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居宅×福祉用具の連携でアセスメントの質を高め、職員の働きがいを生み出す ‐北全‐


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神奈川県横浜市で、福祉用具貸与・販売、住宅改修と合わせて居宅介護支援を提供している北全(ほくぜん)。地域の高齢者の在宅生活をサポートするために、福祉用具貸与・販売と居宅介護支援の連携が不可欠だといいます。どのような連携が機能しているのか、主任ケアマネジャーで統括所長の北川貴己さんにお話を伺いました。

福祉用具の体験型研修でケアマネのスキルを底上げ

――福祉用具貸与と居宅介護支援は、どちらを先にスタートされたのですか?
もともと、海上物流を支える輸送機器の開発会社として、昭和35年に設立した会社です。平成に入ると、高齢化に伴って、福祉機器の設置なども増えてきました。「自分たちの声を反映してくれる業者がいてくれたら…」というご利用者の声から、福祉用具貸与のサービスを始めました。その後、ご利用者の声をよりダイレクトに聞きたいという思いから、居宅介護支援をスタートさせました。

――各事業の規模を教えてください。
社員数はケアマネジャーが15名、福祉用具相談専門員が15名の計30名です。居宅介護支援事業所は、ご利用者のなるべく近くに事務所を構えたいという考えから、4つの拠点で展開しています。福祉用具貸与の事業所は1拠点です。

――2つの事業の連携を大切にされているそうですね。
本社には、ご利用者の住宅環境を再現したスペースを設けていて、福祉用具や、住宅の改修前と改修後の違いを体験できます。こちらで、ケアマネジャー向けの体験型研修を行い、福祉用具や住宅改修への知識を深めてもらっています。

モデルルームの中に様々な福祉用具が並ぶ(提供:株式会社北全)

――なぜこのような体験施設を作られたのですか?
自立支援のためには、まずは住宅環境を整えることが大切だと考えています。住宅環境が整って初めて、介護サービスが機能します。

ケアマネジャーは自立支援のために、ご利用者に必要なものをアセスメントしますが、住宅環境や福祉用具については、実体験がないと、本当に必要なのか判断が難しい場合が多くあります。そのため、実際に体験してもらうことを重視しています。

前回の研修では、専用の器具をつけて、片麻痺の疑似体験をしてもらいました。改修前のトイレで立ち上がることや、段差を上がることの大変さを感じてもらえたと思います。なぜ手すりが必要なのか、手すりが必要な場所はどこなのかなど、実体験を通して理解してもらうことができました。

住宅で想定される段差などが再現されている(提供:株式会社北全)

このような研修は定期的に開催していて、社内のケアマネジャーだけでなく、地域のケアマネジャーにも声をかけています。前回の研修には地域から多くの希望があり、総勢60名ほどのケアマネジャーが参加しました。

――自社のケアマネジャー以外も対象なのですね。地域のケアマネジャーへの営業活動の意味合いもあるのでしょうか。
会社を知ってもらう機会にはなると思いますが、営業活動としての意味合いはありません。10年以上前から地域のケアマネジャーへの研修は行っていますが、あくまで地域全体のケアマネジャーのスキルアップに寄与したいという思いです。

――地域に対して貢献されているのですね。
自社に限らず、地域全体のケアマネジャーの知識が深まることで、ご利用者に適切な福祉用具を届けられるようになり、自立した在宅生活を支援できると考えています。

アセスメントの質が働きがいにつながる

――体験型研修以外にも事業間で連携される場面はありますか?
社内の連携では、福祉用具の営業担当全員と、居宅からの代表2名とで、毎月定例の情報共有の場を設けています。また、居宅の事業所を営業担当が訪問して、新商品の紹介やご利用者の声など、リアルタイムの情報を共有しています。

――連携の効果はいかがでしょうか。
ケアマネジャーと福祉用具専門相談員の双方の、アセスメントの質が高まっていると感じます。福祉用具は、ご利用者の状況にあったものを、スピーディーに提供することが重要で、必要な福祉用具は時間とともに変わっていきます。本当に必要なものを必要なときに提供するには、適切なアセスメントで、ご利用者のニーズを読み取らないといけません。

ご利用者自身やご家族は、何が理由で生活がしづらくなっているのか、はっきりと言葉にできないことがほとんどです。その声にならないニーズを拾えるかどうかが重要になります。情報連携や研修により、前提となる知識が醸成できていることで、適切なアセスメントにつながっています。

――声にならないニーズを拾うには、例えばどのような点に注目されているのでしょうか。
例えば、福祉用具専門相談員のご利用者宅でのモニタリングでは、靴の裏、杖のゴムのすり減り方、室内の段差、部屋の動線、家具の配置など、様々なチェックポイントがあります。壁の手垢の位置から、どこに手をついて移動しているのかなども確認します。その位置に手すりを設置すると、格段に生活がしやすくなった、という例もあります。

