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特別養護老人ホームを賃貸物件で開設する方法

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 介護施設の中でも比較的料金が安価で人気の特別養護老人ホーム(特養)。需要はありますが、職員の確保が出来ない、また、土地の取得が出来ずに困っている経営者がいる状況です。

今回、その中でも事業所設置のための基準や物件の探し方、賃貸契約までの手順、そして費用等、賃貸物件での特別養護老人ホーム運営について記載しました。

介護事業の経営や特別養護老人ホームの開業について興味のある方は、この記事を一読し、今後の経営の参考にしていただけたらと思います。

賃貸

特別養護老人ホーム(賃貸物件)における基準とは

要件緩和の内容

 今回の要件緩和では、特別養護老人ホームを借りた建物で運営することが認められるようになりました。

これにより、いわゆるオーナー型での整備を可能にするという内容です。オーナー型とは、土地オーナーが建設し、社会福祉法人が一括借り上げをする、という形での整備です。

これまでは、社会福祉法人等が、土地所有者から土地の提供(売買又は賃貸)を受けて施設を建設する、つまり建物が自己所有であることが原則でした。

また、建物の賃借が可能なのは、国や地方公共団体、すなわち行政機関が社会福祉法人等に貸し付ける形のみでの整備のみが可能でした。

しかし、この賃借による整備が可能となった要件緩和で、運営法人としては建物建設に関わる投資を大きく減らすことができます。

ただし、以下の一定の条件が課せられています。

  1. 都市部であること
     その対象地域は限定的で、市町村が特別養護老人ホームの整備必要性が高いが、土地取得が困難な地域と認めた地域のみ、いわゆる都市部のみとなります。
  2. 既に入所施設を経営している社会福祉法人であること
     むやみに設置が出来たのでは充実したサービスが提供できない可能性が高まるからです。つまり、営利を目的としないということで実績ある社会福祉法人にのみ認められるということになります。
  3. 設置しようとする都道府県またはその隣接する都道府県において既にその社会福祉法人が他の特別養護老人ホームを経営していること
     これは、簡単に言うと特別養護老人ホームの設置運営の経験がないとできない、同一法人で2カ所目以上の特別養護老人ホーム開設の場合からが対象ということになります。
  4. この社会福祉法人が設置している全入所施設の定員の合計数が、貸与を受けている施設の定員の合計数の2倍以上であること
  5. 事業存続に必要な期間の地上権又は賃借権を登記し、建物の賃貸借期間は三十年以上とすること
  6. 一千万円以上の資産確保がされていること
     その経営状況が安定していることも求められます。この安定という面において、別の要件に賃借料が支払えるよう一千万円以上の資産確保と、それらを収支予算書に正しく計上し長期にわたって安定的な支払いが可能であると認められなければなりません。

このような要件を見ていくと、緩和されたといっても簡単に貸与を受けた不動産への設置ができるわけではないことが分かります。

ここまでを要約すると、土地の確保が難しい地域であること、安定した経営ができる見込みであること、そして登記等の手続きを正しく行うことが必要と言えます。

これらを満たせば国や自治体以外から貸与された不動産で特別養護老人ホームを整備することが認められます。

要件緩和の特例

 要件は厳しく決められていますが、特例により状況に応じて各要件を満たさなくとも開設できることもあります。

その一つは、建て替えの際、一時的に貸与を受けて特別養護老人ホームを経営する場合です。既に経営している特別養護老人ホームの建て替えが完了するまでの間は、貸与を受けた施設での定員の制限(具体的には、全体の半数を超えないこと)を受けません。

さらに、登記における要件、そして貸与する都道府県や周辺地域に既存の特別養護老人ホームの設置という条件も適用されません。

 もう一つの特例は、老朽化による移転に伴った貸与で特別養護老人ホームの経営をする場合です。

このときに移転先での貸与による定員が、全体の定員の半数を超えてしまった場合でも許可を受けることが出来ます。しかし、そのためには別の条件があります。

まず、当該特別養護老人ホームの設置される地域および既存の施設が、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・愛知県・大阪府・兵庫県・福岡県であることです。

加えて一億円以上の資産を持っていることなど、安定性を証明出来ればこうして要件を緩和することが出来るのです。

特別養護老人ホームの物件の探し方

方法

 特別養護老人ホームの場合、建物の建設に多額の補助金が交付されることを考えると、物件は賃貸土地、貸し土地などの土地オーナーを探すことが現実的といえます。

こういったやや大きい規模の開発物件は、ディベロッパーといわれる大手不動産等の業者が土地オーナーへ開発提案をしていることが多いのでそういった業者と相談・交渉することが最も多い状況です。

候補物件が出た場合は、土地オーナーには建設補助金が交付されるため、有料老人ホームやアパート経営など他の開発案件よりも魅力的な案件となるため、競合と比較して優位に交渉を進めることができる可能性が高くなります。

ポイント

開業予定地には実際に行ってみること

 実際に目で見ることは必須と言えます。最近では特に地域連携という言葉もキーワードとなっています。

例えば、近隣が住宅街の場合は建設時に反対されることもありますので、地域住民への丁寧な説明会の開催などを想定しなければなりません。

近隣に商店街や保育園、小学校などがあれば地域とどのように連携していくか、実際に現地を見ないとイメージすることができません。

希望条件を明確にすること

 探す作業に入る前にまず、どのような物件を求めるのか詳細まで考えておくことでスムーズに作業が進みます。立地や坪数、賃料など考える要素は多々あります。

事業を行うことが可能な面積や場所であることは前提とし、その他、特別養護老人ホームを経営していく上でどのような場所であれば利用しやすいのかといった例が挙げられます。

