地域の差、事業所の差をもたらすものは何か?


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早くから介護予防事業を進め要介護認定率が下がり続ける和光市のケース

今年4月からの介護予防・日常生活支援総合事業(新総合事業)を柱とした介護保険改正により、地域でのさまざまな活動がようやく広がりつつあるが、よくみると地域の差、事業所の差がこれまでにも増して広がってきているように見える。地域差が出るのは当然とはいえ、そこに住む住民、とくに改革の取り組みが遅れている市町村に住む住民にとっては切実な問題である。同時に事業所にとっても、その流れをどう見極め、生き残っていくのか、それが改めて問われている。

 

改革で成果を挙げているトップランナーの市町村の一つは埼玉県和光市である。
人口8万人というこじんまりした東京に隣接するベッドタウンで、高齢化率は16.9%(2015年3月現在)と全国平均よりやや低い。2006年の介護予防を柱とした介護保険改正より3年早く介護予防に取り組んできた。介護保険での要介護(要支援)認定率(2014年)をみると、全国平均は18.2%、埼玉県14.3%に対し和光市は9.4%である。しかも2014年までの4年間で2010年の10.2%をピークに認定率は下がり続けている。
2014年度での認定者のうち要支援1~要介護1の間のいわゆる軽度者が認定者全体の占める割合をみると、全国平均が46.7%に対して和光市は38.1%にとどまる。

 

「和光方式」で本人の状態に応じたケアマネジメントと介護予防を実施

これは何を意味するのだろうか。要介護認定軽度者の高齢者は、生活不活発病(廃用症候群)に陥っているケースが多いが、和光市の場合、高齢者本人の状態に合わせた介護予防事業を実施し、結果として介護保険のお世話にならない自立の状態にまで回復させている。
それを可能にしたのは、「和光方式」の特徴のひとつといわれる、高齢者全員の状態の調査、隔週で行われる市主催のコミュニティケア会議で、きめ細かい情報共有とケアプラン作りを実施し、身体機能・日常生活の実態、認知症、疾病状況の把握をきちんと市が時系列に基づき把握していることである。
市及び地域ごとのマクロの調査と個別の状態把握をしたうえで、本人の状態に応じたケアマネジメント、介護予防を実施している。

結果として上記のような認定率の引き下げを可能にし、第一号被保険者の介護保険料も今期もほとんど上げず、4128円と全国平均より1300円も低い水準にとどまらせている。

 

縦割りをやめて、地域で横に広くつながるしくみを考える

同市のもう一つの特徴は国の法制度の枠内にこだわらず、さまざまな絶えざる改革を実施していることである。高齢者の住まいの問題は、市の縦割り行政の中では進めるセクションがなかったが同市の場合、高齢者支援課が空き家情報をキャッチすると、グループホームや小規模多機能、高齢者住宅等に転換させる可能性があるかどうか、ただちに調査し、可能であればそうした高齢者向けに転用する取り組みも開始した。
さらに高齢者だけでなく、子育て、障害者、生活困窮者を対象にしたケアマネジメントの縦割りをなくし、一元的にケアマネジメントを実施する「中央コミュニティ会議」を2018年度末までに作り上げる取り組みも始めた。

地域の課題を地域住民とともに解決したいという熱い思い

地域包括ケアは高齢者だけではなく、地域で自立困難な人たちを包括的に支援していこうという理念の具体化であろう。 先進的な取り組みをしているのは和光市だけでは、もちろんないだろう。

例えば東京都北区の取り組みをみると「医療と介護の連携」を具体化させるための先進的な取り組みがある。その一つが「高齢者安心センターサポート医」制度である。
研修を受けた担当医師を配置し、医療相談だけでなく、医療・介護につながらない一人暮らしや認知症高齢者宅への訪問相談も実施している。医師でないと医療に関するニーズには対応できないことは多いが、北区のように地域包括ケアの中で実現させている自治体はまだまだ少ない。

その現実を変えていくのは行政の権限や法律制度だけではない。和光市や北区の例をみると、正しく「人」である。

新潟県長岡市の「こぶし園」という事業者が、地域でいち早く地域包括ケアを実現させたのも故・小山剛施設長の力に負うところが大きかった。長野県上田市で真田地区で地域包括ケアを築き上げてきたのは社会福祉法人「アザレアン真田」の宮島渡施設長のリーダーシップであろう。
この人たちに共通するのは、地域の、高齢者の切実な生活課題をなんとしても解決したいという思いである。その思いがこの高齢化を乗り切る源泉ではないか、と思う。

介護事業所においても、それを期待したい。

 



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