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住宅型有料老人ホームを開設する際に知っておきたいこと

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住宅型有料老人ホームの開設を考えている皆様。住宅型有料老人ホーム開設の手順や留意点に関して、しっかりと理解はできていますか。

今回の記事では、住宅型有料老人ホーム開設のポイントに関して詳しくご説明していきます。

特に、住宅型有料老人ホームの基準を把握し、信頼できる安心・安全の施設運営をしていきましょう。一読し、ぜひ今後の開業にお役立てください。

ポイント

住宅型有料老人ホーム開設の前に

高齢化社会の日本では、介護事業の需要に比べて供給が追い付いておらず、高齢者の住宅問題はまだまだ解消されていません。在宅生活が困難となった場合の入居施設として有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅のニーズが高まっています。

有料老人ホームとは

有料老人ホームの定義

  1. 食事の提供
  2. 介護(入浴、排泄、食事)の提供
  3. 洗濯、掃除などの家事の供与
  4. 健康管理

上記いずれかのサービスを提供している居住施設となります。(複数のサービス提供も可能です)

高齢者の住まいとして心身ともに穏やかに快適に過ごしていただくことを目的として有料老人ホームは設立されます。日々の健康管理、介護サービス、食事、洗濯や掃除といった生活援助といった日常生活を支援し、入居者の心身の状態に応じてサービスを提供します。

入居の条件として、60歳以上、または65歳以上とするホームが多く、夫婦で入居する場合には夫婦どちらかが上記の条件であることとホームによって定められています。
有料老人ホームには2種類あり、「元気な高齢者が入居するところ」、「介護が必要な高齢者が入居するところ」があり、それぞれサービスや目的が異なります。

2000年の介護保険制度スタートにより民間事業者による運営がしやすくなったこと、2006年の老人福祉法改正により、有料老人ホームにおける定員の廃止、対象となるサービスが増加したこと、2017年現在では高齢化率26.7%と高齢者の住まいへの需要が高く、有料老人ホームは増加傾向にあります。

種類

健康型有料老人ホーム

近年では減少傾向にあり、自立した高齢者が入居対象となります。ホテルのような施設で、露天風呂やレストラン、スポーツジムが併設されているなど、元気な高齢者が生活を楽しむことができる充実した設備となっています。介護が必要になれば退去となります。

住宅型有料老人ホーム

介護の必要がない自立した高齢者、介護が必要な高齢者どちらも入居対象となり、食事サービスはあります。しかし、ホームスタッフの介護サービスは提供されず、外部の介護サービスを利用することになります。在宅と同様、介護が必要な高齢者へは訪問介護や通所介護などの居宅系の介護サービスを提供します。

介護付有料老人ホーム

特定施設入居者生活介護の指定を受けた有料老人ホームで、介護が必要な方に施設のスタッフによる介護サービスが提供されます。ADL(日常生活動作)の維持向上、排泄、入浴、食事など身体介護のほか、洗濯や掃除などの生活援助を提供します。

住宅型有料老人ホームの開設要件

法人(株式会社・合同会社・NPO・社会福祉法人・医療法人)であること

住宅型有料老人ホームでは、安定した経営を継続させなければいけないため、事業が遂行できる経営基盤が十分であり、設置者は個人経営や少数経営は認められず、社会的信用の高い法人であることが必要です。

指定基準(運営基準)を満たしていること

運営基準

  1. 管理規定の制定
  2. 名簿の整備
  3. 帳簿の整備
  4. 個人情報の取り扱い
  5. 緊急時の対応
  6. 医療機関などとの連携
  7. 介護サービス事業所との関係
  8. 運営懇談会の設置
  9. 立地や構造設備
  10. 職員の配置

など

住宅型有料老人ホームでは介護職員等の人員配置に関する基準は特にありません。これは「比較的元気な高齢者を入居対象者として想定していること」、「提供するサービスが利用者ニーズにより異なること」、「ホームは介護保険事業者ではないこと」などから施設が提供するサービスに応じて必要なスタッフが配置されていれば良いとされているからです。

サービス提供の内容に応じてホームが看護師や栄養士を配置、ホームで生活援助サービスを行うなど、入居者個々のニーズに合わせたサービスを提供します。
ただし、介護の知識をもつ常勤の管理者は必要であり、施設の管理と緊急時の対応を行います。

また、施設基準に関しても、同様に設けられておらず、運営基準のみ定められています。
一方で、介護保険における特定施設入居者生活介護の指定を受けている介護付き有料老人ホームでは、介護保険法に基づき職員配置に関しては最低基準が設定されています。

介護職員、看護師の人員配置では3:1の基準があり、要介護1以上の入居者数により、29人未満であれば1名、30人以上で2名、以降50人入居者数が増えるごとに1名と定められています。住宅型老人ホームでは、人員基準が定められていませんので看護師が不在というホームも存在します。

