【令和2年度版】介護人材の助成金の種類と手続き方法を徹底解説

【令和2年度版】介護人材の助成金の種類と手続き方法を徹底解説

人材の確保や定着支援、労働環境の改善やスキルアップの取組などを行う際に、各種助成金が活用できることをご存知でしたか? 費用のかかる取り組みに対する資金面での補助は、事業者にとって強い味方になります。今回の記事では、厚生労働省が定める助成の内、介護事業者が利用しやすいと思われるものをピックアップし、支給要件や支給額をご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

各助成金に共通の要件

本記事で紹介する各助成金の支給を受けるために、共通の要件を説明します。

1.雇用保険適用事業所の事業主であること

2.支給のための審査(以下イ~ハ)に協力すること

  • (イ)支給または不支給の決定のための審査に必要な書類等を整備・保管していること
  • (ロ)支給または不支給の決定のための審査に必要な書類等の提出を、管轄労働局等から求められた場合に応じること
  • (ハ)管轄労働局等の実地調査を受け入れること など
  • 3.申請期間内に申請を行うこと

    介護人材の採用時に使える助成金

    特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

    高齢者や障害者等の就職困難者を、ハローワーク等からの紹介によって、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成されるものです。

    支給要件

    1.ハローワークまたは民間の職業紹介事業者の紹介により雇用すること

    これに該当する機関は以下になります。

    • 公共職業安定所(ハローワーク)
    • 地方運輸局(船員として雇用する場合)
    • 雇用関係給付金に係る取り扱いを行う旨を示す標識の交付を受け、事業所内に掲げる職業紹介事業者

    2.雇用保険一般保険者として雇い入れ、継続して雇用すること

    3.対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、該当雇用期間が継続して2年以上である事が確実であると認められること

    支給額

    6カ月を1期とし、支給額を期数で割った額が支給対象期間中に支給されます。支給額60万円、支給対象期間1年であれば、1期あたり30万円が2期分支給されます。 対象労働者と支給額、支給対象期間は以下の表の通りで、()内の金額は中小企業主以外に適用されます。

    対象労働者(短時間労働者以外の者) 支給額 支給対象期間
    高年齢者(60歳以上65歳未満)、
    母子家庭の母等
    60万円(50万円) 1年(1年)
    重度障害者等を除く身体・知的障害者 120万円(50万円) 2年(1年)
    重度障害者等 240万円(100万円) 3年(1年6カ月)
    対象労働者(短時間労働者) 支給額 支給対象期間
    高年齢者(60歳以上65歳未満)、
    母子家庭の母等
    40万円(30万円) 1年(1年)
    重度障害者等を含む身体・知的・精神障害者 80万円(30万円) 2年(1年)

    短時間労働者とは、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の者を指します。

    注意点

    1期ごとの支給額は、1期内で対象労働者に対して支払った賃金額が上限となります。そのため、満額支給を受けるためには、半年内で対象の労働者に支給額以上の賃金を支払っている必要があります。また、支給対象期の途中で対象労働者が離職した場合は、原則としてその期の助成金は支給されないので注意が必要です。

    特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)

    雇入日の満年齢が65歳以上の離職者を、ハローワーク等の紹介によって1年以上継続して雇用することが確実な労働者(雇用保険の高年齢被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成されるものです。

    支給要件

    1.紹介日に雇用保険の被保険者(1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者など、失業等の状態にない場合を含む)でない人で、雇入日現在の満年齢が65歳以上の人を雇用すること

    2.ハローワークまたは民間の職業紹介事業者の紹介により雇用すること

    これに該当する機関は以下になります。

    • 公共職業安定所(ハローワーク)
    • 地方運輸局(船員として雇用する場合)
    • 雇用関係給付金に係る取り扱いを行う旨を示す標識の交付を受け、事業所内に掲げる職業紹介事業者

    3.雇用保険の高年齢被保険者として雇用し、1年以上雇用する事が確実であると認められること

    支給額

    6カ月を1期とし、支給額を1期で割った額が支給対象期間中に支給されます。対象労働者と支給額、支給対象期間は以下の表の通りで、()内の金額は中小企業主以外に適用されます。

    対象労働者 支給額 支給対象期間
    短時間労働者以外の者 70万円(60万円) 1年(1年)
    短時間労働者 50万円(40万円) 1年(1年)

