独立開業・起業

小規模多機能型居宅介護で理想の介護をするための経営戦略


投稿日: 更新日:

小規模多機能型居宅介護の経営がうまくいかないよ…どうすれば良いんだろ…

まぁまぁ、泣くな、カイポチ。事業を行なうには経営戦略を立てることが必要じゃ。まずは、この記事を読んで、心を落ち着かせるのじゃ

大型入所施設の管理的な介護ではなく、利用者一人ひとりのペースを第一にした介護がしたい、と思って小規模多機能型居宅介護を目指す介護職がいます。

しかし収益率があまり良くないと言われている小規模多機能型居宅介護を運営していくためには、経営者にはしっかりしたビジョンと、経営力が求められます。

小規模多機能型居宅介護では、どのような経営戦略が必要とされるのでしょうか。

経営戦略

小規模多機能型居宅介護の経営とは

小規模多機能型居宅介護(以下、小規模多機能)の経営のためには、まず、本サービスの特殊性を把握しておく必要があります。

小規模多機能は、介護保険の「地域密着型」サービスの一つです。「地域密着型」とは、保険者と同じ市町村に住む人が利用できるサービスのことです。他の市町村在住の人は利用できません。

要支援1〜要介護5までの全認定者が対象です。小規模多機能の特徴は、「通い(デイサービス)」、「訪問(ホームヘルプ)」、「泊まり(ショートステイ)」の3サービスを1つの事業所で担っている点です。
※要支援1.2は介護予防小規模多機能型居宅介護

特徴は包括報酬と定員の上限が決まっていること

また、このサービスの特徴は要介護度に応じた1カ月あたりの総報酬制になっていることです。通常は、利用回数に応じて出来高で費用が上乗せされます。しかし小規模多機能の場合は、回数による費用の変更はありません。

介護保険サービスなのでケアプランが存在し、そこに利用日、回数などは決まっていますが、イレギュラーな理由で訪問や泊まりを利用することもあります。

小規模多機能は定員制で、最大で登録できるのは29名までです。そのうち通いは18名まで、宿泊は9名までとなっています(いずれも1日あたりの数)。

訪問回数にはとくに制限はありません。制度開始当初は、定員が25名でしたが、国は2015年4月に定員を29名に増やしました。

小規模多機能はこのように定員が決まっているという点で、利用者を無尽蔵に増やせません。よって収入の上限は決まっています。まず、経営の基本的戦略は、定員を確実に確保していくことと言えます。

小規模多機能型居宅介護の経営戦略

安定した経営を行っていくためには、常に登録数を上限近くまで保っておくことが必要です。しかし、小規模多機能は国が当初予想したほどの登録者が集まっていません。その理由はなんでしょうか。

小規模多機能事業所のモデルは、宅老所という民間が行っていたデイサービスです。そのため小規模多機能も通所を中心に想定していました。いつもは通所、時々は泊まりという感じです。

しかし、実際に運用すると、むしろ泊まりを希望する利用者が多い現実がありました。泊まりは職員への負担も大きく、通い、訪問をバランス良く利用すると想定していた報酬の計算が狂ってしまい、事業所運営が難しいところがあります。

加えて、介護保険制度が複雑化しすぎたため、小規模多機能型居宅介護というサービスの存在や、そのサービスの特性への理解が地域住民に十分にされていないことが考えられます。

少規模多機能型居宅介護の注意点

利用者にとってこのサービスのメリットは、いちいちケアプランを組み変えずに自由に「通い」、「訪問」、「泊まり」の3つを有機的に組み合わせて利用できることにあります。

すべて同じスタッフなので、何が足りないかを介護職が把握しやすく、生活支援をスムーズに行えます。認知症の人にとっても同じ介護職が関わるので、ケアの方法の違いで混乱することもありません。

しかし、「通い」と「訪問」と「泊まり」のサービスは、ひとつのセットになっており、それぞれを違う事業所で利用することはできません。

利用者が「通い」のときに他の利用者とトラブルを起こして「ここにはもう来ない」といって利用を止めてしまうと、「訪問」と「泊まり」の利用者も失うことになります。

また、小規模多機能には、専用のケアマネージャーが事業所に専任しています。一般的にケアマネージャーとしては、自分の利用者にとっては小規模多機能のほうが合っていると思っていても、紹介すると自らの利用者を減らすことになってしまいます。

そのため、当初の想定ほど利用者が増えていないと考えられています。こういった現状をよく理解した上で、まずは利用者獲得の経営戦略を練っていく必要があります。

小規模多機能型居宅介護の経営にかかる費用

小規模多機能型居宅介護の経営にかかる費用ですが、まず、イニシャルコストである開設に数億円かかります。介護保険の施設ですので、食堂、静養室、トイレ、事務所、相談室、調理室、汚物室など運営基準に定められた設備が必要です。

建物内のバリアフリー化、各所に手すりの取り付け、その他プリンクラーの取り付けも行います。

一般的には、土地部分は地主から借り受けることが多いので、かかる費用は上の箱物部分となります。それぞれで建設費用は違いますが、1.5億円程度になるでしょう。このうち数千万円は、公的な補助金が出ます。

