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ご注意を!介護事業の指定取り消しにならないために知っておきたい6か条


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最近、指定取り消しを受けて、事業停止になる介護事業所が多いらしいけど、私の事業所は平気だね。

その考えは甘いぞ。指定取り消しは全ての介護事業所に当てはまることじゃ。特に近年増えてきており、注意が必要じゃ。

わしの知り合いの老人ホームも指定取り消しになったみたいじゃ。珍しいことではないから気をつけるのじゃ。

はーい!気をつけます!

介護事業の新規開業が進む中、「スタッフもご利用者さんも確保できて事業が軌道に乗ってきた!」と、安堵している経営者の方もおられるでしょう。

しかし、新規開業の裏では指定取り消しになって、廃業に追い込まれる事業所も後を絶ちません。

苦労の末に立ち上げた事業が、思ってもみない形で終わってしまうことは誰しも避けたいものです。

本記事では、介護事業の取り消しとはどういうものか、取り消しにならないために注意するべき点などについてまとめてみました。

ぜひご一読いただき、安定した事業経営に役立ててください。

取消

介護事業所の指定取り消しとは

指定取り消しとは、介護事業において健全経営がなされていない場合に、行政が業務を制限するものです。処分の重さによって以下の3種類に分類されます。

指定取消

介護事業としての指定自体が取り消されるため、介護報酬が請求できなくなります。

単一の事案というよりは、複数の事案が重なった悪質性の高い運営であると判断された場合に指定取消となるケースが多いです。

ほかの自費サービスや介護業以外の事業がない会社であれば、事実上の倒産になります。

全部停止

指定取消の次に重い処分であり、一定期間介護保険に関する権利を行使できなくなります。

一定期間収益がなくなってしまうので、キャッシュフローが十分ある事業所でなければ経営が破綻する可能性が高いです。

一部停止

上記2つと比べると軽い処分ですが、数ヵ月間新規ご利用者の受け入れが禁止されたり、全介護報酬の30%減額などの処分を受けたりすることになります。

経営状況がギリギリの事業所であれば倒産する可能性が高いので、軽く済んだと安心はできません。

上記に挙げた処分ですが、すべての事業において急に通達が来るわけではありません。

実地指導やその後の監査によって、悪質であると判断された場合に改善命令が出されますが、それに応じない場合に処分されることが多いです。

介護事業所の指定取り消し件数

指定取消や停止処分を受けた事業所は年間に何件程度あるのか、またその運営主体や事業形態は気になるところです。

本項では厚生労働省の統計結果を元に、近年の傾向をまとめてみます。

ここ数年の推移は?

取消および停止処分の件数に関しては、厚生労働省の統計結果より、2010年度では118件、2012年度では120件、そして2015年度は227件と年々増加傾向にあります。

2015年度を見ると、介護報酬の請求を行った全国336,602件の事業所の0.06%にあたります。

2012年度の事業所数が281,840件で0.04%という割合に鑑みると、事業所数の増加と共に悪質な事業所も増えてきていると考えられます。

取消処分を受けている法人種別は?

2015年度の取消処分(全部・部分停止を除く)の内訳としては、営利法人が105件、医療法人が9件、NPO法人が3件と、圧倒的に営利法人の不正が目立ちます。

2016年1月に日本政策金融公庫総合研究所が公表した統計データによると、介護事業全体の経営主体のうち営利法人が73.1%、社会福祉法人が15.7%、NPO法人が7.2%とされています。

法人の新規立ち上げか他業種からの参入企業かどうかは定かではないですが、営利法人増加に伴い取消処分が増加傾向にあることは間違いないでしょう。

取消しおよび停止処分を受けている事業は?

