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通所介護(デイサービス)の指定基準とは?

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2016年(平成28年)に厚生労働省が発表した統計では、全国の通所介護(デイサービス)施設・事業所の軒数は約4万4,000件。

小規模の事業所を中心に右肩上がりで軒数が増加している通所介護ですが、通所介護(デイサービス)事業を始めるには自治体からの「指定」を受ける必要があります。

今回は、通所介護(デイサービス)事業を開始するための指定基準について紹介します。
まずは事前知識としてご一読ください。

デイサービス

通所介護の指定基準について

指定基準とは

通所介護に限らず、介護事業を始める際には必ず厚生労働省が定めた「指定基準」を満たしている必要があります。

指定基準は、

  • 人員基準
  • 設備基準
  • 運営基準

の3つで構成されており、3つの指定基準の全てを満たしていなければなりません。

指定基準は厚生労働省が定めていますが、国が指定を行うのではなく、事業所の規模に応じて都道府県または市区町村が行うため、厚生労働省の基準に沿って自治体が独自の解釈で基準を定めている場合があります。
そのため、隣接する自治体でも指定基準に微妙な差がある場合があります。

人員基準

人員基準とは、事業所に配置すべき職種と人数に関する基準です。

  • 生活相談員
    通所介護を提供する時間に応じて、事業所あたり1人以上を配置する必要があります。
    生活相談員には、社会福祉士・社会福祉主事・精神保健福祉士のいずれかの資格が必要ですが、自治体によっては介護福祉士の資格のみでも可としている場合があります。
  • 看護師又は准看護師
    看護師または准看護師が事業所あたり1人以上必要です。
    看護師または准看護師については「通所介護の提供をおこなう時間を通じて専従する必要はない」とされており、簡単にいえば「1日を通じて常駐する必要はない」と解釈できます。ただし、基準においては「密接かつ適切な連携」が必要とされており、例えば連絡を受ければすぐに駆けつけることができる、連絡を取って適切な指示ができるという状態を常に確保しておく必要があります。
    サービス提供日において専従できる時間が確保され、密接かつ適切な連携が可能であれば、同一法人内の複数の事業所での兼任も可能です。看護師または准看護師の資格が必要となるので、家事に専念するために一線を離れた有資格者が復帰し活躍しているケースも多々あります。
    小規模デイサービスの場合は、介護職員の設置で事足ります。
  • 介護職員
    サービス提供の時間数に応じて、利用者15人までに1人以上、5人おきにプラス1人の介護職員が必要です。
    利用者20人の場合、介護職員が最低2人となりますが、利用者21人の場合は21人から25人の枠内になってさらにプラス1人となり3人の介護職員が必要になることに注意しましょう。
  • 機能訓練指導員
    機能訓練指導員とは、高齢者の身体機能の改善や体力減退を防止する訓練を行う職員のことですが、実は「機能訓練指導員」という名称の資格は存在しません。 機能訓練指導員とは、看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の有資格者を指します。機能訓練指導員は事業所あたり1人以上を配置する必要があり、幅広い資格の人が活躍できる場として着目されています。

    リハビリや介護予防に力を入れている機能訓練特化型の通所介護施設では、多人数の機能訓練指導員を配置することになります。

  • 管理者
    事業所の管理・運営を行う管理者が事業所ごとに1人以上必要です。
    特に資格は必要なく、生活相談員・看護師・介護職員・機能訓練指導員との兼務も可能です。

設備基準

通所介護事業は、他の事業と比べると特徴的な設備が必要とされるため、必要な設備についても一定の基準が設けられています。

  • 食堂および機能訓練をおこなう場所
    食堂は利用者1人あたり3㎡以上の面積を確保する必要があります。
    利用者定員に応じて広く場所を確保する必要があるため、事業所の中でも広い面積を取ることになりますが、食堂と機能訓練をおこなうための場所は兼用が可能です。
    都市部に多い小規模の事業所では、食堂および機能訓練室の面積確保が難しいため兼用にしている場合が多くあります。
  • 相談室
    相談室には面積などの基準はなく、テーブルとイスがあれば個室でもオープンな場所でも可能です。
    利用者のプライバシーを確保するためには個室が望ましいですが、個室を確保できない場合はパーテーションなどで仕切りを設けましょう。 相談室は特に設置場所について熟考したいところです。
    事業所の玄関付近や出入りの多い食堂付近などでは利用者のプライバシー確保が難しくなってしまうことに留意しましょう。
  • 事務室
    事業所の管理・運営を司る場所として事務室が必要です。
    事務作業のための机やイス、書類を保管する書棚などを置く場所として活用するため、別の部屋の一画などでは認められず、必ず専用区画を設ける必要があります。
  • 静養室
    ベッドを配置した静養室が必要です。
    入院施設ではないので特定の利用者が専用するものではなく、体調不良をきたしたり、食後や運動後に静養が必要な利用者が使用したり、オムツ交換などで使用する一時的なベッドと解釈しましょう。 ベッドの個数などの基準はありませんが、利用者10人ごとに1床程度、1つの静養室に複数のベッドを配置する場合はパーテーションで間仕切りをするのが一般的です。
    静養室は、利用者の出入りが多く調理の音も気になる食堂付近は避けましょう。
  • トイレ
    トイレは車椅子での利用が可能な広さを利用定員に応じて複数確保する必要があります。
    また、個室トイレには緊急時の呼び出しブザーを設置すると良いでしょう。
  • 浴室
    入浴サービスを提供する場合は浴室を設置する必要があります。

