独立開業・起業

介護事業所が経営理念を正しく活用するには

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介護事業で開業・新規事業立ち上げを考えている経営者の皆さま。介護事業における経営理念の役割や重要性をきちんと理解していますでしょうか?
経営理念は、事業所にとってのいわば「ブランド」です。経営理念を全てのステークホルダーに浸透させ活かすことができれば、収入が改善されるばかりでなく、事業所全体に活力が生まれることにもつながります。
今回の記事では介護事業における経営理念の役割とその重要性、さらには理念をどのように浸透させていくか、に関しても詳しくご説明していきます。一読し、ぜひ今後の開業にお役立てください。

経営理念

介護事業における経営理念の役割とは

経営理念とは?経営理念が果たす役割

経営理念、とひとくちに言っても企業や事業体によって、その理念は異なるもの。中には一般企業であっても、会社代々の伝統や精神などを明確に経営理念として掲げていないところもあります。そもそも、介護事業所にとって経営理念は必要でしょうか?
その答えは「YES」です。
介護事業所を開業するということは、その地域に社会的資源を創出することでもあります。また、ただ営利を追求するものではなく、社会貢献や社会的課題を解決するといった側面もあります。さらには、一般企業以上にステークホルダーの範囲が広く、さまざまな人材と関わることが多いことも特徴です。
そのためにも、明確な経営理念を掲げ、事業所の「根幹」となる想いを皆で共有することは、いわば事業を運営していくにあたって必要不可欠といえるでしょう。全てのステークホルダーに事業所のブランドとも言うべき経営理念をアピールすることができれば、社会からの信頼を得ることができ、社会的価値を高めることにもつながるのです。

経営理念の役割・重要性

経営理念が重要である1つ目のポイントは、「事業所の経営戦略が立てやすくなる」ことです。
事業を安定的に、また未来永劫続けていくためには、しっかりとした中長期計画が必要になります。しかしながら、経営理念がなければ、基軸となる考え方が存在しません。そのため明確にビジョンが立てられず、その時々での経営判断となってしまいます。業界の取り巻く激しい時代において、これでは行き詰まる可能性が高いです。経営理念があることで、事業としての軸がぶれることなく、将来の構想や展望を見通すことができ、経営理念に沿って中長期計画を策定することができるのです。
経営理念が重要である2つ目のポイントは、「勤める職員の共通認識がはかれる」ことです。私の勤める事業所の体験談の一例を紹介します。
私の勤める事業所では、職員採用の際のハローワークの求人情報や人材紹介会社の事業所案内板、福祉の就職フェア等で積極的に経営理念をアピールしてまいりました。その結果、理念に共感した人材が集まり、優秀な職員を採用することができたのです。私たちの経営理念には「利用者さんの笑顔のために」という言葉があります。採用した職員は、「利用者さんの笑顔」という理念に共感した人たちばかり。そのため、事業所の雰囲気はとても明るく、また利用者さんも自由に生活を楽しんでいます。もちろん、笑顔というのは職員それぞれで考え方は違います。しかしながら、「どうすれば利用者さんが笑顔になれるのか」、「笑顔にするためのサポートとは何か」、職員一人ひとりが考えて行動できるようになりました。経営理念は職員にとって、日ごろの行動指針であり、サポートで壁にぶつかったときの判断基準にもなっているのです。
経営理念が重要である3つ目のポイントは、「地域住民の方々への理解がいっそう深まる」ことにあります。介護事業所はその地域にとって、社会的資源となります。
ところが、経営理念がはっきりとしていないと、その地域住民からしたら何を目的に事業を行っているのかが見えにくくなります。また、事業を利用している地域住民にとっても、職員が「何を目標」に「何のため」にサポートをしているのかが見えないなど、不信感が募るケースも考えられます。
経営理念の大きな意義は、全てのステークホルダーが経営理念を共有することで、「それぞれの立場で、同じ方向に向かって歩むことができること」にあります。経営理念とは、皆が向かうべき「道しるべ」のようなもの。事業所の将来の構想や展望、目指すべき目標などの方向性が明確になる大切なものなのです。