ランニングコストはほぼ人件費

次に、ランニングコストですが、介護は労働集約型なので人員に多くの経費がかかります。必要な人員は、以下のようになります。

  • 代表者:1名(介護業務従事の経験があるか、所定の研修の修了者)
  • 管理者:1名(介護経験があるか研修を修了した常勤の者)
  • 訪問介護職員:(常勤換算で1人以上)
  • 通所介護職員:(常勤換算で通所介護利用者3人に1人以上 そのうち看護師または准看護師1名を含む)

夜間は常時、交替勤務者2人以上(夜勤、宿直)を配置することになっています。また計画作成担当者として、ケアマネージャーを配置します。管理者とケアマネージャーは他と兼務可能です。

仮に、通いの1日あたりの利用定員を15名として計算します。すると、通いの介護職員は最低5人必要になります。さらに、訪問対応1人、夜勤、宿直がそれぞれ1人必要です。また、介護支援専門員の配置が必要なので管理者と兼務で1人とします。

たとえば、従業員間に給与の差がないとします。仮に、時給1,000円で日中8時間勤務、夜勤は16時間勤務で時給1,300円、宿直は16時間勤務で時給700円とします。すると1日あたり80,000円の人件費がかかります。この人件費1カ月30日分と、介護支援専門員の月給分(月給25万円として)を合算すると、1カ月あたりの人件費は265万円かかります。

これに法定福利費をおおむね人件費の15%として計算すると、39万7,500円となります。他の経費については、仮に1カ月あたり50万円とします。以上により、1カ月あたりの支出合計は354万7,500円となります。

小規模多機能型居宅介護を経営する際の年収

当然のことながら、経営者の年収は事業所の収入に左右されます。ここでは、収支シミュレーションを行ってみます。

要介護度別の介護報酬は、以下のようになっています。

要介護1 10,320 単位/月
要介護2 15,167 単位/月
要介護3 22,062 単位/月
要介護4 24,350 単位/月
要介護5 26,849 単位/月

計算を単純化するため、基本報酬のみで計算します。基本報酬は2級地の場合です。

利用者の平均要介護度が1だと
月当り介護収入 = 29人 × 単位数(10,320)× 10.88 = 325万6,166円

平均要介護度3で計算すると
月当り介護収入=29人×単位数(22,062)×10.88=696万1,002円

実際には初期加算などをとっていますので、この値よりも多くなります。しかし、月途中に利用者の出入りもありますので、登録者が減った月は当然に収入が落ちます。

経営者の収入は、先に計算した従業員の人件費を含めたランニングコスト354万7,500円の差ということになります。
 

小規模多機能型居宅介護の経営は採算が取れる?

前回の介護報酬改定により基本報酬は減少しましたが、2015年度の独立行政法人福祉医療機構のデータに基づくと、小規模多機能に限っては加算が充実したことによって、登録者1人1月あたりのサービス活動収益は上昇しました。具体的に言うと、前年度の0.5%から1.0%の増加です。

また、前述したように2015年に、定員の上限が25人から29人に拡大され、定員を拡大した施設では、定員拡大前に比べ赤字施設の割合は44.7%から27.8%に低下し、定員の拡大は経営状況の好転につながっています。

小規模多機能型居宅介護は、国の「地域包括ケア」の目玉の一つであり、今後も重度や退院後の受け皿として重視され、報酬改定では誘導策がとられていくと思われます。しかし、小規模多機能の利用者は、平成26年度、平成27年度ともに平均の要介護度が2.17と3に達していません。

重度の介護度の利用者を獲得することも重要ですが、これは努力でコントロールすることが困難なKPI(重要業績評価指標)です。

当該調査では、黒字施設の登録率は80.5%、赤字施設の登録率は67.7%というデータが出されています。この数字を見ると、約75%の登録率で損益分岐することが示唆として得られます。

従って利用者の登録数を確保、維持していくかが最も重要になり、定員を29人とし、かつ登録率を75%以上に保つことが黒字採算のポイントとなります。

軽度者の単位は低く、重度者は高く

今後、国も軽度者の報酬単位は減らし、重度者のほうは高く設定してくると思われます。小規模多機能の場合、介護報酬の単位数が軽度と重度ではかなりの開きがあるため、軽度の利用者が多くなると採算がとりにくくなるということがあります。そうは言っても、重度者を多くするのは従業員の負担が重くなります。

他の介護サービスは、利用すればするだけ費用がかかる出来高払いですが、小規模多機能は包括報酬という独特な報酬体制をとっています。重度者を抱えると、訪問回数が増えたり、負担の重い泊まりサービスの利用回数が増えたりと、運営方法を工夫しなければなりません。