    短時間労働者とは、一週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の者を指します。

    注意点

    1期ごとの支給額は、1期内で対象労働者に対して支払った賃金額が上限となります。そのため、満額支給を受けるためには、半年内で対象の労働者に支給額以上の賃金を支払っていなければなりません。また、支給対象期の途中で対象労働者が離職した場合は、原則としてその期の助成金は支給されないので注意が必要です。

    トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

    経験や技能、知識の面で就職が難しい求職者を、ハローワーク等の紹介で一定期間雇用する事業主に対して助成されるものです。トライアル雇用は、雇用者、求職者共に仕事への適性を判断できるというメリットもあります。

    支給要件

    1.対象労働者がハローワーク、地方運輸局(船員となる場合)または職業紹介事業者(以下「ハローワーク・紹介事業者等」という。)の職業紹介の日(以下「紹介日」という。)において、次のイ~ニのいずれにも該当しない者であること

    • (イ)安定した職業に就いている者
    • (ロ)自ら事業を営んでいる者又は役員に就いている者であって、1週間当たりの実働時間が30時間以上の者
    • (ハ)学校に在籍している者( 在籍している学校を卒業する日の属する年度の1月1日を経過している者であって卒業後の就職内定がないものは除く)
    • (ニ)トライアル雇用期間中の者

    2.ハローワーク・紹介事業者等に提出された求人に対して、ハローワーク・紹介事業者等の紹介により雇い入れること

    3.原則3カ月のトライアル雇用をすること

    4.1週間の所定労働時間が、原則として通常の労働者と同程度であること(原則として30時間を下回らないこと。ただし日雇労働者、ホームレス、住居喪失不安定就労者である場合は20時間を下回らないこと)

    トライアル雇用の対象者

    トライアル雇用の対象者は下記になります。

    • 紹介の前日時点において、過去2年以内に2回以上離職又は転職を繰り返している者
    • 紹介の前日時点において、離職している期間が1年を超えている者
    • 紹介の前日時点において、妊娠、出産、育児を理由に離職し、その後安定した職に就いていない期間が1年を超える者
    • 紹介日時点で、ニートやフリーター等で55歳未満の者
    • 紹介日時点で、就職の援助を行うに当たって特別の配慮を要する者(生活保護受給者、母子家庭の母等、父子家庭の父、日雇労働者、季節労働者、中国残留邦人等永住帰国者、ホームレス、住居喪失不安定就労者、生活困窮者)

    支給額

    支給額は、対象労働者1人につき月額4万円(母子家庭の母又は父子家庭の父である場合は5万円)です。対象労働者の雇用から1カ月単位で最長3カ月の助成が行われ、この支給対象月の合計金額が1回でまとめて支給されます。期間中に対象労働者が自己都合により離職した場合や、トライアル期間内に常用雇用へと移行した場合はトライアル期間内に就労した日数に基づいて計算された額が支給されます。

    注意点

    天災等のやむを得ない事情を除き、会社都合で解雇を行った場合は支給されません。

    介護職員の職場定着時に使える助成金

    人材確保等支援助成金(介護・保育労働者雇用管理制度助成コース)

    以前は「職場定着支援助成金」と呼ばれていた制度で、介護事業主または保育事業主が労働者の職場への定着の促進に資する賃金制度の整備を通じて、介護労働者や保育労働者の離職率の低下に取り組んだ場合に助成されるものです。

    支給要件

    助成を受けるには、介護賃金制度整備計画を作成し、管轄の労働局へ提出して認定を受ける必要があります。認定を受けた後は計画に基づいて、賃金制度の整備・実施を期間内に行い、介護賃金制度整備計画期間の終了から1年経過するまでの期間の離職率を、計画を提出する前1年間の離職率よりも、下表に掲げる目標値以上に低下させる必要があります(ただし、離職率が30%を超える場合は支給対象外となります)。また、介護賃金制度整備計画期間の終了から3年経過するまでの期間の離職率が、前回の評価時離職率を維持している必要があります(ただし、離職率が20%を超える場合は支給対象外となります)。

    対象事業所における雇用保険一般被保険者の人数区分 1~9人 10人~29人 30~99人 100~299人 300人以上
    低下させる離職率(目標値) 15% 10% 7% 5% 3%

    支給額

    目標達成時の助成は生産性要件を満たすことで増額されます。
    支給要件 支給額
    制度整備助成 50万円
    目標達成助成(1回目) 57万円(生産性要件を
    満たした場合は72万円)
    目標達成助成(2回目) 85.5万円(生産性要件を
    満たした場合は108万円)