特別養護老人ホームには設備基準の異なるタイプがあるので注意

 主に「従来型」「ユニット型」があり、従来型では大部屋のようなタイプであるのに対してユニット型では個室になっているのが特徴です。

型によって、当然必要となる部屋の大きさも変わってきます。この他「地域密着型」「ユニット型地域密着型」があり、それぞれ設備基準が異なるので混同しないようにしましょう。

特別養護老人ホームの賃貸契約の手順

 ここでは、特別養護老人ホームの賃貸の契約に関する手順を紹介します。

  1. 物件情報の収集
  2.  ここは上記の項目で説明した、ディベロッパーからの情報収集となります。

  3. 物件の選定
  4.  収集した情報の中から、希望する条件に当てはまる物件を選びます。複数物件がある場合は、この段階で1つに絞ってしまうのではなく候補として残しておきましょう。

    これはこの後の流れで、絞った物件では特別養護老人ホームとして設置出来ないと分かったときに作業が最初に戻ってしまうことを避けるためです。

  5. 必要書類の準備と防火システム確認
  6.  まずは、火災に関する確認事項を済ませておきましょう。これには自動火災報知設備と防火管理者の有無確認があります。一定面積以上の防火対象物には自動火災報知設備の設置が義務付けられています。

    そのため、不動産業者に有無の状況を確認し、設置されていない場合は貸主に設置を依頼することになります。防火管理者については、収容人数30人以上の建物の場合管理者を選任する必要が出てきます。

    こうした義務や責任については消防署に一度確認をしておくことを推奨します。また、確認書類には建築確認通知書・設計図・検査済証があります。許可を受けるには判断材料として物件の情報を提供しなくてはいけません。

  7. 契約条件の交渉
  8.  自動火災報知設備の設置交渉に加えて、賃料も交渉次第で値下げが期待出来ます。賃料の他には駐車場代や礼金なども交渉する余地は十分にあります。

  9. 物件の決定
  10.  ここまでで候補に残っている物件の中から最も希望する条件に合ったものを総合的に判断して決定していきます。

    完全に希望通りの条件の物件が見つかることは稀であるため、妥協点を探すのも大切です。物件を選定することが出来れば物件契約を行います。

特別養護老人ホームの賃貸に掛かる費用

 状況に応じて、賃貸物件を特別養護老人ホームとするには様々な費用が掛かってきます。修繕費や仲介手数料は、物件の立地や規模によって異なるため、予めオーナーとの相談をしましょう。

費用科目

礼金

 礼金に関しては地域やオーナーによっても異なりますが、相場は家賃の2カ月分です。謝礼の意味で支払うため返金はありません。契約が決まった際に期日を決め、それまでに支払うといった形になります。

敷金

 退去時の原状回復のためのお金で、賃貸の状態によっていくらか返ってくることになります。支払いのタイミングは礼金と同じです。

施工費

 内装に手を加える場合はその作業に対して施工費が掛かります。スケルトン物件ではこの額が膨らむことになります。工事を行う業者と契約をし、その契約の中で支払い期日を設定します。

火災保険料

 火災が発生した場合、多額のお金が必要になる可能性があるため保険に加入するのが一般的です。礼金や敷金等と同じタイミングで初回に払うことが多いですが、その後は保険会社によって更新の期間は異なります。

仲介手数料

 こちらは貸主との仲介を行いスムーズな賃貸契約へとガイドした不動産会社への手数料です。賃料の一カ月分が相場です。

日割家賃

 契約日が月初めとは限らないため初月に関しては日割りで計算した家賃となります。また、契約交渉時にフリーレント期間を定めること、当初3カ月程度を賃料0円と交渉することが一般的です。

補助金

 特別養護老人ホームの賃貸による開業の際、都府県によっては補助金の交付があります。詳しくは各都府県のホームページを確認しましょう。東京都では定員30人以上の特別養護老人ホームが補助金の対象となります。

その交付方法について、工事が複数年度にまたがる場合には年度ごとの出来高に応じて交付がされます。また、初年度に1%の出来高を達成することが出来れば補助金を交付の許可がされます。

各年度において補助事業完了後に出来高を現地で確認し、交付されます。年度補助額が一億円以上になる場合には必要であれば中間払いの請求も可能です。

ここで、補助の対象として工事費及び工事請負費が認められます。また、工事事務費も対象に含まれます。一方、補助対象外の経費には土地買収または整地に要する費用、職員宿舎などが含まれます。

まとめ

 このように介護事業に関する規定は変化を続けており、より良い方向に向かっています。高齢化の進む日本において特別養護老人ホームの需要が高まり、要件を緩和することでより多くの人が利用出来るよう、行政は整備促進を図っています。

介護事業者にとって賃貸による設置が出来るようになった要件の緩和はありがたいことです。特別養護老人ホームの設置要件および賃貸物件の探し方、そしてその手順や費用についてまとめたこの記事が情報収集の一つとして役に立ったと感じていただけたら、幸いです。

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