また、最重要な課題は、介護職の確保です。経営者は、通い・訪問・泊まりといった多様な介護場面を有機的につなげていける有能な介護職員を揃える必要があります。

小規模多機能型居宅介護の経営改善方法

小規模多機能利用者側からみれば、優れたサービス形態だと言えます。より良い介護の効果が期待できる事業ですが、介護報酬自体は高くありません。正確に言うと、包括報酬という体制のために、多くサービスを提供したからといって収入が上がっていくタイプの事業ではないのです。

さらに言えば、グループホームなどのように、単独の事業所でも施設の建築費用を返済していけるだけの高い単価設定がされていません。

こう考えると、小規模多機能型居宅介護事業所を単独で立ち上げて事業を行うには、信念の強さと工夫が要求されます。

併設型でランニングコストを抑える

単独で事業がうまくいかない場合は、ユニット型特養や、サービス付き高齢者住宅などに併設されるタイプにすることで、通信機器類やPC設備などの備品、給食やリネン類、その他の消耗品など事業運営に必要な資材調達や事務コストにスケールメリットを活かすことができ、ランニングコストを節約できます。

また、世間の認知度を高めるためには、特養などのすでに世間に認知されている建物の近くにあるとよいでしょう。

また、在宅生活が困難になった場合、施設系のサービスと併設していると利用者の状態が悪化した場合や希望に合わせて施設入所へ移行するなど、切れ目のない支援が可能となり、それは利用者にとっての将来の不安軽減となるため、新規利用者を確保しやすくなることにもつながります。

こういった点でも併設の小規模多機能は有利に働きます。

地域の中に存在するのが小規模多機能型居宅介護に求められている本来の意義だとしても、認知されなければ意味がありません。

報酬単価を安く抑えられているために、共用できる部分でコスト削減を行いつつ運営することで、売上の確保を考えた場合、何かに併設したほうが良いのかもしれません。
 

最後に

在宅生活を最期まで自宅で、と期待された小規模多機能型居宅介護。病院からの在宅復帰にもうまく利用することができ、非常に魅力的な介護事業と言えます。

しかし、独特の包括報酬や介護職には負担の多い勤務形態、世間での認知度の低さから、安定した経営を行うためには多くの工夫が必要です。

まず、高い登録率の維持を前提とするため、通いの利用者を中心に獲得します。そのためには行政機関や外部のケアマネとの信頼関係の構築が利用者確保につながり、安定経営に必須の要素です。

重度の利用者の介護は、従業員にとっては負担ですが高い報酬が期待できますし、事業所の評判を上げることにもつながります。

重度の利用者に対しては、安易にショートステイを勧めるのではなく、ニーズに応じて在宅への訪問回数を増加することで訪問体制強化加算を算定することも可能となります。

(訪問体制強化加算とは、訪問サービスを担当する従業者が常勤2名以上で、かつすべての登録者に対する訪問回数が200回/月を超えると算定可能)

また、介護職に良いターミナルケアの経験を積ませることも経営者には必要です。良いケアを経験させることによって、介護職は事業所に定着します。

大型の介護施設にはできない介護ができるのが、小規模多機能型居宅介護の強みです。事業の特徴を把握し、安定した経営を目指したいものです。

参考になった方は是非シェアをお願いします。

5/5 (3)

この記事を評価する

介護の開業を支援してくれる無料サービスを上手く利用することで、ご自身だけでは辛い開業準備も簡単に進められるようになります。 詳しくは、開業支援サービス(無料)の詳細をご覧ください。あなたにあった最適な開業支援をご提案いたします。

-独立開業・起業

執筆者:

関連記事

経営する人

ケアハウスの経営(戦略・資格・費用・年収)

介護事業のケアハウス開業をしようと考えているんだけど、どうかな? やはり、何事にも下調べが大切だね。まずは、この記事を読んでケアハウスについて学ぼう! 確かに、下調べは大事だね!!よしっ!!頑張るぞ! …

ショートステイ(短期入所生活介護)の指定基準とは?

ショートステイで開業したいんだけど、どうすればよいか分からないんだよね そんな時は、ふくろうさんに聞くと良いよ 確かに、私は物知りだ。しかし、この記事の方がショートステイの指定基準について詳しいからこ …

収入

訪問看護事業を経営した際の年収っていくらなの?

最近、需要が高まっている訪問介護事業を始めれば、おじいちゃんから褒められ、お年玉アップだ これこれ。そんなに世の中甘くないぞ。介護施設を経営するのは大変なんだぞ!その分、成功すれば年収が高くなるぞ! …

NPO

介護事業をNPO法人で設立するには?

今度、介護事業を設立するんだけど、法人格を取得しなければいけないなぁ? 介護事業をNPO法人で設立するには、この記事を読めば、学ぶことが出来るよ!是非、読んでみよう 介護事業の開業時には、法人形態とし …

始まり

デイサービス(通所介護)開業に向けて、これだけおさえておけば安心!

デイサービスで開業しようと考えているんだけど、指定基準だけ押えればいいのかな? 確かに、指定基準は大事だけど…他にも、重要なことがたくさんあるから調べるのじゃ えーっ勉強するの大変だな…デ …