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介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の指定基準について

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2000年4月1日から始まった介護保険制度において、「介護老人福祉施設」は大きな役割を果たす介護保険施設となっています。制度導入前は「特別養護老人ホーム」と呼ばれていたこともあり、どちらの名称でも良いです。介護保険制度は、多様な産業が参入でき、社会福祉法人や医療法人だけではなく株式会社や有限会社も参入することが可能ですが、介護老人福祉施設の運営は地方自治体または社会福祉法人に限定されています。
開設にあたっては、部屋や廊下の広さなど守らなければならない細かい基準が定められているので注意してください。守らなければならない基準や申請に必要な書類、また手順などについて紹介していきます。

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介護老人福祉施設の指定基準

介護老人福祉施設には、大きく分けて「従来型」と「ユニット型」の2種類の施設があります。従来型とユニット型の違いは、ユニットを形成しているかどうかになります。

2006年度の介護保険制度改正以降、原則として新規に介護老人福祉施設を開業する場合には、原則ユニット型施設にしなければいけません。つまり、従来型というのは2006年度(平成18年度)までに開業しているか、2005年度中に指定許可を受けた施設になります。

それぞれにおいて、厚生労働省が定めた「人員基準」「設備基準」「運営基準」の3種類の基準(以下「指定基準」と呼ぶ)を満たす必要があります。厚生労働省が定めた一定の基準を守っていれば、各都道府県で独自の基準を設けても良いことになっています。詳細を確認するためには、開業する場所を管轄する都道府県のwebサイトを確認しましょう。ここでは、厚生労働省が定める基準をご紹介します。

従来型

まず始めに、従来型にもユニット型にも共通する基本方針を押さえておくことが重要です。全ての基準は、この基本方針を守るために定められています。

  1. 介護老人福祉施設は、施設サービス計画に基づき、可能な限り再び自宅へ帰り、生活出来ることを念頭に、入浴や排泄、食事等の介助をしなければいけません。加えて、社会生活を送る上で必要な便宜や日常生活上の手伝い、機能訓練等を行うことにより、有する能力に応じて自立した生活をおくれることを目指さなければいけません。
  2. 介護老人福祉施設は、一人の人間として入所者の人格と人権を尊重し、常に入所者の立場に立って介護サービスを提供しなければなりません。
  3. 介護老人福祉施設は、明るく家庭的な雰囲気でなければいけないので、地域や家族との関わりがもてるような機会を提供しなければならない。また行政や医療機関、各種福祉サービスや保健サービスを提供する者と密接に連携しなければいけません。

従来型の介護老人福祉施設の人員基準

  1. 医師
    入所者の人数に対し配置数の割合は定められていません。多くの施設が、地域に開業している個人医院と嘱託契約を締結しています。しかし、この契約はあくまでも医師個人と締結するものであり、その医師が開業している医院と締結する訳ではないため、混乱が生じる場合があります。詳しくは、その地域を管轄している医師会の事務局へ照会してみると良いでしょう。
  2. 生活相談員
    入所者:職員が100:1の割合で常勤者を配置しなければなりません。100名を超える場合、その端数に対し1名増やします。保有しなければならない資格は、社会福祉士、社会福祉主事、介護支援専門員などがスタンダードであり、精神保健福祉士等でも可能です。
  3. 介護職員及び看護職員(看護師と准看護師)
    これらの職員は「直接処遇職員」とも呼ばれ、入所者:職員が3:1の割合で職員(常勤換算)を配置しなければなりません。看護職員については、入所者30名までは1名、30~50名までは2名、50~130名までは3名、130名を超えた場合には、50名増えるごとに1名を配置することになっています。そのうち、1名は常勤者でなければなりません。
  4. 栄養士
    1名以上配置することになっていますが、40名以内の施設であれば他の社会福祉施設等に配置されている栄養士と連携を図ることを前提に、配置しなくても良いことになっています。保有資格は、栄養士か管理栄養士です。
  5. 機能訓練指導員
    1名以上配置することになっており、保有資格は理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師資格保有者となっています。機能訓練指導員を看護師が行う場合は、看護職員としての業務と兼務することが可能です。
  6. 介護支援専門員
    入所者100名に対し、1名の常勤者を配置しなければいけません。
  7. 施設長
    1名配置します。常勤でなければいけません。
  8. 調理員、事務員、その他職員
    実情に応じた人数となっています。

