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「介護甲子園」へ挑戦する理由、そして最優秀賞に輝く事業所を生み出すケア方針とは? -デイサービスありがたい-


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介護の現場から日本を元気にしたいという想いを持つ人たちが開催する、介護業界で働く人が輝ける場である介護甲子園。埼玉県さいたま市と東京都豊島区で介護事業を運営する株式会社ありがたいは、2019年に開催された“第8回介護甲子園”で、事業所のケア方針や事業内容が評価され、東京・池袋のデイサービスが在宅部門の最優秀賞に輝いています。

事業所の運営内容や介護甲子園に出場する理由、受賞につながった独自のケア方針などについて、取締役社長の井手さんにお話を伺いました。

事業所ごとに多様なコンセプトのサービスを提供

――ありがたいでは複数のデイサービスを運営していますが、それぞれの特徴を伺えますか。
最初に立ち上げた、地域密着型通所介護の「デイサービスありがたい大宮」は、「世代間交流で自分らしさを持ったまま地域で過ごす」というコンセプトで、職員の子連れ出勤を推奨しています。職員の子供の面倒をご利用者が見たり、将棋の得意なご利用者は将棋を教えたりと、事業所内で自然と世代間の交流が生まれるようになっています。

また、駄菓子屋を営んでいたご利用者がいることから、デイサービス内に駄菓子屋を作りました。お店には近所の子供たちも通ってくるため、そこでも世代間交流が生まれています。

――世代間交流は、ご利用者の「自分らしさ」も引き出していますね。
そうですね。その駄菓子屋の店構えを作ったのは元大工のご利用者なんです。ご利用者には、デイサービスの中で自分の得意分野を積極的に発揮してもらうようにしています。

――他の事業所もまた違った特徴があるのでしょうか?
同じく地域密着型通所介護の「デイサービスありがたい池袋」は、系列グループで飲食店を経営していることから、食事を通じて豊かな人生を送ってもらうことをコンセプトにしています。野菜は北海道の契約農家から仕入れ、飲食店のシェフを招いて調理した食事を提供します。また、系列グループのレストランを貸し切り、ご利用者の皆さんを連れた外食レクも行っています。

2019年に開設した通所介護の「リハデイありがたい浦和」は、「人生を楽しむためのリハビリデイサービス」として、自分で今日やりたいことを選択してもらう方式を取っています。事業所で決めたプログラムを押し付けるのではなく、ご利用者が自分の一日を自身でデザインできるような自主性を尊重しています。

職員のアドバイスも受けつつ、ご利用者は自分でプログラムを選択する(提供:株式会社ありがたい)

――プログラムを自分で選ぶ、というのはご利用者にとって抵抗感はないのでしょうか?
「毎日やることを考えるのが面倒」など、最初は抵抗感もありましたが、体力測定を毎月実施してリハビリの結果を可視化するなど、自分の目標に沿ったプログラムが設定しやすくなるようにしました。その結果、ご利用者がやりがいを感じられるようになり、今ではプログラムを選ぶことを楽しんでくれています。

――どの事業所もサービス内容が独自性に富んでいますね。
各事業所の施設長が、「自分たちの事業所をこのようにしていきたい」と情熱を持って企画・提案してくれるので、その気持ちを大事にして事業所運営を行っています。それに加え、大宮と浦和の事業所では地域のイベントへの参加など、地域交流も積極的に行っています。

――それはどうしてでしょうか。
ご利用者も地域で暮らす住民の一人なので、介護事業所の中にずっといるのではなく、どんどん地域と関わってほしいという気持ちからです。パート職員は主婦の方が中心のため、主婦ならではのネットワークを生かしてイベントの情報をリサーチするなど、職員も楽しみながら企画しています。

