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動画配信でデイサービスの可能性を広げる。全国各地で認知症予防への挑戦 ‐東京マルシェ池上 Yoga & Well Aging Studio‐


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東京都大田区にある「東京マルシェ池上 Yoga & Well Aging Studio」は、椅子ヨガや太極拳などの個性的なプログラムと、農家直送の野菜を使ったランチが人気のデイサービス。しかし、一時は経営難に陥ったこともあるといいます。

デイサービスの危機を救ったのは、機能訓練プログラムの動画配信と、認知症予防のための「健康脳測定会」を組み合わせたサービスだそう。管理者の黒井俊哉さんと、CRM(顧客関係管理)マネージャーで椅子ヨガのインストラクターでもある林莉香さんに、詳しいお話を伺いました。

100本のプログラムを動画配信

――東京マルシェ池上 Yoga & Well Aging Studioのデイサービスの特徴を教えてください。
「食べること」と「動くこと」に注力した、3時間のデイサービスです。体調チェックの後、前半の運動プログラム、ティータイムをはさんで、後半の運動プログラムと、しっかり身体を動かします。その後、農家直送の野菜をふんだんに使った、こだわりのランチを提供します。

――定員は何名ですか?
1日の定員は10名です。要介護1のご利用者がほとんどで、70代~90代までいらっしゃいます。楽しく運動して、美味しい食事が食べたいという方が多く、介護というよりは、コミュニティに参加したいというニーズを感じています。

――運動プログラムの種類が豊富ですね。
椅子ヨガ、椅子太極拳、椅子空手、のどヨガ(舞台女優によるヨガ&発声)、コグニサイズ(脳トレ体操)など、各分野の専門家が考案した個性的なプログラムを提供しています。

いずれも、大きな関節や筋肉を動かして、血流をよくして体温をあげていくような動きは共通しています。ご利用者の見学の際には、プログラムについていけるかどうか、不安に感じる方も多いのですが、やってみると意外とこなせてしまう内容です。もちろん、インストラクターが、その日のご利用者の反応や身体状況を見ながら、柔軟に内容を変更しています。

この日のプログラムは「ルーシーダットンヨガ」。肩甲骨を大きく動かして血流を促す

――運動プログラムなどの動画配信を始められたのはなぜですか?
定員10名の小規模な機能訓練型のデイサービスのみでは、経営が厳しくなってきたという背景があります。そこで、介護保険事業以外の事業として、月100本のプログラムが自由に視聴できる「健幸TV」を始めました。

理学療法士などの専門職をはじめ、各分野の専門家による、多彩な運動プログラムが揃っていたので、動画として配信し、全国各地の施設で機能訓練に使用してもらおうというアイデアです。

――配信するコンテンツはどのように制作されていますか?
東京マルシェ池上 Yoga & Well Aging Studioでの運動プログラムの様子を撮影することが多いです。また、定時配信も行っています。「健幸TV」の利用時間として午前中が多く、固定の時間にした方が参加者が集まりやすいという利用施設からの声もあり、10時頃~の運動プログラムを定時配信しています。

この定時配信サービスに加え、録画した運動プログラムや、演奏などの音楽プログラム、映画、脳トレ、医師による病気予防の講義など、いつでも好きな時に100本の動画を見られるサービスです。

リンパや血流の流れを良くするセルフマッサージをレクチャー

――配信先はどのような施設が多いですか?
デイサービスや、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホームなどです。人材不足、専門職不足で機能訓練を提供することが難しい施設に活用いただいています。また、大田区には、一般介護予防事業の「老人いこいの家」が22か所あるのですが、そのうち4か所に導入いただいていて、通いの場での活用も広がってきています。

「健幸TV」のみの利用であれば月額1万円なので、低予算で毎日イベントを開催できると喜んでいただいています。「健幸TV」と、年2回の「健康脳測定会」を組み合わせたスタンダードプランは、月額1万5000円です。いまではこれらが収益のメインとなっています。

認知症予防の「健康脳測定会」を全国展開

――「健康脳測定会」とはどういうものでしょうか。
MCI(軽度認知障害)よりもさらに早期の段階で、認知症を発見することを目的とした脳の康健状態を見るための測定会です。平成29~30年の経済産業省「健康寿命延伸産業創出推進事業」に採択され、大森医師会の監修のもと、開発しました。

「身体能力」「認知機能」「生活機能」の3つの分野から、総合的に身体状況を測定します。単発の測定ではなく、5年、10年と長期的なモニタリングを行い、認知症の超早期発見からの介護予防・重度化防止を目指します。

――なぜ認知症予防に注力されたのですか?
当社の代表の母親は介護福祉士資格の第1期生で、長く介護業界で活躍してきました。しかし認知症を発症し、出勤できない日々が続いて、いまではグループホームに入所しています。その経験から、代表の認知症予防に対する思いは強くなり、現在では会社をあげて取り組んでいます。

――具体的にはどのように取り組まれているのですか?
2017年に東京マルシェ池上 Yoga & Well Aging Studioで、運動、食事、「健康脳測定会」をセットにした認知症予防プログラムを行いました。測定したデータから懸念点が見つかった人には、大森医師会の医師の病院で、物忘れ外来を受診してもらうというものです。

これをモデルケースに2018年、薬局やデイサービス、サービス付き高齢者向け住宅、通いの場などの全国13か所で、40~102歳の総勢135名を対象に「健康脳測定会」を行いました。その後、「健幸TV」を活用した運動プログラムに取り組んでもらい、半年後に効果測定をして、結果をフィードバックしました。