上記までの「常勤者」とは、各施設で常勤者として雇用されている者の労働時間に準じて勤務している者を指します。つまり、正社員ではなく採用期間を区切られている短時間労働者であっても、常勤者と同じ時間数を労働している場合には「常勤者」として換算します。

従来型の介護老人福祉施設の設備基準

  1. 居室
    居室の定員は原則として1名ですが、サービスの提供上必要と認められる場合には2名とすることができます。しかし、従来型の施設の場合には8名以下といった「多床室」も存在します。個室であれば、1人あたりの床面積を10.65平方メートル以上必要ですが、多床室の場合はそこまで面積がとれないため、4.95平方メートル(1人あたり)で良いとされています。さらに居室には緊急通報装置(ナースコール)を一人一人に設けなければなりません。
  2. 静養室
    介護職員室か看護職員室に近接して設ける必要があります。
  3. 浴室
    寝たきりの方でも入浴することができる設備を設ける必要があります。
  4. 洗面設備
    この設備は、居室のある階ごとに設けねばならず、入所者本人が使用することができる設備でなければなりません。
  5. 便所
    居室のある階ごとに、居室に近接して設ける必要があり、ナースコールなど入所者が使用できる設備を設ける必要があります。
  6. 医務室
    医療法第1条の5第2項に規定する診療所として設け、医師が入所者を診療するために最低限必要な医薬品や医療機器を備える必要があります。
  7. 食堂及び機能訓練室
    原則としてどちらも、入所定員に3平方メートルを掛けた広さを有しなければなりません。食事の提供や機能訓練の提供に支障がない限り、同じ場所として登録することができます。その際には、食事に用いる設備と機能訓練に用いる設備の両方を同じ場所に設けなければならないため、レイアウトや収納等に工夫が必要です。
  8. 廊下の幅
    最低でも1.8メートルの幅を設けなければなりませんが、特に入所者が行き来する中廊下は、2.7メートルの幅を確保しなければなりません。
  9. 消火設備その他非常災害に関する設備
    火災感知器、また消火設備等を設置しなければならず、火災を感知した場合には消防署へ自動通報する装置等を設置する必要があります。275平方メートル以上の床面積を有する施設であれば、スプリンクラーの設置も義務付けられています。また、原則として耐火建築物か準耐火建築物として建てなければいけません。

従来型の介護老人福祉施設の運営基準

運営基準においては20を超える項目に分かれており、一つ一つを取り上げると非常に細かくなってしまうため、ここでは重要な5つの項目についてご紹介します。

  1. 施設は、入所者に対し必ず他職種協働によるアセスメントのもとで施設サービス計画を定め、その計画に基づき当該サービスを提供する必要があります。またこの計画は定期的に実施状況を把握し、定期的にサービス計画自体を見直さなければなりません。施設サービス計画の作成にかかる業務は、介護支援専門員が行う必要があります。
  2. 施設は、入所者の自立を支援し、充実した日常生活が送れるように、その心身の状態に応じて介護を行う必要があります。さらに1週間に2回以上は入浴、あるいは清拭をする必要があります。また、排泄の介助や褥瘡の予防、着替えや離床、整容などの介護を適切に行い、常時1人以上の常勤の介護職員を配置しておく必要があります。
  3. 施設は、入所者に対して必要な衛生的な管理に努めなければなりません。また感染症又は食中毒が発生した場合、まん延しないように検討する委員会を3カ月に1回は開催しなければなりません。感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための指針を整備し、1年に2回は従業者を対象に衛生管理のための研修会を開催しなければなりません。
  4. 施設は、事故の発生又はそちらの再発を防止するため、事故発生時等の対応にかかる指針を定め、事故が発生した場合の対応方法や再発防止策などを従業者に周知する体制を整備しなければなりません。また事故発生の防止のための委員会、及び研修会を1年に2回以上開催しなければなりません。
  5. 施設は、次に定める項目について「運営規程」として定めなければなりません。
    • 施設の目的及び運営の方針
    • 従業者の職種、員数及び職務の内容
    • 入所定員
    • 入所者に提供するサービスの内容及び利用料、またその他の費用の額
    • 施設の利用に当たっての留意事項
    • 非常災害対策
    • その他、施設の運営に関する重要事項