住宅型有料老人ホームの開設手順

有料老人ホームの設立届出手順

  1. 市区町村及び都道府県との事前相談・協議
    多くは、保健福祉の担当部署へ相談することから始めます。
  2. 建築確認申請
    事前相談の結果、許可が出たら建築確認申請を行います。
  3. 有料老人ホーム設置届出
    建築確認済証を受け取った後、速やかに都道府県等へ設立の届出をする
  4. 工事開始及び入居募集開始
    都道府県への届出後、入居募集を行う
  5. 特定施設入居者生活介護指定申請 ※介護付有料老人ホームの場合のみ
    介護付有料老人ホームの場合は特定施設入居者生活介護の指定を受けなければならない。(申請先は事業所の所在する都道府県等。事業開始予定日前々月末までに申請する)

開設

開設手順

法人の設立

法人格が必要です。自治体により、会社を新設する場合は協議が必要となる場合があります。

事務所の設立

住宅型有料老人ホームが開設されるまでの間、準備室という形で事務所を設立しなければいけません。法人設立後、書類の送付や準備、面接などを行います。一時的なものですので、レンタルオフィスや賃貸マンションなどを事務所にしているケースが多くみられます。

人員の確保

住宅型有料老人ホームで勤務するスタッフを確保しなければいけません。オープニングスタッフとして求人広告や求人サイトに掲載します。オープニングスタッフは人気が高いため、集まりやすいでしょう。

応募があれば面接を行い、スタッフを決定します。この際、まだ建物が完成していない場合は、事務所内で法人理念を確認、開設準備や物品の買い出し、事前研修等を行います。

法人内や同事業所内で別施設がある場合は、即戦力となるように研修を始めます。
人員が集まれば、サービス提供のシミュレーションを行いましょう。

事務所備品の準備

住宅型有料老人ホームで使用する物品、備品の購入を行います。建物が完成していない場合は設計図や予定図を確認し、完成後であれば施設内の動線を考えて購入します。
時間がまだあるようなら、1つの店舗で購入せず、数店舗で見積もりをとり購入することでコスト削減できます。

申請書類の提出

行政との事前協議を、各都道府県、政令指定都市、中核都市が定める有料老人ホーム設置運営指導指針に基づき行います。事前協議を行った後に、有料老人ホーム設置届を提出、受理されることで建築工事をスタートすることができます。

※各自治体によって届け出る部署も異なり、なおかつ自治体によって異なる規制がある場合もあるので、詳しくは、各都道府県等、自治体のサイトを参照してください。

開業

住宅型有料老人ホームは特定施設入居者生活介護の指定を受けないため、介護事業者としての指定申請は必要ありません。有料老人ホーム設置届けが受理され、建物が完成すれば開業することができます。

住宅型有料老人ホームの開業費用

会社設立費用

会社の設立には法律で定められた費用、法定費用が必ず発生します。法定費用として必要なものは、定款に関する費用・登記に関する費用です。

株式会社の場合
定款作成
定款に貼る収入印紙代 4万円
定款の認証手数料 5万円
定款の謄本手数料 約2千円
登記費用
登記の再の登録免許税 約24万2千円
合計 約24万2千円
合弁会社の場合
定款作成
定款に貼る収入印紙代 4万円
定款謄本手数料 約2千円
登記費用
登記の再の登記免許税 6万円~
合計 約10万2千円

※定款に貼る収入印紙代は、電子定款の場合不要
※登記の際の登録免許税は資本金額×0.7%
※法定費用以外にも印鑑作成費用、印鑑証明の発行手数料などが必要

会社設立を代行業者に依頼することで約3万円のコスト削減となります。定款に貼る収入印紙代は電子定款にすれば不要となるためです。電子定款作成は専用機器の購入が必要なため代行業者に依頼(約1万円)すると良いでしょう。時間や費用も節約できますので、代行業者の活用がおすすめです。

物件取得費

介護サービスを提供する場が必要です。物件の取得、賃貸契約などどのような物件を希望するかで必要な費用も大きく異なります。

関東近郊20室例として賃料の相場はこちら。
大家へ支払う賃料:60~90万円賃料
保証金・敷金・仲介手数料・初回家賃手数料については、物件によって、金額等が異なりますので、各業者に確認が必要です。

設備・備品費等

物件の準備ができたら、施設内で使用する設備や備品などを購入します。約3000万円必要ですが、開業当初は資金繰りが苦しく、全ての備品を十分に備えるのは難しいでしょう。必需品以外は運営をしながら少しずつ購入していくのもおすすめです。

人件費

サービスの提供内容に応じた人材の確保が必要です。人件費は売り上げの約40%程度となっている施設が多いようです。サービスの提供のためには人材獲得が必要ですが、直接雇用での人材確保が難しい場合、人材紹介会社や派遣会社を利用するケースも増えています。直接雇用に比べて採用コストはかかりますが、確実に人材確保できることがメリットです。