日本一のサービスを目指して、介護甲子園に挑戦

――「介護甲子園」とは、どのような大会でしょうか?
介護甲子園は、介護から日本を元気にしたいという想いを持つ人たちが開催する、介護業界で働く人が輝ける場となるイベントです。全国からエントリーした介護事業所のうち、独自の選考基準で選ばれた事業所が、ステージ上で事業所の理念や取組を発表します。

――介護甲子園にはこれまでも出場されていたのですか?
第3回大会から連続して出場しており、大宮、池袋の事業所がベスト30のセミファイナルに入っていました。直近の第8回大会で、池袋の事業所が在宅部門の最優秀賞を受賞することができました。

デイサービスありがたい池袋が最優秀賞に輝いた瞬間(提供:株式会社ありがたい)

――介護甲子園に出場するのはどうしてなのでしょうか。
理由は大きく2つあり、1つは当社が「介護業界に良い影響を与える」ためです。良い影響は業界のためとなり、その想いに共感して頂いた同業者の方々と、またより良い介護やサービスに繋げていけると感じています。そのために、日本一になるため努力を重ねている自分たちの取組を示す場として、介護甲子園を選んでいます。もう1つは、介護甲子園で良い結果を残せれば、当社の発信力や影響力を高められるのではないかという思いからです。

――発信力や影響力を高めたい、というのは?
所属するグループ全体の理念に「業界の繁栄に貢献する」というものがあり、当社が介護業界に良い影響を与えていくためには、そのための発信力が必要になります。介護甲子園で一定の実績を重ねることで、影響力や発信力を持てるようになると考えています。

――とは言え、介護甲子園に出場することに、職員の方の戸惑いなどもあったのでは?
出場へのモチベーションをどう高めていくかで、パート職員の心に火をつけるのは特に大変でした。ですが会社として介護業界を良くしたい、そのためにも介護甲子園で良い結果を残し、発信力を持てるようになりたい、ということを粘り強く伝えていきました。その結果、今は施設長からパート職員まで皆一丸となって、出場に向けて取り組んでくれています。

――介護甲子園出場を目指す中で、職員の日々の業務への取組はどのような変化がありましたか?
「自分たちの言動や取組が公の場で評価されるものになる」ことから、ご利用者に向かい合う際の意識が明確に変わりました。

また、当社では介護甲子園に出る前から「日本一のサービスを目指したい」という話を施設長や職員にしていました。そこに「介護甲子園での日本一」という具体的な目標が加わったことで、自分たちが提供しているサービスは本当に日本一と言えるのか、という自省的な振り返りが事業所の中で起きるようになりました。職員同士が自主的にミーティングを行ってサービス内容の改善を考えるなど、サービスへの取組も良い方向に変わっています。

――ケアにおける「日本一」のイメージが、介護甲子園を通して具体化されたのですね。
介護甲子園出場という目標を設定したことで、「明確な目標は行動を変える原動力になる」と私個人も気づきがありました。これも介護甲子園出場を通して得られたものの一つです。

――介護甲子園出場によって、同業者や地域のケアマネジャーからの反応はいかがですか?
実績を重ねるにつれて反響が大きくなっています。外部の取材や同業者からの注目は良い意味でのプレッシャーになりますし、地域のケアマネジャーには「対応の難しい利用者でも、ありがたいなら受け入れてもらえるのではないか」という認識を持ってもらえるようになりました。

――お話を伺っていると、介護甲子園出場を通じて職員の自主性、やる気を上手く引き出されているのかと思います。離職なども少ないのでしょうか。
当社は元々離職が少ない、というのが一つ特徴としてあります。その理由として、日本一を目指してより良いサービスを提供しよう、という事業所の一体感が、当社での働きがいややりがいに繋がっているのかもしれません。

飲食業界のノウハウを取り入れたケア方針

――介護甲子園でも紹介されている、独自のケア方針についてお伺いできますか。
「サービスストーリー」と呼ばれる、系列グループの飲食店で採用している考え方を参考にしたものと、「夢アセスメント」の2つがあります。

