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サービス付き高齢者向け住宅の設計を行うには?

投稿日:2017年7月13日 更新日:

必見!! サービス付き高齢者向け住宅で介護事業を開業しようとしている方を応援するための記事です。
いざ開業するにあたって覚える事がたくさんあります。そこで、この記事では初めに設計基準の解説から利用できる支援の解説まで、いくつかのポイントをまとめてみました。

サービス付き高齢者住宅の設計

1 サービス付き高齢者向け住宅の設計基準

「サービス付き高齢者向け住宅」とは、単身の高齢者や高齢者夫婦が安心・安全に暮らしていけるよう、一定の面積や設備、バリアフリー構造を条件とするとともに、ケアの専門家による安否確認や生活相談といったサービスの提供を行う賃貸住宅として、厚生労働省・国土交通省が所管する「高齢者住まい法」に基づく制度です。

サービス付き高齢者向け住宅の登録には「規模・設備」、「サービス」、「契約関係」の3つの基準をクリアする事が必要です。

設計基準については「高齢者住まい法」の中の「高齢者の居住の安定確保に関する法律施行規則」における「規模及び設備の基準」の項で定められています。
また、平成28年に一部法改正されたことによって「設備基準」がサービス付き高齢者向け住宅を有する各市区町村で強化・緩和できるようになりました。※市町村における強化・緩和の詳細については後述しております。

「設備基準」は専用部分の床面積、台所やトイレなどの設備について及びバリアフリー構造であることについて記載されています。以下はその概要について記述します。

各戸の床面積は原則25㎡以上必要

  • 高齢者が共同で、居間・食堂・台所あるいはその他の住居内の場所を利用する場合において、十分な面積を保有する場合は18㎡以上あればよい。
  • 市町村が別に定める場合においてはその規模に応じたものとする。

各戸に台所、水洗便所、収納設備、洗面設備及び浴室が必要

  • 共用部分で台所、水洗便所、収納設備及び浴室が共同利用できる場合については、各戸に備える場合と同等以上の居住環境が確保されていれば、各戸にこれらを備えなくともよい。

バリアフリー構造であること。

  • 床は段差のない構造のもの ・便所、浴室及び階段への手すりの設置 ・階段の寸法や廊下幅の確保

以上のように高齢者の安全な居住空間を確保するものとして、設備基準が定められているわけですが、高齢者住宅以前に建物としての基準もクリアしなければなりませんので注意してください。

特に耐火関連について次のように定められています。

  • 耐火構造の住宅: 「建築基準法」に揚げる基準に適合する住宅であること。
  • 準耐火構造の住宅: 耐火構造以外の住宅で「建築基準法」に該当又はこれに準ずる耐火性能を有する構造の住宅であること。

市町村における強化・緩和の詳細について

ここでは、東京都におけるサービス付き高齢者向け住宅の登録基準の強化・緩和策について紹介したいと思います。設置基準については現在のところ、「各住宅の面積」に関して基準が緩和されています。

  • 原則25㎡以上→20㎡以上(既存住宅を改修して整備する場合に限る。)
  • 居間、食堂、台所その他の住宅の部分を高齢者が共同利用するにあたり十分な面積を有する場合は18㎡以上→13㎡以上(既存住宅を改修して整備する場合に限る。)

※ちなみに設備関連以外では、状況把握サービス及び生活相談サービスに関連する内容について基準が強化または緩和されています。

2 サービス付き高齢者向け住宅設計のプロセス

住宅設計の計画から開設までの流れを説明します。各都道府県福祉保健局のホームページに地域ごとの基準が掲載されていますので、そちらも確認してみてください。
ここでは、東京都の福祉保健局のサイトに記載されている事務手続きを参考に流れをまとめてみました。

サービス付き高齢者向け住宅(特定施設入居者生活介護)の事務手続き

① 区市町村との事相前談 → ② 東京都における事前相談

事業計画後ただちに、特定施設入居者生活介護の指定を受けるために業計画後ただちに、特定施設入居者生活介護の指定を受けるために事前相談(併せて事前相談計画書の提出)及び建築予定の区市町村要綱に基づいて書類の提出を行ってください。この際、都における事前相談の前に建築予定の区市町村との事前相談を開始してください。
※区市町村が指定を認める旨を都に提出するため。

③ 建築確認申請  →  ④ 建築確認済書受理

事前相談の結果受理後に建築確認の申請を行ってください。

⑤ サービス付き高齢者向け住宅登録

申請書の添付書類として、申請する「事業目的」が記載された登記簿謄本が必要となるので準備してください。

⑥ 特定施設事業者指定申請

事前相談の結果、指定可能の通知を受けた場合、事業開始予定日(指定予定日)の前々月の月末までに指定申請を行ってください。内容を審査して基準を満たしていることが確認されれば、指定を受けることができます。

⑦ 現地確認

指定予定日の前月中旬を目途に現地確認が行われます。現地確認は、原則として備品等の搬入後の状態で、入居者の受け入れに支障のない状態であるかを確認するとともに、建物等、書面、その他の確認事項として重要事項の掲示の確認がなされます。

⑧ 指定

上記のプロセスを経て、都知事が毎月1日付で申請者宛てに指定通知書を普通郵便で送付します。申請者は指定通知書の写しを該当する区市町村宛てに送付します。
※区市町村から指定に際して意見があった場合は意見を参酌するよう行政指導が実施されます。

