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小規模デイサービスの経営戦略と役割


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小規模デイサービスって「小規模」でしょ。「小規模」で本当に儲かるの??

「小規模」な分、利用者に寄り添うことが可能なんだよ!だから、しっかり、利益を出してる事業所もあるよ

なるほど!「小規模」のメリットもあるのか!よっし!僕、小規模デイサービスで開業頑張るぞ!

小規模デイサービス事業の立ち上げを検討している、あるいはすでに小規模デイサービス事業を行っている皆さま。

小規模事業所は個々の利用者に目が届きやすいことから、個別化・重度化の支援が行いやすいということは、すでにご存じかと思います。

その強みをさらに活かすことが、利用者へのサポート充実に繋がり、地域に根付いた事業所としての知名度を高めてくれるはずです。

小規模事業所で、長期的に安定した経営を行っていくための経営戦略についてまとめましたので、参考にしていただければと思います。

戦略

小規模デイサービスの経営とは

一般的に、事業規模が大きければ大きいほど、財政状態及び経営成績が良いように思われますが、必ずしもそうではありません。

介護報酬については、サービス提供価格が小規模ほど高くなることから、高い利用率と稼働時間の両方が、財政状態及び経営成績を上げるためには、重要です。事業規模にかかわらず、営業時間が長く、営業時間を通して定員が埋まる状況であれば、長期的かつ安定的に事業を継続することができます。

また、介護事業所を経営するということは、その地域における社会的資源としての役割も持ち合わせています。

単に事業所の経営のみを考えるのではなく、その地域における役割をしっかりと果たし、地域と共にある存在となることが重要だといえるでしょう。

この点について、小規模事業所の場合、提案・要望から実際の行動までのプロセスが迅速に行えるという利点があります。

小規模事業所ならではの身の軽さをその地域で活かしていくことが、事業所の評判を上げ新規の利用者確保へ繋がっていくものになります。

小規模デイサービスの経営戦略

前項の通り、経営戦略の基軸は「高い利用率と稼働時間」です。利用率と稼働時間を上げるには、以下の2つの点に注目してください。

利用者確保の取り組み

高い利用率と稼働時間となるためには、利用者の確保が最優先課題となります。利用者確保におけるポイントを下記で紹介します。

その地域でのニーズを適切に把握する

その地域での利用希望者が多ければ多いほど、事業所のニーズも高くなります。事業所のニーズがないのに開業したら利用者の確保は困難を極めます。事前に地域ニーズを適切に把握することが必要です。

パンフレット、ホームページ、新聞、ポスティング等あらゆる広告媒体を使って宣伝する

利用率の高さというのは、知名度に比例するところもあります。

常日頃の地道な支援の努力が知名度と評判を上げるのですが、開業前や事業開始直後の状況だと事業所の知名度はどうしても低くなります。

知名度が低いと利用者も敬遠しがちになるため、事業開始前及び開始直後から事業が安定的するまでの間は、考えうる広告媒体を使って、事業所の特徴と強みを数多くの方々に周知してもらうようにしましょう。利用者の開拓が、なにより大切です。

その地域の介護福祉関係の会議等には積極的にかかわる

小規模事業所ならではの取り組みとして「身軽さ」というものがあります。利用率が低く、稼働時間が短い状況が続いているようであれば、経営者又は管理者は積極的にその地域の介護福祉関係の会議等に出席又は委員の引き受け等を行うとよいでしょう。

私の体験談として、これはかなり効果がありました。超高齢社会を迎え地域でも多くの取り組みが行われています。

介護福祉の経験から数多くの会議や委員会に携わって積極的に事業所をアピールしたところ、さまざまな方々から利用者の紹介がありました。

地域からの依頼に対し柔軟に対応していくことは利用率を上げることに効果があります。

人員配置体制の視点

高い利用率と稼働時間であるということは、「多くの利用者がサービスに満足している」という表れでもあります。

高い利用率と、稼働時間を確保するためには、専門的かつ質の高いサービスを「個別」に提供する必要があります。

この点、小規模事業所は「個別」に特化しやすい環境にはあります。しかしながら、職員の配置にある程度の余裕がなければ個別支援は行えません。

また、職員数が多くても離職率が高く初心者が多い事業所や、担当者ごとにサービスの質が大きく異なる事業所等では、専門的かつ質の高いサービスを提供することはできません。

このように、職員の処遇改善及び教育体制の整備は、利用者満足度を上げ、新規の利用者を開拓するには重要なことになりますのでしっかりと整備してください。

小規模デイサービスの経営に必要な資格

デイサービスの経営において必要となる資格について職種別に紹介します

職種 必要資格
管理者 資格要件無し
生活相談員 社会福祉主事任用資格保有者
社会福祉士
精神保健福祉士
介護支援専門員
(介護福祉士)
(社会福祉施設長資格認定講習課程修了者)
※カッコ書きはエリアによって異なります。
介護職員 資格要件無し
看護職員 看護師又は准看護師
機能訓練指導員 理学療養士
作業療法士
言語聴覚士
看護師又は准看護師
柔道整復師
あん摩マッサージ指圧師