このほか、入所者の要介護認定に必要な行政手続の代行や日常生活を送るための諸手続きの代行、また身体機能の維持、あるいは減退を予防するための機能訓練の実施、管理者による一元的な管理、年に2回以上の非常災害時における行動訓練、個人情報保護のための規定作成や研修、苦情処理についての指針の作成や担当窓口等の設置などがあります。

ユニット型

次に、ユニット型の介護老人福祉施設の指定基準をご紹介します。冒頭で述べたとおり、これから新規に開業する介護老人福祉施設は、基本的にはユニット型施設であることが求められますので、必ず確認しましょう。ユニット型はユニット型独自の基本方針があり、この方針に沿っていなければ全て実地指導において指導対象となります。

  1. ユニット型介護老人福祉施設は、入所者一人一人の意思及び人格を尊重し、施設サービス計画に基づき、可能な限り再び自宅へ帰って生活できることを念頭に、入居前の居宅における生活と入居後の生活が連続したものとなるよう配慮しながら、各ユニットにおいて一人一人が主体となって他入居者等と社会的な関係を築き、自律的な日常生活を営むことを支援しなければならない。
  2. ユニット型介護老人福祉施設は、地域や家庭との結びつきを重視した運営を行い、行政や他の介護保険事業者など、及び保健医療サービスや福祉サービス提供者と密接な連携に努めなければならない。

従来型との一番の違いは「入居前の居宅で送っていた生活が、施設へ入居した後にも同じように送れるように配慮する必要があり、各ユニット内で社会的な生活が送れるようにする」という点です。従来型とは違い、新規申請による現地確認の際にもこの点をどのようにとらえ、どのように支援していくことを考えているのかが問われます。つまり、建物だけ基準どおりに作れば良いわけではありません。

ユニット型介護老人福祉施設の人員基準

介護報酬を算定する際、ユニット型施設として各種加算を算定するために定められた人員配置基準があります。加算を算定する場合は、介護報酬上の基準を確認しておきましょう。

ユニット型介護老人福祉施設の設備基準

まず、確認しておきたいのは、ユニット型施設ですから従来型と違い、施設全体の基準の他にも一つ一つのユニット(グループ単位)で基準が定められています。例えば、耐火構造か準耐火構造にしなければならないことや、非常災害時には消防署へ通報する緊急通報装置を備えなければならないなどの施設全体の基準は、従来型に準じています。ここでは、一つのユニットに定められている設備基準をご紹介します。

  1. 居室
    居室の定員は原則として1名ですが、サービスの提供上必要と認められる時には2名にできます。居室は、いずれかのユニットに属さなければならず、1つのユニットの居室数は大体10人以下である必要があります。1つの居室面積は10.65平方メートル以上で、2名定員の場合には倍の21.3平方メートル必要です。さらに、各居室には緊急通報装置(ナースコール)を設けなければなりません。
  2. 共同生活室
    1つのユニットに属する10名以下の入居者が、食事をするなど共同で過ごせる場所として設けなければなりません。床面積は、ユニットの定員に2平方メートルをかけた広さを確保する必要があります。また、前述した目的で使用するために必要な設備(一般的には、冷蔵庫や簡易キッチン、食器棚等)を備えなければなりません。

