財務省が示す平成30年介護保険改正における方向性とは 【後編】


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前編に続きまして、後編は事業者さんが気になる、気にしなければいけない(3)軽度者への生活援助の在り方、(4)軽度者への福祉用具貸与の在り方、(5)軽度者へのその他給付の在り方についてお届け致します。

 

(3)軽度者への生活援助の在り方

図表3を見ると生活援助の内容は、掃除の占める割合が最も多く、次に一般的な調理・配膳が多いがこれらは介護保険を使うのではなく、日常生活において通常負担する費用であり、さらにこれらの在宅サービスには多くの民間企業が自由参入しているが、介護報酬に定められた公表価格を下回る価格を設定している事業者はほとんどなく、価格競争は行われていない現状が見受けられる。また、要介護5の方で生活援助のみの利用件数は全件数の5%未満であるのに対し、軽度の要介護者(要介護1・2)では、生活援助のみの利用件数が全件数の概ね4割もあるため、生活援助があることによって、介護保険の主旨である高齢者の有する能力に応じ自立した生活を目指すということを妨げる要因となっているのではないかということで、給付の見直しや地域支援事業への移行を含め検討を行うとされています。

改革の具体的な方向性の案としては、軽度者に対する生活援助は、日常生活で通常負担する費用であり、介護保険給付を中重度者に重点化する観点、民間サービス事業者の価格・サービス競争を促す観点から、原則自己負担(一部補助)の仕組みに切り替えるべきとされ、検討・実施時期については速やかに関係審議会等において制度の実現・具体化に向けた検討を開始し、平成28年末までのできる限り早い時期に結論を得て、その結果を踏まえ、平成29年通常国会に所要の法案を提出するとされています。

この辺の内容についての所感は以前のコラムで述べさせて頂いておりますのでそちらをお読みください。

 

(4)軽度者への福祉用具貸与の在り方

平成27年8月より、住民税課税世帯のうち、一定以上の所得(合計所得金額160万円以上)を有する者については、介護保険給付に係る利用者負担割合が1割から2割に引き上げられましたが、制度の持続性確保の観点から今後、段階的に医療保険との均衡を踏まえて、65?74歳について原則2割負担とし、次に75歳以上についても2割負担とすべきとされています。(図表3)

 

福祉用具貸与の実態を調査したところ、一人当たり貸与額に大きな地域差があり(図1)、その要因として、?貸与価格について、同一商品の中で平均貸与価格の10倍超の高価格で取引されている例があるなど、大きなばらつきがあること(図2)、?機種のスペックと要介護度の対応関係についても大きな地域差があり(図3)、また、軽度者にむしろ高機能の商品が貸与されているような用具があること(図4)、などが明らかになったとされています。

これらの内容を受け、利用者の状況・ADLの維持向上の必要度等に応じた機種が適正に貸与されるよう、また、貸与事業者のサービス競争の促進と適正な価格設定が担保されるよう、現在の福祉用具貸与の仕組みについて、抜本的な見直しが必要ではないか。

また、軽度者に対する福祉用具貸与は日常生活で通常負担する費用の延長と考えられること、住宅改修(要介護2以下の軽度者の利用が8割弱)は個人の資産形成でもあることを踏まえると、介護保険給付を中重度者に重点化する観点、貸与事業者間の適正な価格・サービス競争を促す観点から、軽度者を中心に、利用者負担の在り方についても見直しが必要ではないかとされています。

 

改革の具体的な方向性の案

改革の具体的な方向性の案として、
(1)貸与価格の見直し:対象品目の希望小売価格等から減価償却期間等を考慮して算定した標準的な利用料を基準貸与価格として設定する。真に有効・必要な附帯サービスについては、貸与価格とは分けて標準的な保守管理サービス等を別途評価する枠組みを検討し、事業者間の適正な競争を促進する。また、行政や利用者にとって取引価格や製品性能等が比較可能となるよう情報開示(見える化)を進める。
(2) 貸与機種のスペックの在り方の見直し:利用者の状況・ADLの維持向上の必要度等に見合った貸与品の選定を推進するため、要介護区分ごとに標準的な貸与対象品目を決定し、その範囲内で貸与品を選定する仕組みを導入する。
(3) 負担のあり方の見直し:介護保険給付を中重度者に重点化する観点、民間サービス事業者の価格・サービス競争を促す観点から、原則自己負担(一部補助)とし、軽度者の福祉用具貸与に係る保険給付の割合を大幅に引き下げる。

検討・実施時期について、(1)及び(2)は、速やかに関係審議会等において制度の実現・具体化に向けた検討を開始し、平成28年末までのできる限り早い時期に制度改革の具体的内容について結論を得て、速やかに実施する。?については平成28年末までのできる限り早い時期に結論を得て、その結果を踏まえ、遅くとも平成29年通常国会に所要の法案を提出するとされております。

福祉用具貸与事業者さんにとってはかなり影響のある話ではないでしょうか。貸与価格の見直し、貸与機種のスペックの在り方の見直し、負担のあり方の見直しと3つの改正があれば現在行っている事業と全く異なる事業になると言っても過言ではありませんね。こちらも原則自己負担となればサービス使用の抑止力になることが容易に予想されます。

 

(5)軽度者へのその他給付の在り方

図表4の通所介護の1日のスケジュール例を見て頂くと軽度者(要介護2以下)に対する通所介護については、外出支援・食事や入浴の介護といった 生活支援や種々の機能訓練を目的とした活動が大半を占める内容となっているとさています。財務省としては、これらのサービスについて介護保険を使って本当にする必要があるのか?ということを投げかけています。また、軽度者(要介護1・2)においてはわざわざ介護保険を使う必要性がなく地域支援事業で十分に対応できるのではないかと言っています。

改革の具体的な方向性の案について、軽度者へのその他の給付(例:要介護1・2の高齢者に対する通所介護)については、現在の地域支援事業への移行状況も踏まえつつ、介護保険給付を中重度者に重点化する観点、地域の実情に応じたサービスを効率的に提供する観点から、柔軟な人員・設備基準として自治体の裁量を拡大し、自治体の予算の範囲内で実施する枠組み(地域支援事業)へ移行すべき。その際には、メニューの統合等により、簡素で分かりやすい体系とすべきとさています。

検討・実施時期については、速やかに関係審議会等において、平成27年度に施行された介護予防給付の訪問介護・通所介護に係る地域支援事業への移行状況も踏まえつつ、制度の実現・具体化に向けた検討を開始し、その結果を踏まえ、平成29年度通常国会に所要の法案を提出するとされています。

コラムを通じて何回か書かせて頂いている地域支援事業(新しい総合事業)の役割、重要性がここに繋がってきます。先日発表された内容による6割以上の市町村が新しい総合事業への開始を平成29年4月からと位置付けておりますので上記に書かれているような移行状況を踏まえつつとはならないと思いますので少し先延ばしにされるのではないかと予想しております。

以上の内容が10月9日に開催された財政制度分科会にて財務省が示した介護分野における方向性となっております。お気づきのように、検討・実施時期については平成29年度通常国会に所要の法案を提出するとされている内容が多かったと思います。
平成29年度通常国会に法案を出すということは即ち平成30年の介護保険改定に照準をあわせていることとなります。また、どの内容においても財務省が打ち出しているだけあって、結果的に介護給付費の抑制に一役買う形のものとなっているように見受けられます。

事業所を運営されている方はこれらの方向性がすでに打ち出されていることを念頭において経営の舵取りをして行かなければなりませんね。

 

 

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