処分を受けた事業形態で最も多いのは訪問介護の36.5%、第2位は通所介護の22.9%、第3位は居宅介護支援の12.3%となっています。

介護老人保健施設や通所リハビリテーションに関しては、医療機関に併設している事業所が多いため、処分に至った事業所は数件のみとなっています。

ここからも、営利法人が実施している事業で処分が多いことがわかります。

上記のとおり、取消および停止処分を受ける事業所は年々増加傾向であり、介護経営の質が問題視されています。次項では、その取消事由についてご紹介します。

介護事業所の指定取り消し事由

取消事由としては、2017年3月に株式会社日本総合研究所が発表した統計データを元にして、以下に取消事由を挙げてみます。

介護報酬不正請求(32.3%)

実際に提供していないサービスの請求をしている、作成していない計画書を加算として請求している架空請求の場合です。

取消事由の中で最も多く、2015年度の処分事例内訳では32.3%を占めています。

故意の不正請求のみでなく、人員基準を満たさずに減算していない場合も該当します。

うっかりでは済ませられないので、経営者の方は常に人員配置には気を配っておかなければなりません。

人員基準違反(12.8%)

管理者やサービス提供責任者が常勤・専従に関する人員基準の要件を満たしていない場合や、介護職員や看護職員が必要な人員数を満たしていない場合が挙げられます。

運営基準違反(13.2%)

内訳としては、計画書の不備や管理者の責務違反などが多くを占めています。

職員の労務管理を怠っていたり、労働基準法に違反して勤務させていたりするケースも考えられます。

また、サービス提供のあり方も問題視されるケースがあります。

介護サービスのレベルが極端に低い場合や、設備の問題で安全なサービスが提供できない場合なども該当します。

運営基準に関しては、外部調査のみでなく、ご利用者さんやご家族の方からのクレームから発展する場合もあるので注意が必要です。

法令違反(8.8%)

指定の欠格事由にあたる「経営者が禁固以上の刑を受けて、その執行が終わるまでのもの」である場合や、法人役員のなかに5年以内に介護保険サービスに関して不正または著しく不適当な行為をした者がいる時などが該当します。

虚偽報告・虚偽答弁(12.2% 9.0%)

実際に提供していないサービスであるにもかかわらず、サービス実施記録を作成したり、行政の立ち入り検査の際に虚偽の報告をしたりすることです。

人格尊重義務違反(3.6%)

主には虐待がこれにあたります。身体拘束や暴力などの身体的・心理的虐待を始め、金銭や貴金属類を窃取する経済的虐待も含まれます。

そのほか

ほかの事業所の不正請求に加担したり、または自社と関係のある事業所が不正行為を行っていることを知りつつ黙認したりした場合なども処分の対象となります。

指定取り消しになったらどうなる?

指定取消が通達されると、事実上の倒産であることは前述しました。

キャッシュフローが潤沢な会社で、従業員の給料やご利用者さんへの対応も滞りなく可能であっても、その時点で万事解決とはいきません。

取り消し後の行政措置については以下の対応が求められます。

不正請求があった場合は上乗せして返還

介護報酬の不正請求があった場合は、該当する請求額に40%程度上乗せして返還しなければなりません。

100万円の場合では140万円の返還が求められます。期間については、返還請求の消滅時効は5年となっており、その間に返還しなければなりません。

指定取消後は新規事業立ち上げも不可

指定取消日の翌日より介護保険法に基づく事業運営が禁止され、5年間は新規事業の立ち上げも禁止されます。

介護保険サービスを中心に提供していた法人にとっては、事実上の倒産となるでしょう。

ご利用者さんをほかの事業所へ紹介する

安定したサービス継続のために、取り消しを受けた事業所の経営者はほかの事業所のケアマネジャーたちと相談し、同様のサービスが滞りなく提供されるように努めなければなりません。