小規模デイサービスの経営に必要な資金

イニシャルコスト

項目 留意点等 費用
建物取得費用(新築) 事業所を建設するか、中古物件を買い取り改装するか、賃貸で対応するかによりイニシャルコストは異なります。また、地域や立地場所等によっても変動します。 約2,000万円
建物取得費用(中古) 中古物件を取得し、改装を行うことで対応する場合、取得費用として150~500万円、改装費用として250~500万円ほどが必要となります。
改装費用は、通所介護に求められる設備基準を満たし、利用者の特性上、完全バリアフリー+αの安全対策を行うため必要になります。
400万円
~1,000万円
人材採用費用(人材確保における広報費用) 事業を始めるにあたり、人員配置基準を満たした人材を採用する必要があります。介護福祉業界は人材難の時代であるので、人材確保が困難を極める場合は、イニシャルコストは高くなりますが、人材紹介会社等の活用を視野に入れる必要があります。 0万円
~100万円
器具備品取得費用 設備基準で必要となる設備としては、「食堂・機能訓練室、静養室、相談室等」となっています。それぞれの設備について必要な備品の購入をします。
器具備品関係で最もイニシャルコストが高くなるのが、消火設備になります。介護福祉業界においては、消防法における設備の設置基準が厳しいのでご注意ください。
50万円
~100万円
その他の費用 事業所で活用する車両の購入費 200万円
~400万円
事業を始めるにあたり専門業者へ業務を委託する場合 20万円
~40万円

ランニングコスト

項目 留意点等
建物賃借料 事業所を賃貸で契約した場合、賃借料が発生します。原則、固定費に分類されるものですので、経営戦略が重要になります。その地域でその立地条件でどのくらいの収益を将来的に生み出すことができるのか。「賃借料が高いために、人件費を低くせざるを得ない状況ではないか」、「利用者へ十分なサービスの提供ができないほど不当な賃借料になっていないか」など賃借料のみを考えるのではなく全体のバランスを十分に考慮の上、賃貸契約を締結する必要があります。
内装工事費用(修繕費) 事業開始後もヒヤリハットや事故において危険個所が指摘された場所への対策に改修が必要になるため、ランニングコストがかかります。特に利用者の特性上、事業所内での事故が発生する可能性があるため、安全面については、継続した投資が必要になります。
人材費 事業活動における費用で最も割合が高いのが人件費になります。高い利用率と稼働時間を目指すには、専門的かつ質の高い人材を確保する必要があります。人件費を高めに設定すると、応募人数が多くなり、優秀な人材が集まりやすくなります。事業所の経営戦略として、そして将来への投資という観点から、人件費については可能な限り高く設定することをおすすめします。
器具備品取得費用 職員の負担軽減や効率化、利用者の処遇の向上のために、器具備品については定期的に改良又は購入等の検討が必要です。介護福祉機器は日々進化し続けています。福祉機器展等も見学し、いろいろな知識を得て事業所に活かしていくとよいでしょう。
事業費・事務費その他の費用 その他、ランニングコストとして発生する費用については下記の通りです。
【事業系】
給食費、保健衛生費、利用者の創作活動等における費用、日用品費、水道光熱費、日常生活における事業運営上必要な消耗品費、保険料、その他事業費
【事務系】
福利厚生費、職員研修費、日常生活における事業運営上必要な事務費、新規利用者開拓又は人材確保に向けた広報費、業務委託費、保守料、その他事務費

小規模デイサービスを経営する際の年収

職種 年収
管理者 全国平均約450万円
生活相談員 全国平均約410万円
介護職員 全国平均約310万円
看護職員 全国平均約400万円
機能訓練指導員 全国平均約385万円

施設勤務する正規職員及び非正規職員の介護職員における平均月給は2016年で21万5200円(ボーナスは除く)となっており、全産業平均の30万4000円と比較すると8万8800円下回っている状況となっています。

国の政策として、介護職員不足への対策及び職員の定着支援を目的に、職員の人件費のみに充当することができる介護報酬(処遇改善加算)を導入し、全産業平均との格差の是正に取り組んでいますが、依然として格差が大きい結果になりました。

このことは、人材確保への投資が将来的に事業所の財政状態を圧迫させる要因になりかねないということで、リスクと捉える経営判断や、介護報酬そのもののマイナス改定による経営悪化等から引き起こされています。

ただし、高い利用率と稼働時間を目指す観点からすれば、必要な能力を兼ね備えた専門的かつ質の高いサービスを提供できる職員の確保は必須です。しかしそのためには、全産業と比較しても遜色がないくらい、人件費を引き上げることが必要だと思います。

経営者の年収は稼働率により大きく上下します。現場の管理者を兼務しない経営者の場合で、売上に対し5%前後が手元に残る現金(=経営者の収入)と考えて良いでしょう。

定員10人の小規模デイの上手な経営が出来ている事業所で、月の売上220万円に対し利益7%計算で15.4万円です。年間で184.8万円となります。

管理者を兼務する場合には、先に挙げた管理者平均給与分を足した金額が実態に近いでしょう。

まとめ

小規模事業所は個々の関わりが密になることや、建物が小規模であることから、家庭的で温かい雰囲気を作り出すことができます。

利用者が自らの自宅にいるような感覚でのびのびとサービスを利用いただける、そんな空間を提供することができるのが小規模事業所の良い点ではありますが、近年では効率化や財政状態の悪化等からの観点から、事業所も大規模化が進んでいます。

しかしながらそれぞれの利用者の余生がより豊かなものになるための施設として、事業所の規模は関係ありません。

小規模事業所のメリットを最大限に活用して、事業経営を行ってほしいと思います。参考になった方はシェアしていただけると嬉しいです。

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