松尾愛美さん(ひまわり訪問看護ステーション代表)言語聴覚士も配置し、嚥下を評価、他事業者との差別化を図るvol.1


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横浜市にある「ひまわり訪問看護ステーション」(有限会社ホームケア)は、居宅介護支援事業や訪問介護事業、認知症対応型デイサービス、喀痰吸引研修も実施しているほか、スタッフのための託児スペースも設けるなど、分野を広げて事業展開している。経営するのは看護師の松尾愛美さん。訪問看護から介護、子育てサポートまで関わるようになった理由は何か、また、今後の目標について語ってもらった。

特に看護師になろうと決めていたわけではなく

――2006年に「ひまわり訪問看護ステーション開設」を立ち上げた松尾さんですが、そもそも看護師になろうと思った理由とは。

今日はそういうことも聞かれるのかなと思って、どうして看護師を目ざしたのかと自分でもいろいろ考えてみましたが、もともとは特に看護師になろうとは思っていたわけでありませんでした。
私の実家や親せきは、自分で商売をしている人がほとんどで、私も何か手に職をつけたい、それが普通だという気持ちがどこかにずっとありました。
手に職をつけるための選択肢の一つとしてなんとなく「看護師」があって、高校を卒業すると病院付属の看護学校に入学して、看護師資格を取りました

 

――看護学校を卒業してからは?

そのまま同じ病院に勤務して脳神経外科や内科を回りましたが、「自分には合わない」と思って3年で辞めました。そうしたら、病院時代の医師から「クリニックを開業するので手伝ってほしい」と言われて、行くことにしました。でも、正職員ではなくアルバイトの形で働きました。ちょうどそのとき、法律の勉強を始めたころだったので。

 

――法律の勉強とは、またどうしてですか。

趣味として、一時期ちょっとだけ勉強していました。商法とか、不動産なんとか法とか(笑)。何か法律で資格を取ろうというつもりは全然なくて、本当に趣味で。 でも、このとき覚えた知識が、後に訪問看護ステーションを開業する際に役立ちました。勉強していた当時は、まだ訪問看護をやろうなんて思ってもいなかったんですが。

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立ち上げ資金は自分の貯金で工面

――にもかかわらず、訪問看護をしたいと思うようになったきっかけは何ですか?

開設を手伝ったクリニックが訪問看護ステーションも始めたので、その立ち上げに私もかかわり、訪問もやるようになりました。それで、私も自分で訪問看護をやりたいと思うようになって、2006年1月に「ひまわり訪問看護ステーション」を立ち上げました。当初は診療所のアルバイトもしながら、自分の訪問看護ステーションの仕事もするという、ダブルワークの生活でしたね。それですっかり、訪問看護にハマったんです。

 

――どうしてハマったんですか。

まず、ドクターに縛られないから。先生に言われたことをやる仕事ではないというのがすごくいいなと思いました。また、訪問すると、その方や家族のこれまでの人生がわかるんです。がんの末期でちょっとしか会話ができない方でも、見ていると「いい人生を送ってこられた方なんだな」とか「優しい方なんだな」ということがわかる。
それと、お亡くなりになった体をきれいに拭いたり、お顔にお化粧を施したりするときには、ちょっと離れたところからその様子を見ている小さなお孫さんとかに「一緒にやってみる?」って声をかけて手伝ってもらったりもするんですが、そうやって家族の思い出を残すお手伝いができる。それで、訪問看護っていいな、もしかして私に合っている仕事なんじゃないかなと思いました。

 

――訪問看護ステーションの立ち上げ資金はどう用意を?

自分がこれまで働いて貯めていたお金で工面しました。銀行とかからの借金はしないで、自分の貯金を会社(訪問看護ステーション)に貸して立ち上げたというかたちです。

 

――ということは、ずいぶん貯金していたんですね(笑)。でも「始めたら、うまくやっていけるんだろうか」という不安はなかったんですか。

「やってみて、もしだめだったらやめればいい」「またクリニックに戻るという手もある」と思って始めたんです。それに、当時はもう結婚していたので、失敗しても大きなリスクはないとも思っていました。

 

――実際にいま運営していて、大変だと思うことは。

うーん……特にないですね。あったらもうやめていると思います(笑)。

 

こだわりがある人よりも“普通の人”でありたい

――訪問看護を提供するうえで、こだわっていることはあるのでしょうか。

最近よくそう聞かれますが、そういうこだわりがない人のほうがいいと私は思っているんです。自分が何かしたいと思って利用者さんがいるわけじゃない。困っている人がいて、この人が何を必要としているかを看護師は見て、自分でできる範囲でやるものだと私は思っているので。こだわりのある看護師さんの場合は、どこかで利用者さんが看護師に合せてくれている気もしてしまうんですよね。
そして、こだわった結果、「これだけやっているのに、向こうは応えてくれない」となって、燃え尽きて辞めてしまう看護師も少なくないように思います。

 

――スタッフ採用の際も、そうした点に気をつけて採用しているのでしょうか?

そうですね。なるべく“普通の人”を採用するようにしています。普通のお宅を訪問するのだから、やっぱり普通の人がいい。“いかにも看護師さん”というような怖そうな感じの人とかではなくて(笑)。また、利用者さんだけでなく、その家族のことにも気を配れる人であってほしい。その意味では、家庭を持っている人のほうが家族のことに気を配ったり、家族の相談に乗ったりがしやすいように思えるので、家庭のある人を採用するのがいいかなとも考えています。
私自身もいま子どもが2人(7歳と3歳)いますが、いろいろな家族の気持ちを知りたい、家族の相談に乗れる自分でありたいと思って、自分の家庭を持ったという感じもあります。でも、よく利用者さんからは「一人身ですか?」と言われます。どうやら一人身に見えるらしくて。落ち着きがないのだと思います(笑)

 

――現在、訪問看護ステーションのスタッフ数は?

看護師は15名(うち3名が認知症対応型デイサービスも兼務)です。ほかに、理学療法士(PT)2名、言語聴覚士(ST)も1名いて、訪問リハビリ(介護報酬上の訪問看護のリハビリ)を提供しています。

 

――STを置いている訪問看護ステーションはまだ珍しいと思いますが。

最初に耳鼻科のクリニックの訪問看護ステーションにいたということもあって、自分のところでも嚥下の評価を行いたいと思い、STは開設最初から置きました。「嚥下のサポートが得意な訪問看護ステーション」ということで、ほかの訪問看護ステーションとの棲み分けを図って、利用者さんやケアマネジャーから選んでもらえる1つの基準にしたいとも考えました。最初は、説明しても「STって何?」という感じでよくわからない方が多くて、それを売りとして言うのはやめて普通に訪問看護を提供してきました。でも、少しずつ認知度は高まっていったと思います。

民家を利用したあかつきデイサービスでは利用者とともに野菜を育てている。

<事業所プロフィール>
ひまわり訪問看護ステーション
病院の脳神経外科、内科などの看護師勤務を経た松尾さんは、「ひまわり訪問看護ステーション」の立ち上げ(2006年1月)と居宅介護支援事業所(同年4月)を開設、2008年より代表に就任する。2013年10月に訪問介護事業所、2014年4月に認知症対応型デイサービス「あかつきデイサービス横浜北」を開設。2012年から介護職員による喀痰吸引等が認められたのを機に喀痰吸引研修を実施。また、スタッフのために託児スペースも併設し、働きやすく子育てしやすい中小事業所を認定する「よこはまグッドバランス賞」(横浜市主催)を2010年と2011年に受賞。)

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