返還命令などの経済的措置はある程度猶予がありますが、サービスの中断は直接的にご利用者さんの生活に影響するため、指定の取り消し日までに対応する必要があります。

行政のwebサイト上で公開される

行政処分を受けた事業所は、所在地の都道府県や市区町村のwebサイト上で情報公開されます。

法人名や代表者名を始め、関連事業など詳細まで掲載されますので、大きな法人であっても関連グループへの影響は甚大です。

また、行政からも関連事業に向けられる目が厳しくなるため、同様の不正が行われていた場合は一網打尽になることもあるでしょう。

介護保険外での実費サービス事業が制限されることはありませんが、イメージダウンのため経営悪化することが予想されます。

以上まとめると、指定取消を命じられた法人は事実上の倒産となり、不正請求報酬額に上乗せされた金額を5年以内に返還しなければなりません。

社会的信用も失うため、今後介護業界での事業展開はほぼ不可能です。

介護事業所の指定取り消し事例

年間100件以上の事業所が指定取消になっていますが、具体的にはどのような事由によって取り消しになっているのでしょうか。以下に実例を挙げてみます。

大阪市のデイサービス事業所の例

処分内容

指定取消

処分の理由

運営基準違反

2014年の3ヵ月間と2015年の6ヵ月間の計9 ヵ月間、利用定員を超過してご利用者を受け入れして介護サービスの提供を行っていた。

不正請求
  • 2015年、ある1名のご利用者に対して関連法人が運営するほかのデイサービスにおいてサービスを提供していたにも関わらず、自事業所において実際に提供していない虚偽のサービス提供記録を作成し、介護報酬を不正受領していた。
  • 2014年の3ヵ月間と2015年の6ヵ月間、デイサービス定員超過にかかる介護報酬を減額せずに不正に受領していた。

川崎市の訪問介護事業所の例

処分内容

指定取消

処分の理由

運営基準違反・不正請求

2016年から少なくとも9ヵ月間におよび、すでに退職した者の氏名を用いてサービスの内容等の記録を作成し、それをもとに介護報酬を不正請求していた。

虚偽報告・虚偽答弁

2017年7月に行われた帳簿書類の提出もしくは提示の命令に対して、上記1)のサービス内容の記録を提出するなど虚偽の報告を行った。また、上記1)のすでに退職した者について勤務実態があると虚偽の答弁を行った。

上記2例に共通することは、実在しない人物や別の事業所においてサービスを提供したという虚偽の報告と、その結果報酬を得たという不正請求がセットになっていることです。

これはどちらも意図的であり、悪質とみなされたため指定取消になったと考えられます。

指定取り消しにならないために

前述したような処分事由に該当した場合でも、すぐに処分が下されるわけではありません。

ここでは、指定取消にならないために気をつけることと、行政からの指導が入った場合の対応についてご紹介します。

事業所内で定期的に運営会議を開催する

取消事由のうち、不正請求や運営基準に関しては違反がないか定期的にチェック体制を作ることが大切です。

経営者のみが全体を管理している場合は、事業の隅々までチェックすることは困難です。

人員基準に規定はされていなくても、事業内で介護報酬担当者・労務担当者・サービス担当者などの役割を設けて、それぞれの部門で適切な運営がされているかを報告することは有用です。

一番避けたいのは、経営者のみが不正に気づきつつ、それを指摘する職員がいないケースです。

法令関係は専門家に相談する

サービスの質の担保、夜勤における労働時間の管理や適切な人員配置など、経営者の方は自社の収支以外にも気を配ることが多く大変です。

ややもすると、「法に抵触するかもしれないが少しだけなら…」という気持ちが出てきてもおかしくないでしょう。

経営の安定化のためには、3年に1度の介護保険法改定にも適切な対応が求められます。

よって、法令に関しては社労士や行政書士などの専門家に依頼し、外部の視点からもチェック体制を確立していくことが望ましいでしょう。

改善勧告がなされた場合は速やかに対応する

すべての事業所が不正を知りつつ運営しているわけではなく、違反に気づいていない経営者の方も多いのではないでしょうか。

行政の実地指導で指摘された内容や、内部・外部告発により監査が入った場合などは、すでにレッドカード一歩手前の状態です。

そのうちに改善しようと悠長な対応ではなく、速やかに指摘内容を改善できるよう努めるべきです。

一度目をつけられると、対象以外の基準についても隅々まで調査され、思わぬところから不備が見つかった結果、悪質な運営と見なされることもあるのでご注意を。

まとめ

本記事では、介護事業の指定取り消しについて具体的な事由やその後の対応についてまとめてみました。

取り消しを受けたすべての事業所が意図的に不正を行っていたわけではなく、人員配置や減算義務に気づかないケースも多いでしょう。

また、不正請求に関しては虚偽の報告や答弁などと合わせると、一つの不正が結果的に複数の事由に該当することになるので注意が必要です。

介護報酬のマイナス改定などによって経営難に直面した時こそ、法に抵触する対応ではなく、サービス自体の見直しや事業の方向性を再考することによって乗り切りましょう。

介護事業は営利法人にとってはビジネスですが、第一の目的は社会貢献です。

新規事業の立ち上げが加速する中、高齢者・障がい者の方々が安心して生活できる地域づくりを目指した事業所が増えてくることを願っています。

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