介護事業の経営理念を作る際に知っておくべきこと

理念の策定にはステークホルダー同士の話し合いが肝心

「全てのステークホルダーが経営理念を共有することが重要」と前述しました。それゆえ、経営理念を作る際には、経営者、職員、利用者、利用者さんのご家族、また地域住民などのさまざまな立場のステークホルダーが集まり、話し合いを設けることがおすすめです。これにも明確な理由があります。
介護事業は対人業務であり、数多くの人がたずさわります。そのため、一部の人が決めた経営理念では、共感が得られにくい可能性があります。話し合いは、事業所の将来の方向性を決める重要なものです。できれば何度か話し合いを持つと良いでしょう。何度か話し合いを行うことで、それぞれの立場から共通項が見えてきます。
私たちの理念でもある「笑顔」を例に挙げると、利用者さんの立場からは、「自分たちの意向が尊重され、自由に楽しく暮らせる」という考えがあり、利用者さんのご家族等の立場からは、「親がいつも生き生きと笑顔でいてほしい」と考え、さらに職員の立場からは、「サポートした際にありがとう、と笑顔でお礼を言ってくださると仕事にやりがいを感じる」
といったように、それぞれの立場で「笑顔」というキーワードが浮かび上がります。話し合いで出てきた共通項を集め言葉にまとめていくと、皆に分かりやすく、ポジティブな理念が生まれやすいのです。
経営理念を作ったら、経営理念をより具体化した経営方針を作るようにしましょう。そうすることで、すべてのステークホルダーに対してより、共感が得られやすくなります。

介護事業における経営理念の浸透方法

経営理念は作成したら終わりではありません。経営理念を活かすことに意味があり、経営理念をいかにしてステークホルダーに浸透させていけるかが、ポイントになります。私たちが実践している浸透方法の一例を紹介します。

朝礼で毎日唱和する

朝礼で毎日唱和することにより経営理念に触れる回数を増やします。経営者と職員が共に唱和することで、経営理念を共有する認識が生まれます。

事業所の情報を伝えるツールを利用する際は、経営理念を載せる

事業所内であれば、全体会議や全員に配布する資料(事業計画書等)等に載せ、事業所外であれば、ホームページやパンフレット、求人情報等に経営理念を載せます。基本理念を視覚的に捉えることができ、事業所のブランドを内外にアピールすることもできます。

経営理念ができた経緯などをストーリー仕立てにしたり、あるいは映像化したりする

選挙が近くなると、各政党がテレビCMを流しますが、これは各政党が最も重視している政策を映像化することにより、聴覚的・視覚的に有権者に訴える効果があるからです。これは経営理念を浸透させるうえでも有効です。
経営理念ができた経緯はストーリー仕立てにしたり、あるいは映像化したりするようにしましょう。ステークホルダーに対して視覚的・聴覚的に経営理念を訴えることができるだけでなく、経営理念に対し捉え方の差異がそれぞれ生じにくくなります。その結果、すべてのステークホルダーが同じ方向に向かい、より事業を活気づけることにつながるはずです。

まとめ

経営理念にある言葉について、毎日口にはするものの、実際の業務が始まってしまえば、振り返る時間はなかなか持てないのではないでしょうか。また、事業を運営していく中で新たに気付くことなども出てくると思います。
そのためにも、経営理念は年初めや年度初めでも良いので、一度見つめ直して、改めて考える時間を取ることが必要だと思います。経営者自身が経営理念に対する今の想いをまとめ、それをステークホルダー皆で確認、共有することで、より一層経営理念は浸透します。経営理念の策定から振り返りまで、すべての人にたずさわってもらうことが、結束力をより高め、安定的に成長し続けていける事業所の基盤となります。経営理念は、事業所のブランドでもあり、その事業所を表す看板にもなりうるもの。しっかりと策定して、きちんと浸透させていくようにしましょう。
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