    注意点

    令和2年度より、支給対象となる賃金制度が下記に限定されていますので、厚生労働省のパンフレット等を参考に、最新情報を確認しておきましょう。

    • 職務、職責等に応じた賃金制度に新たに勤続年数に応じた定期昇給制度を加える場合
    • 新たに客観的な職業能力評価基準に基づく賃金の格付けを導入する場合

    人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)

    介護事業主が労働者の職場への定着や、離職率の低下を目的とした介護福祉機器の導入・運用計画を作成し、また導入の効果を把握することで助成されるものです。

    支給要件

    受給するためには、介護労働者の労働環境向上のための介護福祉機器の導入・運用計画を作成し、管轄の労働局へ提出して認定を受ける必要があります。認定を受けた後は計画に基づいて、介護福祉機器の導入・運用を期間内に行い、介護福祉機器導入・運用計画期間の終了から1年経過するまでの期間の離職率を、計画を提出する前1年間の離職率よりも、下表に掲げる目標値以上に低下させる必要があります(ただし、離職率が30%を超える場合は支給対象外となります)。

    対象事業所における雇用保険一般被保険者の人数区分 1~9人 10人~29人 30~99人 100~299人 300人以上
    低下させる離職率(目標値) 15% 10% 7% 5% 3%

    対象となる介護福祉機器

    令和2年度から、助成対象となる介護福祉機器の範囲が一部変更となりました。

    令和元年度の対象機器の範囲 令和2年度の対象機器の範囲
    移動・昇降用リフト(立位補助器、
    非装着型移乗介助機器を含む。)
    移動・昇降用リフト(立位補助器、
    非装着型移乗介助機器を含む。)
    装着型移乗介助機器 装着型移乗介助機器
    自動車用車いすリフト
    エアマット 体位変換支援機器
    特殊浴槽 特殊浴槽
    ストレッチャー

    支給額

    利子を含む介護福祉機器の導入費用、保守契約費、機器の使用を徹底させるための研修費の合計金額をベースとし、上限150万円まで割合で支給されます。また、生産要件を満たすことにより助成額が増額されます。

    機器導入助成:上記合計金額の25%(上限150万円)

    目標達成助成:上記合計金額の20%、生産性要件を満たしている場合は35%(上限150万円)

    注意点

    介護福祉機器の導入・運用後に一定の効果が見られなかった場合は、支給が受けられない場合があります。また、対象の機器以外の導入では支給が受けられませんので注意してください。

    介護職員のキャリアアップに使える助成金

    キャリアアップ助成金(正社員化コース)

    「キャリアアップ助成金」は、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者のような非正規雇用の労働者を、企業内でのキャリアアップ促進の目的で、正規雇用労働者・多様な正社員等へ転換させた際に助成されるものです。「多様な正社員」とは、勤務地限定正社員や短時間正社員等を指します。

    なお、キャリアアップ助成金には、この他にも有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を増額改定し、昇給させた場合に助成を受けられる「賃金規定等改定コース」、有期雇用労働者等と正社員との共通の賃金規定等を新たに規定・適用した場合に助成を受けられる「賃金規定等共通化コース」など、全部で7つのコースが用意されています。

    支給要件

    【対象となる労働者】

    対象となる労働者は、次の(1)から(4)までのいずれかに該当する労働者であること。

    (1) 支給対象事業主に雇用される期間が通算して6カ月以上の有期雇用労働者

    (2) 支給対象事業主に雇用される期間が6カ月以上の無期雇用労働者

    (3) 6カ月以上の期間継続して派遣先の事業所その他派遣就業場所ごとの同一の組織単位における業務に従事している有期派遣労働者または無期派遣労働者

    (4) 支給対象事業主が実施した有期実習型訓練(人材開発支援助成金(特別育成訓練コース)によるものに限る。)を受講し、修了した有期雇用労働者等

    上記の他、複数の要件を満たす必要があります。

    【支給対象となる事業主】

    <有期雇用労働者を正規雇用労働者、または無期雇用労働者に転換する場合、および 無期雇用労働者を正規雇用労働者に転換する場合>

    対象となる事業者は「有期雇用労働者等を正規雇用労働者または無期雇用労働者に転換する制度を労働協約または就業規則その他これに準ずるものに規定している事業主であること」の他、複数の要件を満たす必要があります。