    従来型の場合、この設備に該当するのは「食堂及び機能訓練室」になります。

  3. 洗面設備
    居室ごとに設けるか、共同生活室ごとに適当な数を設ける必要があります。入居者本人が使いやすい設備にしなければなりません。
  4. 便所
    居室ごとに設けるか、共同生活室ごとに適当な数を設ける必要があります。また、ナースコールなど入所者が使用できる設備を設ける必要があります。
  5. 浴室
    寝たきりの方でも入浴できる設備を設けなければなりませんが、各ユニットに設計する必要はありません。
  6. 廊下の幅
    最低でも1.8メートルの幅を設けなければなりませんが、廊下の一部を拡張するなど入所者と従業員が円滑に往来できる場合には、1.5m以上であれば大丈夫です。また、中廊下に関しては従来型と同じく2.7メートルの幅を確保しなければなりませんが、これについても先ほど同様に、廊下の一部を拡張するなどの工夫で往来に支障がなければ1.8メートル以上にできます。

その他、医務室や消火設備、非常災害に関する設備については従来型と同様です。

ユニット型介護老人福祉施設の運営基準

基本的には従来型と同様ですが、ユニット型施設独自で定められている基準についてご紹介します。

  1. 介護について
    食事、排せつ、整容等の介護については、その入居者が属しているユニットの中で完結できるようにする必要があります。
  2. 食事について
    できる限り入居者が自立して食事が摂れるように援助するとともに、入居者の生活習慣を尊重した適切な時間に食事を提供する必要があります。つまり、自宅では朝食をパンと牛乳だけで過ごしていたのであれば、それを極力重視する必要があります。さらに夕食は、晩酌とともにおつまみ程度しか食べなかったのであれば、それも重視します。もちろん、医療的なケアの中でアルコール摂取が不可とされている場合は、そちらが優先されます。

ユニット型の冒頭で述べたように、建物だけユニット型の基準を満たせば良いわけではありません。都道府県など行政が行う実地指導の中で、最近最も重視されているのは、この「運営基準」に沿っているかどうかです。人員基準や設備基準が満たされていたとしても、事業を開業する経営者が、なぜユニット型の介護老人福祉施設が必要なのか、何が求められているのかを理解することが重要です。

また例外として、施設全体をユニット型介護老人福祉施設として登録するのではなく、一部分だけをユニット型として登録することが可能です。この場合、ユニット型として登録している場所については、前述した人員基準や設備基準、そして運営基準を遵守する必要があります。

介護老人福祉施設の新規指定申請の書類

介護老人福祉施設を開業する場合、介護保険制度内のサービスとして行政から「指定」を受けなければなりません。そのためには、都道府県庁や福祉保険局等のサイトに掲載されている「指定許可を受けようとする場合の申請書類」を提出する必要があります。サイトに全ての様式が掲載されており、ダウンロードして使用することができます。ここでは、申請に必要な書類とその種類が必要な理由や、作成方法について箇条書きで紹介します。