半年に1度の測定を推奨していまして、早期の認知症の発見と、重度化防止を目指しています。「健康脳レポート」によって、ご利用者の運動へのモチベーションアップや、身体の変化への気付きがあります。

空間認識力や記憶力などの認知機能、握力などの身体機能、嗅覚識別、生活意欲などを測定し、「身体を見える化」する

――現在はどのような場所で開催されていますか?
先日は大田区の銭湯や、東京マルシェ池上 Yoga & Well Aging Studioのランチの食材を栽培している農園でも開催しました。北海道から九州まで様々な場所に広がっています。地域に密着した場所で開催して、気軽に参加してもらえるプログラムにしていきたいです。

測定前には「認知症の傾向がでたらどうしよう」と不安そうな参加者もいるのですが、終わってみると、「やってよかった」と笑顔が多く見られます。認知症の早期発見が目的のひとつではありますが、健康脳測定会をきっかけに参加者同士のコミュニケーションが生まれ、測定後の「健幸TV」を通して継続的なコミュニティが生まれ、介護予防への意欲が高まっていくような形を理想としています。

――各開催地での運営はどのように?
最初の数回で進行方法などを伝えた後は、現地のスタッフに運営してもらっています。地域の方々で作り上げた方が、活発なコミュニティになるためです。地域包括支援センターなどにも声をかけていますが、地域の民間企業が興味を持って、導入いただく事例の方が、現状では多くなっています。

“産直野菜”に“ヨガ”…個性を際立て人を集める

――「健幸TV」のプログラムを魅力的にするためにも、東京マルシェ池上 Yoga & Well Aging Studioのインストラクターは重要な役割がありますね。採用はうまくいっていますか?
中心的なプログラムである「椅子ヨガ」のインストラクターは、人材が充実しています。高齢者にヨガを教えたいというヨガインストラクターは、実は多いと思うのですが、ヨガを全面に押し出しているデイサービスはあまりないかと思います。

デイサービスの特徴をわかりやすくうち出しているからこそ、インターネット検索から見つけてもらいやすく、採用面接につながっています。

――人材定着についてはいかがでしょうか。
福利厚生として、栄養満点の美味しいランチがついていることは、人材定着のポイントかもしれません。ご利用者だけでなく、スタッフも毎日楽しみにしています。

運動スペースのすぐ隣にあるキッチンからは美味しそうな香りが漂ってくる

――農家直送の野菜を使ったランチですね。
実は東京マルシェ池上 Yoga & Well Aging Studioは、もともと八百屋からスタートしていまして、野菜にはこだわっています。希少野菜を栽培する農家とも提携しているので、普段スーパーなどでは見かけない野菜も食べられます。季節に応じた食材を使って、管理栄養士が献立を作っていまして、毎日違うメニューを提供しています。

ご利用者からは、自宅で食べるよりもたくさん食べられるという声をいただきます。運動や呼吸法で内臓が動いて活性化していること、運動中に調理スペースからいいにおいがしてきて嗅覚を刺激されること、みんなで楽しくおしゃべりしながら食べることなどが、理由として考えられます。

この日のメインは、豚肉と厚揚げと野菜のオイスターソース炒め。わかめとキュウリのナムルなど副菜と、野菜たっぷりの味噌汁、デザートのみかんも付いてボリューム満点

――運動と美味しいランチで元気になれそうです。
実際、要介護度が改善して、デイサービスを卒業される方もいらっしゃいます。デイサービスは火・水・木・土曜の4日間、午前中だけの営業ですので、空き時間には、ヨガやキッズカンフーなど、一般の方に向けたプログラムを設けています。その中で、デイサービスを卒業された方向けの運動プログラムも提供しています。

介護度が下がっても運動を続けたいという方は多いのですが、新しい場所に通うことはハードルが高いと感じる傾向があります。そのため、同じ場所に通い続けられることに喜んでいただいています。

また、運動の場がほしいという元気な高齢者も地域に増えてきているので、地域の高齢者が気軽に運動できる場所として、活用してほしいと思っています。

取材メモ
デイサービスの経営難という危機から、発想の転換で魅力的なサービスを開発し、その特徴的なサービスに、ご利用者も、働く人材も集まってくるという好循環が生まれています。根底には、運動プログラムや食事へのこだわり、認知症予防への強い思いがあります。八百屋からデイサービス、配信サービスへと、新しい事業にチャレンジしていく中に、一本筋の通った理念があるからこそ、魅力的なサービスを実現しているのだと感じました。

今回のとなりの介護事業所は?

黒井俊哉(くろいとしや)
東京マルシェ池上 Yoga & Well Aging Studioの施設管理者。医療機器メーカーから介護事業の新規立ち上げを経験し、その後アグリマス株式会社へ入社。

林 莉香(りん りか)
家族介護の経験から、高齢者にヨガを教えたいという思いを持ち、ヨガインストラクター兼CRMマネージャーとして活躍。デイサービスの相談員としても勤務している。

東京マルシェ池上 Yoga & Well Aging Studio
「薬に頼らない本当の健康」を目指し、農家直送野菜や、出汁からとった味噌汁などこだわりのランチと、豊富な運動プログラムを提供するデイサービス。デイサービスの時間外には、一般向けのヨガ教室や、キッズカンフー教室なども運営している。

サービス種別:デイサービス
住所:東京都大田区西蒲田2-5-1クレードル池上
運営:アグリマス株式会社

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