    <派遣労働者を正規雇用労働者、または無期雇用労働者として直接雇用する場合>

    対象となる事業者は「派遣労働者を正規雇用労働者または無期雇用労働者として直接雇用する制度を労働協約または就業規則その他これに準ずるものに規定している事業主であること」の他、複数の要件を満たす必要があります。

    支給要件の詳細は、厚生労働省の『キャリアアップ助成金のご案内』パンフレット 14~19Pをご参照ください。

    支給額

    キャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給額は以下の通りになります。

    助成対象 支給金額(中小企業) 支給金額(大企業)
    ①有期→正規 57万円<72万円> 42万7,500円<54万円>
    ②有期→無期 28万5,000円<36万円> 21万3,750円<27万円>
    ③無期→正規 28万5,000円<36万円> 21万3,750円<27万円>

    <>は、生産性要件を満たす場合の金額になります。

    ※派遣労働者を派遣先で正規雇用労働者として直接雇用する場合、①・③において1人当たり28万5,000円<36万円>(大企業も同額)加算されます

    ※対象者が母子家庭の母等又は父子家庭の父の場合、若しくは若者雇用促進法に基づく認定事業主であって、対象者が35歳未満の場合、①において1人当たり9万5,000円<12万円>(大企業も同額)、②・③において4万7,500円<6万円>(大企業も同額)加算されます。

    ※勤務地・職務限定正社員制度を新たに規定した場合、①・③において1事業所当たり9万5,000円<12万円>(大企業の場合、7万1,250円<9万円>)加算されます。

    注意点

    転換または直接雇用した対象労働者に対し、正規雇用労働者、無期雇用労働者としての賃金を6カ月分支給した日の翌日から起算して2カ月以内に申請する必要があります。また、賞与を含めた転換後の賃金が5%以上増額していても、転換後において基本給および定額で支給されている諸手当の合計額が転換前と比べて低下している場合は、結果として支給対象外となるので注意しましょう。

    人材開発支援助成金(キャリア形成支援制度導入コース)

    中小企業を対象として、人材育成に取り組む事業主を支援する助成措置として創設されたのが「人材開発支援助成金」になります。定期的なセルフ・キャリアドック制度を導入し実施した場合、または教育訓練休暇制度、または教育訓練短時間勤務制度を導入し実施した場合に助成されるものです。

    セルフ・キャリアドック制度とは?

    労働者に、ジョブ・カードを活用したキャリアコンサルタントによるキャリアコンサルティングを、定期的(労働者の年齢・就業年齢・就業年数・役職等の節目)に提供する制度です。セルフ・キャリアドック制度を導入するメリットとしては、「労働者の仕事に対する主体性を向上させる」「新規採用職員などの定着の支援や、育児休業者などの復帰を円滑に行うことができる」ことにより、生産性の向上につながることが見込まれます。

    支給額

    制度導入助成:47.5万円(生産性要件を満たす場合は60万円)

    介護人材の助成金における注意点

    助成金の不正受給

    社内での労働環境改善や、キャリアアップなどの支援のための助成金を受けるためには、受給要件を満たしていなければなりません。助成金の不正受給とみなされてしまうと、刑事罰を受ける可能性もあるだけでなく、以降3年間は一切の助成金の申請ができなくなる他、不正受給を行った企業として労働局により公表されるため注意が必要です。

    助成金には税金がかかる

    助成金は会計上「収入」の扱いになり、税金がかかります。ただし、対価としての収入ではありませんので、消費税がかかることはありません。

    助成金の会計処理に関して

    助成金は、支給が行われるまでに日数がかかる上、支給日もまちまちですので計上のタイミングに戸惑われる方も多いと思います。助成金の計上は、支給決定の通知が届いてすぐ行わなければなりません。計上漏れを起こしてしまうと、過少申告加算税や延滞税のペナルティを課されることになりますので注意してください。

    まとめ

    開業を検討されている事業主の方や、従事者の雇用・処遇改善等を考えている事業主の方には、公的な助成金が大きな助けとなるでしょう。要件をしっかり満たすことで、サービス種別を問わず受給できるものも多く、職場の環境改善や人手不足などの問題を解消するために役立てていきたいところです。

    ぜひ、この記事を参考に利用できる助成金を探して、検討してみてはいかがでしょうか?

    最後までお読みいただきありがとうございました。

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