――それぞれどのようなものでしょうか。
サービスストーリーは、飲食店における入店から退店まで一連の流れの中で、お客様にどのような気持ちになっていただきたいかを設定し、スタッフはそのためにどういう意識で行動するかをシチュエーションごとに定義し、共有するものです。それをデイサービスの一日のプログラムに置き換えています。

――デイサービスでのサービスストーリーは、具体的にどういうものになるのでしょう。
デイサービスでは朝のお迎えから帰りのお送りまでが一連の流れになります。朝のお迎え時であれば、ご利用者には「今日もありがたいのスタッフに会えて嬉しい。安心感がある」という気持ちになっていただくことをゴールとします。そのためのスタッフの意識として「ご利用者・ご家族へ最高の挨拶をし、今日会えて嬉しいことを自然かつ全力で表現する」と定義しています。

サービスストーリーの一部。現在はこれを元に、各事業所でブラッシュアップを行っているとのこと(提供:株式会社ありがたい)

――サービスストーリーはマニュアルとは異なるのでしょうか?
介護業は人と人の関わりであるため、単なる作業マニュアルでは、ご利用者の心を動かすケアにつながりません。サービスストーリーによって「ご利用者に感じてほしい気持ち」を設定することで、ご利用者の気持ちを動かすための具体的な行動を、職員が創意工夫する余地が生まれます。その創意工夫こそが、質の高いケアに繋がっていくと思っています。

――夢アセスメントはどのようなものでしょうか。
普段ご利用者と接する中で、ご利用者の本質的な希望や願いを汲み取り、ケア方針を組み立てるやり方を指します。「旅行に行きたい」「お墓参りがしたい」などの夢があれば、その実現に向け、短期目標・長期目標を組み立てていきます。

ご利用者も自身の夢を通じて「こうなりたい」という状態像を具体的にイメージできることで、生きがい・やりがいの創出につながっていきます。

――夢アセスメントはご利用者の本質的な願いを引き出すのですね。
夢アセスメントの内容は、個別ケア会議、サービス担当者会議で共有する他、利用者の家族にもお伝えします。そのことで、家族も知らなかったご利用者の希望が伝わるなど、家族介護に良い影響を与える側面もあります。

――その他、方針の共有などで大事にされていることはありますか。
理念の共有はとても重要だと考えています。そのため、グループ全体に共通の「経営方針書」を元にした入社時研修を行うようにしています。この中には介護事業としてありがたいが掲げる経営理念なども含まれています。

――今後、介護事業をどのように成長させていきたいでしょうか。
どうすれば介護の仕事がより良いイメージを持たれるようになるか、そこにチャレンジしていきたいですね。そのための影響力や発信力をつけるために事業所のレベルアップを目指したいです。また、職員がチャレンジしたいことを実現できるように、職員の成長に合わせて事業所を増やして行ければと考えています。

取材メモ
「介護業界に良い影響を与えたい、良い影響は業界のためとなり、その想いに共感して頂いた同業者の方々と、またより良い介護やサービスに繋げていきたい」という井手さんの言葉がとても印象的でした。サービスストーリーや夢アセスメントといったケア方針の土台がしっかりしているからこそ、高い目標を掲げ、バラエティーに富んだサービスを実現することが可能なのだと実感できました。

今回のとなりの介護事業所は?


井手雄大(いでかつひろ)
株式会社ありがたい 取締役社長
2013年 株式会社絶好調に入社し、「デイサービスありがたい」の創設メンバーとして、施設長、総施設長、事業部長を務め、新施設、新事業立ち上げや人財育成を担当。2019年 「株式会社ありがたい」の取締役社長に就任する。

取材場所:リハデイありがたい浦和
事業所は建物の4階にあり、ご利用者の中には1階から階段を登って事業所に通うことで、足腰のトレーニングをする方もいるとのこと。

サービス種別:通所介護、訪問介護
住所:東京都新宿区西新宿7-16-13 第2手塚ビル3階
運営:株式会社ありがたい

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