師勤務を経た松尾さんは、「ひまわり訪問看護ステーション」の立ち上げ(2006年1月)と居宅介護支援事業所(同年4月)を開設、2008年より代表に就任する。2013年10月に訪問介護事業所、2014年4月に認知症対応型デイサービス「あかつきデイサービス横浜北」を開設。2012年から介護職員による喀痰吸引等が認められたのを機に喀痰吸引研修を実施。また、スタッフのために託児スペースも併設し、働きやすく子育てしやすい中小事業所を認定する「よこはまグッドバランス賞」(横浜市主催)を2010年と2011年に受賞。)



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