求人広告費

最近、求人広告で多く見られるのは完全成功報酬型の求人サイトです。採用が決まった場合のみ、事業所が採用報酬として約数万円~数十万円支払います。

また、地域の求人情報誌や求人広告の掲載は、掲載するサイズによって必要な値段が異なります。約2万円~50万円のコストがかかります。オープニングということで約150万円程度必要でしょう。

指定申請手数料

住宅型有料老人ホームは下記の場合に、申請・届出が必要です。

  1. 新規に開業する。
  2. サービスや利用料金の変更時
  3. 施設の改修、増築、改築時
  4. 入居者の定員の変更時
  5. 特定施設入居者生活介護の指定を受ける場合
  6. 施設長変更時
  7. 事業の設置や運営法人変更時
  8. 施設の移転・休止・廃止時

※指定申請手数料は、各都道府県等自治体によって異なります。詳しくは、各都道府県等自治体のサイトを確認して下さい。

住宅型有料老人ホームの開業資金調達

日本政策金融公庫の創業支援

日本政策金融公庫は政府系の金融機関として産業の発展を支えています。また、一般の金融機関では起業資金の融資が積極的でないことに対して、日本政策金融公庫は積極的に開業、起業への融資を行っています。

日本政策金融公庫の新創業融資制度では、無担保無保証で最大3000万円が連帯保証人の署名不要で融資可能の場合があります。申し込みから1カ月程度で融資が実行され、10分の1以上の自己資金割合で融資可能です。また、自己資金がなくても起業することが可能です。

しかし、自治体の制度融資の金利に比べて少し高いことがデメリットです。

新規開業資金

女性、若者、シニア起業家支援資金(新企業育成貸付)で35歳未満か55歳以上の方へ、事業開始後おおむね7年以内の方向けの融資です。
融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)、担保・保証人については要相談です。

公的融資

独立行政法人福祉医療機構(WAM)民間の福祉活動への助成金と立ち上げ支援を行っています。

その他に、公的融資には都道府県や市町村などの自治体が手掛けているものもあります。日本政策金融公庫の融資枠に比べると小額ですが、比較的簡便に借りられるメリットがあります。詳しくは、各自治体、都道府県のサイトを参照ください。

銀行等からの融資

介護施設提携ローン・高齢者施設サポートローンと、各銀行からそれぞれ有料老人ホーム向けの融資があります。

※サービス付き高齢者向け住宅は固定資産税優遇、不動産取得税優遇などの優遇措置があり、建設費用、設立に対しても補助金、助成金があります。
※有料老人ホームは受け取ることができません。

固定資産税優遇

国、地方公共団体から建設費の補助を受けている場合、要件を満たすことで2019年3月末まで最大5年間、固定資産税の優遇(軽減)措置(最大83%から50%)を受けることができます。軽減率は市町村毎に定められていますので確認が必要です。

不動産取得税優遇

サービス付き高齢者向け住宅建設に伴う不動産取得時に不動産取得税の控除を受けることができます。

助成金

  • 新築の場合、建設工事費の10分の1以内の助成金を受けることができます。(上限1戸あたり100万円)
  • 住宅部分でない、高齢者生活支援施設を合築・併設した場合、1施設につき上限1000万円の助成金を受けることができます。

住宅型有料老人ホーム開設の留意点

  • 開業して3か月は安定した収入が見込めないことを念頭に置いておく必要があります。すぐに利益が出るほど入居者が埋まらない場合もありえます。

    その間、収入の有無に関わらず人件費や家賃などが発生するので、運転資金として最低3カ月分の給料や家賃などがまかなえる分をあらかじめ準備しておく必要があります。

  • 住宅型有料老人ホームを設置した後、原則年に1回、都道府県事務所福祉課、地域福祉事務所が施設内の立ち入り指導調査を行います。(自治体により異なるますので確認が必要です)

    日ごろから、必要書類や人員、経理については適正に処理しておく必要があります。

  • 施設内で発生する事故や事件、感性症の対応について、マニュアルを作成し、適切に対応しなくてはいけません。
  • 開業後、集客率をアップさせるためには、他施設との差別化を図る必要があります。高齢者が入居することもあり、医療・介護サービスとの連携が成功の鍵です。

    入居者の約73%の方が「1人暮らしが不安になった」「介護が必要になったから」と加齢に伴う身体の衰えを理由に入居を決めています。地域の高齢者ニーズを抽出し、提携介護事業所との連携を密にとり、質の高いサービスを提供しましょう。

まとめ

住宅型有料老人ホームの開設は、集客率・入居者率が高いことで、長期間の安定した運営が見込まれます。住宅型有料老人ホームのメリットやデメリット、適切な運営方法を知り、開設を成功させましょう。

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