運営基準

  • 利用料金の受領
    介護サービス費のほか、送迎費用・食費・オムツ代など、利用者自身が負担することが適当である利用料金を受け取ることができます。
    ただし、利用料金は事前に利用者やご家族に対しての説明を行い、同意を得る必要があります。
  • 通所介護計画の作成
    通所介護の目的は利用者の要介護状態の軽減・悪化防止であり、これを計画的に実行するための具体的なサービスを記載した通所介護計画を作成し、利用者に交付する必要があります。
  • 運営規定の作成
    事業所ごとの重要事項を定めた運営規定を作成する必要があります。
  • 勤務体制の確保等
    利用者に十分な介護サービスを提供できるように、必要十分な職員の勤務体制を確保する必要があります。
    また、通所介護の質を向上するために、研修の機会を設ける必要があります。
  • 定員の遵守
    通所介護事業所は、利用定員を超えてサービスの提供をおこなってはいけません。
    ただし、災害などの緊急時はこの限りではありません。
  • 非常災害対策
    非常災害発生時の対応方法について計画を作成し、関係機関への通報や連携などについて職員への周知を徹底するとともに、定期的な避難訓練などを実施する必要があります。
  • 衛生管理等
    事業所の施設、利用者が使用する食器や飲料水などは常に衛生的に保つよう、また、感染症の蔓延などを防御するように、必要な措置を講じる必要があります。
  • 事故発生時の対応
    介護サービス提供時に事故が発生した場合は、ご家族や自治体に報告をし、事故発生の状況や措置について記録を作成する必要があります。
    損害賠償責任のある事故については、速やかに賠償をおこなう必要があります。
  • 記録の整備
    従業員、設備、備品、会計などに関する諸記録について、記録を作成のうえ完結の日から2年間は保存する義務があります。
  • 提供拒否の禁止
    真っ当な理由なしにサービス提供を拒否することは禁止されています。

通所介護の指定基準における申請書類

指定申請書類

通所介護事業所を新規で開始する、または以前の事業を修復する場合、開業予定地の自治体に開設計画書を提出します。

開設計画書の名称や開設に伴って必要な説明資料などは自治体によって異なるので、自治体のホームページを確認しましょう。

指定申請書類の具体例

通所介護の指定申請書類について、東京都を例にして説明していきます。

  • 申請書
    東京都の場合は「指定居宅サービス事業所・指定介護予防サービス事業所指定申請書」と「通所介護・介護予防通所介護事業所の指定に係る記載事項」の両方を提出します。
  • 従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表
    併せて、就業規則の写し・組織体制図・資格証の写し・雇用契約書の写しまたは誓約文も提出します。
  • 事務所の平面図・建築図面
    設備基準を満たしていることを証明するための書類です。
    図面と併せて、事業所の外観や内部が詳しく分かる写真も提出します。
  • 運営規則
    運営基準を満たすことを証明するための資料となります。
    運営基準の中でも重要な利用料金の受領についての説明をするため、料金表も併せて提出します。
  • 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書
    国からの給付を受けるために必要となります。

通所介護の指定申請に必要な書類を列挙しましたが、これは東京都の事例です。

自治体ごとに書類の名称が異なるので、必ず申請先の自治体が定める必要書類をチェックしておきましょう。
「東京都の必要書類と比べると申請先の自治体では同じ名称の書類がない」という場合でも、指定基準の重要部分が変わるわけではないので、同じ内容を証明する書類や資料の提出を求められます。

ここで紹介した書類は通所介護の指定申請に必要な書類のみです。

このほかにも、

  • 登記簿謄本・約款…法人格による申請であることの証明
  • 管理者の経歴書
  • 利用者からの苦情を処理するために講じる処置の概要

などの提出も必要となるので、初めての申請であれば自治体の担当部署を訪ねて相談すると良いでしょう。

通所介護の指定基準の留意点

通所介護の指定基準における留意点をまとめてみましょう

指定基準の更新

2006年(平成18年)4月1日から介護保険法が改正されました。
この改正により、急増する介護サービス事業者のサービス品質の向上を目指して、介護サービス事業所・施設の指定・許可の更新制度が新設されました。

指定・許可の有効期間は当初の指定・許可から6年で、以後6年ごとに更新の必要があります。
更新を受けないと指定の効力を失うことになり、満了日をもって事業所の継続ができなくなります。

更新の受付は満了月の前々月頃から開始する事業所が多いので、更新月が近づいたら自治体の担当部署に問い合わせるなどして、早めの更新手続きを心がけましょう。

実地指導

通所介護事業所は、指定の有効期間内に一度(つまり最低でも6年に一度)、指定を受けている自治体が実施する「実地指導」を受けることになります。

実地指導は、その事業所が適切に運営されているのかを確認するためのものであり、運営の改善点を見つけ出そうとする「監査」とは異なる性質のものです。

管理者や介護事業に従事する人材を育成・支援することを目的としているという点では監査のような厳しい側面はありません。
ただし、実地指導においてでも著しく不適切だと判断される点が発覚すれば、実地指導から監査に移行する場合もあります。

監査において指導項目に対する是正が認めらなければ「勧告」を受け、勧告に従わない場合は「命令」が下され、さらに是正が認められない場合は指定取消し・事業停止などの厳しい行政処分を受けることになるので要注意です。

実地指導の前には、原則過去1年を対象とした事前資料を作成し、自治体の担当者に提出しましょう。

まとめ

ここでは通所介護の指定基準について紹介しました。

これから通所介護事業を開始しようとしている方にとっては、現在の計画では足りない部分や失念していた部分もあるのではないでしょうか。

今回の記事を参考に、今一度、計画のチェックを重ねましょう。

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