参考にした東京都福祉保健局の手引きです。計画書や申請書の詳細が記載されています。
特定施設入居者生活介護(サービス付き高齢者向け住宅)の手引

3 サービス付き高齢者向け住宅設計事務所の探し方

現在は、大中小問わずほとんどの設計・建築関係が高齢者住宅に力を入れていると言えるでしょう。ここでは、住宅設計事務所を探すにあたり着目すべきポイントについてまとめてみました。

優れた実行力がある

土地と建物を貸す場合や土地だけを借りる場合など、それぞれの立場におけるニーズに基づいて、適切なマッチングができる。また関係機関との強いネットワークを築いること。

高い専門性がある

「介護事業推進部」などが設置されていて、介護事業に精通して実績もある専門性を持ち合わしている事で企画から設計、手続き開始など事業開始までをトータル的にアシストする場合が多い。

 

各々の建築会社のホームページや資料請求などで設計についての取り組みを知ることができるので、比較検討しながら自分に合った設計事務所を探してください。

4 サービス付き高齢者向け住宅設計のポイント

居心地の良さだけではなく、安全性や機能性及び危機管理対策も非常に大事と言えます。

安全性や機能性の重視

転倒や衝突するリスクを考慮して柔軟性のある素材の使用。車いすでも機能的に移動できる設計や重量に耐えられる素材を使用する必要がある。

危機管理、省エネ

万が一に備えて、太陽光発電あるいは非常用電源、スムーズな避難動線の確保。

快適な居住空間

「終の棲家」と考えて入居する高齢者が多い事をふまえて、充実した日常が過ごせる
空間づくりが必要となる。

例えば、部屋にお風呂やトイレなどのプライベートスペースを充実させてプライベートやプライバシーに配慮する。あるいは入居者同士の交流を図るため囲碁や将棋ができる共有スペースを充実させる。

5 サービス付き高齢者向け住宅の費用

やはり一番高額なのは物件取得費用と施工費になります。
もちろん施設の一部改修や地代により金額も大きく変わるものだと思います。

建築コストが高いうえ、収益性も低い事から負担は大きくなると考えがちですが、サービス付き高齢者向け住宅の開設は国からの補助金交付の対象となっているため、負担は軽くなります。
この点について次の項で説明したいと思います。

6 サービス付き高齢者向け住宅の供給支援

国土交通省や厚生労働省はサービス付き高齢者向け住宅の供給促進のため、次の支援を行っています。

  • 「補助」住宅の建築、改修費に関する補助金の交付
  • 「税制」面では所得税・法人税の割増償却固定資産税の減額、不動産取得税の減額
  • 「融資」面では借入金額、金利、返済及び担保等の支援措置

以下については、支援区分ごとに表へまとめて概要を記載しております。

整備費の「補助」

支援要件
  • サービス付き高齢者住宅として10年以上登録すること
  • 入居者の家賃が近傍同種の住宅の家賃とバランスがとれていること
  • 家賃等の徴収方法は前払方式に限定されていないこと
  • 事業に要する資金の調達が確実であること
主な支援内容
  • 新築 建設費の10分の1(上限100万円/戸)
  • 改修 改修費の 3分の1(同上)
申請要領等 登録通知の確認後、交付申請を行う→審査→交付決定通知→着工→完了検査→補助金額の決定

「税制」優遇措置

「融資」による措置

所得税・法人税 固定資産税 不動産取得税
主な支援内容 ・当初5年間
割増償却率40%
※耐用年数35年未満は28%
・当初5年間
税額を2/3減税
※土地は含まず
家屋:課税標準から
1200万円/戸
土地:家屋の床面積の2倍にあたる土地面積相当分の価格等を減額
支援要件 床面積 25㎡以上/戸(専用部分のみ) 30㎡以上/戸(共有部分を含む)
戸 数 10戸以上 5戸以上
構 造 主要構造部が耐火構造又は準耐火構造等
その他 国または地方公共団体から建築費補助を受けていること
支援要件
  • サービス付き高齢者住宅として登録を受けていること
  • 省エネルギー対策3以上の性能を有すること
  • 住宅部分の延べ面積が200㎡以上であること
  • 敷地面積が150㎡以上であること
  • その他、住宅金融支援機構の定める基準に適合していること
使用用途 サービス付き高齢者住宅としての建設改良又は購入資金であること
主な支援内容等 借入額 借入れ対象となる事業費の100%以内(10万円単位)
金 利 35年または15年固定金利
返済方法 元利均等毎月払いまたは元金均等毎月払い
返済期間 35年以内(1年単位)
担 保 借入れ対象となる土地と建物に第1順位の抵当権を設定
保 証 一般住宅型は連帯保証人が必要
施設共用型は連帯保証人が不要
※一般住宅型:各居住部分に台所、水洗便所、洗面施設及び浴室が設置
施設共用型:一般住宅以外の施設

まとめ

以上のようにサービス付き高齢者向け住宅の開業を考えている人向けに、登録基準、設計、建築及び利用できる支援について記述してきました。
設置予定の区市町村や賃貸住宅の形態により、詳細は変わってくるので各区市町村や設計建築関係の事業所に関する情報収集をこまめに行う事が大事なのではと思います。
制度の理解、社会資源の活用につながるとともに、ニーズに基づいたプランを提示して実行からその後のフォローまでをしっかりとできる建築業者を見つけることが、事業の成功の可否につながるのではと思うところです。

当サイトでは、サービス付き高齢者向け住宅の事業者向けに定期的に情報を提供しております。サイトを更新した際はSNSでの更新通知を行っています。関心のある方はフォロー及び拡散お願いします。

専門家監修:矢野文弘 先生

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