  1. 指定(許可)申請書
  2. 介護老人福祉施設の指定に係る記載事項
    この書類で、管理者及び定員、従業員の職種と員数、設置基準上の設備の数値、利用料等を一覧で表示します。ここで各種基準を満たしていなければ、指定を受けることはできません。
  3. 定款(または寄付行為等)
    社会福祉法人の定款
  4. 登記事項証明書または条例
    法務局に登記している法人や会社の登記
  5. 併設する施設があるなら、その施設の概要
    短期入所生活介護施設や居宅介護支援、通所介護など、建物に併設している施設
  6. 共用の施設がある場合は、その利用計画
    前項で述べた併設施設などがある場合、どのように本体施設(介護老人福祉施設)の利用者と重複せずに利用する計画を立てているか、利用計画を提出します。例えば通所介護が併設されているのであれば、設備の共用、人員の兼務があった場合でも通所介護の利用者は通所介護の職員がサービスを提供することが原則です。その辺りも考慮したうえで、計画を提出します。
  7. 施設の位置図、平面図、求積図、敷地周辺の見取り図
    前項で述べた共用する設備がある場合、食堂やトイレ、浴室など共用する施設を平面図などで色分けする必要があります。また居室面積や廊下の幅など、設置基準を満たしていることを証明できる図面を添付しなければなりません。
  8. 施設の管理者の経歴書
  9. 運営規定
  10. 居住費の算出根拠に関する書類(ユニット型の場合)
    ユニット型個室の居住費は、国の基準では一日1970円と定められています。しかし、介護保険は契約締結によって成り立つサービスなので、国の基準を超えて又は基準よりも低く居住費を設定することも可能です。いずれにしても、なぜその居住費にしたのかという根拠を提出します。居住費の中には、水道光熱費なども含めて良いことになっています。全体の面積と居住スペースの割合を出しておき、建築費と固定資産償却分に適用させたり、予測される水道光熱費に適用させます。
  11. 苦情を処理するために講ずる措置の概要
  12. 従業者の勤務体制及び勤務形態
    ひと月ごとの変形労働時間制を組むことが多いかと思われますが、週平均で40時間となっているか、ひと月の通常労働時間の上限を超えていないか、週に一日は法定休日が入っているかなどが確認できる月間勤務表を提出します。ダウンロードした様式ではなくても、必要事項が確認できる場合は実際に使用している月間勤務表等でも構いません。ただし、職種と、職種別の勤務体制(常勤・非常勤など)は必須になります。
  13. 協力医療機関(協力歯科医療機関も)
    契約内容も提出する必要があります。
  14. 事業に必要な資産の状況
    土地、建物、備品等を記載します。金額は時価ではなく、取得価格ないし評価額を記載します。
  15. 介護支援専門員の氏名及び登録番号
    資格証の写しを添付します。
  16. 従業者である医師、生活相談員、看護職員、栄養士及び機能訓練指導員の資格証の写し
  17. 当該施設の職員名簿(併設する施設に従事する職員は除く)
  18. 全職員の確約書
    会社に不利益となる行動は行わないといった、会社に対する確約書になります。
  19. 業務予定表(年間、週間、日課など)
  20. 施設の所在地を所管する市町村の意見書
    市町村長に依頼する必要があります。
  21. 利用者との契約書
  22. 重要事項説明書
    契約書では、施設が提供するサービスの概要しかわからず、利用料や人員配置などが実際に契約する本人にわかりづらいことがあります。そのため、食事時間や面会の時間などについてさらに詳しく説明する書類になります。
  23. 入所案内(パンフレットなど)
  24. 介護保険法第86条第2項各号に該当しないことを誓約する書面
    保険料の滞納がない、暴力団関係者ではない等を記載してください。
  25. 役員の氏名
    法人や企業の役員になりますので、介護老人福祉施設の中の役員ではありません。
  26. 施設がある場所の土地・建物の不動産登記簿や、賃貸契約書の写しなど
  27. 建築検査済証
  28. 消防検査済証
    福祉施設等が完成すると、地元の消防が設備点検を行います。非常口の場所、及び案内の表示、非常口までの動線の確保、スプリンクラーの設置などです。

介護老人福祉施設の指定申請における手順

介護老人福祉施設は、誰でも開業できるものではありません。いくら、個人的に何の補助金も受けずに開業できる資産を有していても不可能です。なぜなら、介護老人福祉施設の設置数は、都道府県ごとの介護保険事業計画(介護支援計画と呼ぶ県もあり)の中で定められています。この計画は3年を1期としているため、次期の介護保険事業計画を立てる時に新規介護老人福祉施設設立を計画の中に入れなければ、少なくとも3年間は開業することが出来ません。大体どこの都道府県でも、次期介護保険事業計画は当期の最後の年度(当期3年目)の前半(8月頃)までには、都道府県内の介護保険事業の動向を探るヒアリング調査が行われます。この時までに、指定申請を都道府県に相談しておく必要があります。

また地域密着型の介護老人福祉施設であれば、市町村ごとの介護保険事業計画で承認される必要があります。地域によっては、都道府県が行う介護保険事業に関するヒアリング調査も市町村を通して行われますので、まずは開業を予定している地域の市町村の介護保険窓口に相談してみましょう。