自分のアセスメントによって、ご利用者に在宅生活への自信を取り戻してもらうことは、職員の働きがいにもつながっています。

――ご利用者の気持ちを前向きにできることは、確かに働きがいにつながりそうです。
病院から在宅生活に戻ったときに、思うように動けないと、行動範囲が狭まり、気持ちも沈んでしまいます。住宅環境を整えることで、できることを増やし、自信をつけてもらうことが大切です。住宅環境と介護サービスをどうセッティングできるか、腕の見せ所ですね。

以前担当した、足を骨折したご利用者は、ベッドから立ち上がることができず、すっかり気持ちが落ち込んでいました。福祉用具の知識を活かして、ベッドの高さを少し高く設定し直すと、すっと立ち上がることができ、ご家族も大喜び。ご利用者も自信を取り戻されて、立てないというショックから立ち直ることができました。ほんの小さなことでも、自信を取り戻すきっかけになり得ることを感じ、自分の仕事へのやりがいを強く感じました。

職員もこういった成功体験を日々重ねていて、それが大きな働きがいになっていると感じています。

――研修や連携による職員のスキルアップが、ご利用者満足だけでなく、職員のモチベーションも高めるのですね。
研修については他に、外部研修にも積極的に参加してもらっています。業務に支障がない範囲であれば、勤務時間中に自由に参加していいというルールです。受講費用は会社が負担します。活用している職員は多く、居宅の場合、ひとりあたり月1回は外部研修を受けています。

また、資格取得も推奨していて、福祉用具相談専門員のうち半数は、福祉住環境コーディネーターの資格も取得しています。もちろん、資格取得の費用も補助します。今後も職員のスキルアップをサポートしていきたいと思います。

在宅生活への移行をスムーズにする積極的な医療連携

――医療機関との連携にも注力されているそうですね。
退院に合わせて、住宅環境を整えることが多いので、医療機関との連携も大切です。病院はフラットで、手すりもあり、トイレも広く、動きやすい環境です。そこから在宅生活に戻ると、急に動けなくなってしまうことがあります。身体状況に合わせて住宅環境を変えるとともに、住宅環境に合わせたリハビリを依頼するなどしています。

――住宅環境に合わせたリハビリとは?
例えば、ご利用者の自宅にある段差の高さが何センチなのか、病院のリハビリ担当に伝えることで、病院でのリハビリで、その段差をあがる練習をしてもらうなど、連携しています。ケアマネジャーから積極的に情報共有していきます。

――自宅の段差とは、詳細な情報を共有するのですね。
地域のケアマネジャーの中には、細かな情報共有は敬遠されると感じている人も多くいますが、医療関係者は情報を欲しがっています。医療関係者にインタビューしたところ、一番悲しいのは再入院で、例えば右足を骨折した方が、今度は左足を骨折して再入院、ということがあっても、住宅環境をチェックして原因を探るようなことは、なかなかできないといいます。

医療関係者が欲しい情報とはなにか、地域のケアマネジャーに伝えていくことで、積極的に医療機関と連携できるよう、意識を変えていきたいと思います。

――医療機関への情報共有のタイミングは?
自社のケアマネジャーは、ケアプラン作成から1か月後、医療機関にご利用者の状況を共有するということを、サービス開始時から継続しています。必要ないと思われていないか不安なときもありましたが、医療関係者からは、状態が悪くなった話だけでなく、在宅生活がうまくいっている話も聞けるのは嬉しい、という声をもらっています。医療機関には、悪くなったときの情報ばかりが入ってきてしまうので、プラスの情報が日々の励みになるとのことです。

日常的な連携を深めることもできるので、積極的な情報共有は今後も続けていきたいと思っています。

取材メモ
住宅環境のちょっとした工夫で、ご利用者が在宅生活を送る自信を取り戻せる、というお話が印象的でした。知識があるかどうかで、アセスメントの質が大きく変わることが、お話から伝わってきました。福祉用具貸与と居宅介護支援の連携、医療機関との連携、地域全体のケアマネジャーのスキルの底上げなど、ご利用者の在宅生活をサポートするための取組に尽力されています。

今回のとなりの介護事業所は?

北川 貴己(きたがわ きみ)
主任ケアマネジャー、福祉事業部長。全国福祉用具専門相談員協会の神奈川県ブロック長を勤め、現在は横浜市中区の福祉用具部会の部会長として、多職種連携の検討会を主催するなど、地域連携に取り組んでいる。
北全(ほくぜん)
福祉用具のレンタル・販売、住宅改修、介護保険サービスに関する相談・プラン作成など、福祉関連事業から、本牧港湾倉庫や一般倉庫の管理・運営事業も行う。倉庫事業では、地域の介護事業所からのニーズもあり、介護文書の保管サービスも開始している。

サービス種別:福祉用具貸与、居宅介護支援
住所:神奈川県横浜市中区本牧ふ頭1-1
運営:株式会社 北全

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