市町村窓口に相談した後は、都道府県へ相談することになります。もちろん都道府県庁に直接赴いても良いのですが、大体どこの都道府県でも地域ごとに都道府県庁の出先機関である合同庁舎などがあり、その中に介護保険を扱う高齢者福祉の窓口がありますので、まずはそこに声を掛けると良いでしょう。前項で述べた指定申請の書類は、合同庁舎内の窓口を通して一部ずつ提出することになります。そのため、地域の担当者と顔見知りになっておく点でも有益です。

なお、地域密着型介護老人福祉施設の場合は、当該市町村の窓口への相談、書類提出、指定審査、指定許可となります。

介護老人福祉施設の指定における留意点

介護保険事業は、国、及び都道府県並びに市町村(行政)の予算と、40歳以上であればすべての国民が加入する介護保険料からまかなわれています。つまり、国民が支払っている税金を投入しているサービスです。そのため、上述したような人員基準、設備基準、運営基準に則ってしっかりと事業運営しているかどうかを調査するために、行政によって「実地指導」が行われます。

監査

「監査」は、国保連合会に行う介護保険請求業務の中で、あまりにも返戻などの問題が多い施設や、退職した職員から不正な介護保険請求を行っている情報が寄せられているような施設に入りますので、本当に特別な処置です。

実地指導

「実地指導」は、全て人員基準、設備基準、運営基準に則って行われます。新規開業した場合、開業から3カ月~1年以内に実地指導が行われる都道府県が多いようです。また、開業する前に指定申請書類が提出された段階で実地調査を行う都道府県もあります。実地指導に入る時には、事前に担当部署から書類で案内が届きますので、事前提出資料を期限までに提出しなければなりません。事前提出資料は、都道府県などのサイトからダウンロードすることが可能な行政が多いです。

気をつけなければならないのは、最近の実地指導はただ基準を守っていれば良いわけではありません。これについては、次項の「運営」にもかかわってきますので、そちらでご紹介します。

運営について

介護老人福祉施設は単に高齢者が生活する施設ではなく、介護が必要な高齢者が生活する場所です。つまり、それだけ慎重に且つ親切丁寧に、そして基準を守ってサービスを提供する必要があります。

介護老人福祉施設を開業する目的は「指定基準」の項目で述べた「方針」を達成するためです。できる限り、入所者が自宅で暮らしてきた生活をそのまま継続できるように、さらに介護が必要な状態であっても自立した生活を送ることができるように支援することが目的です。さらに、入所者の立場に立ってサービスを提供することも含まれます。

職員配置数を満たしていれば良いのではなく、本当に入所者主体のサービスを行っているのかどうか、職員のサービス残業や休日出勤、福利厚生などです。さらに、すぐ上で触れた実地指導について例を挙げます。口頭指導だけであれば一般公開はされず改善報告もする必要はありませんが、文書指導になると、改善報告書を提出しなければならず一般公開もされます。さらに指導項目が多い場合、本来であれば3年に一度の実地指導が、翌年も行なわれます。

新規に介護老人福祉施設を開業する予定であれば、開業した後も日頃の運営の中でこれらのことを遵守することが重要です。

まとめ

いかがでしたか。
介護老人福祉施設を開業するために守らなければならない基準や、新たに指定を受けるための書類及び申請方法、そして開業した後に注意すべき運営に関する事項を紹介いたしました。

ここに掲載されている情報は、単に指定基準や申請書類の種類だけではなく

  • 基準内容
  • 基準が存在する理由
  • 必要書類
  • 作成するうえでのポイント
  • 介護保険事業者、特に介護老人福祉施設に求められていること、その理由
  • 求められている基準をクリアする方法

などを説明しています。

もしも介護老人福祉施設を新規開業しようとしている人が身近にいる場合、あるいはこれを読んでいるあなたがそう考えている場合、この情報を一人でも多くの人と共有していただければ幸いです。

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