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認知機能の維持・改善を目指す「学習療法」で選ばれるデイサービスに-アタマの体操教室 ふくろう舎-


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東京都調布市で地域密着型通所介護事業を行う「アタマの体操教室 ふくろう舎」。事業所名にもあるように、ここでは脳のトレーニングに役立つプログラムを積極的に提供しています。中でも「学習療法」は、認知症高齢者の脳機能維持・改善に効果があると言われ、サービスを希望するご利用者で順番待ちが発生しているほどです。

ふくろう舎代表の山口さんによれば、学習療法のサービス提供により、ご利用者の獲得だけではなく、職員の介護スキル向上や人材獲得・離職防止まで幅広い好影響があるとのこと。ご利用者と職員双方から選ばれるデイサービスの秘訣を伺いました。

「学習療法」に注力して利用者増

――事業所の概要を教えてください。
「アタマの体操教室 ふくろう舎」は2014年1月に創業しました。職員は現在11名で、半数は創業時からのメンバーです。介護職員は全員、初任者研修以上の介護資格を取得しています。

――ご利用者の平均要介護度はどのくらいでしょう?
平均要介護度は2.0で、ご利用者がMCI(軽度認知障害)から認知症に移行していく段階で、ふくろう舎を利用いただくことが多いですね。

――事業所の稼働率はいかがですか?
今は各曜日で利用待ちの方がいる状態です。空きが出た際は既存のご利用者に優先して案内しています。

――既存のご利用者を優先するのには、理由があるのですか?
学習療法は週4回以上行うことで、認知機能の維持・改善に効果的とされているため、できるだけ多く通ってもらうようにしています。都合が合わない方には自宅で学習療法を行ってもらうよう、ご家族に協力いただくこともあります。

こちらのご利用者は週3回、ふくろう舎に通っているとのこと

――ふくろう舎で提供している学習療法は、どのようなプログラムですか?
学習療法はKUMONが開発した「くもん学習療法システム」を採用したものです。ご利用者2人に対して職員が1人付き、簡単な読み書き計算、数字盤といった学習教材を音読しながら解いていきます。そのことで脳の前頭前野が活性化し、認知機能の維持・改善にも良い効果が得られます。

(左)学習療法に使うテキスト教材 (右上)ご利用者の状態を計る検査票
(右下)数字盤は、数字の書かれたコマを音読しながら盤面に置いていく

教材を使った学習は約20分で、その後職員とご利用者で、教材を題材にしたコミュニケーションを約10分行います。これは教材を解いた後に会話をすることで、脳がより活発に働くようになるという研究結果に基づいたもので、ここまでが学習療法のプログラムです。

ご利用者の解答ペースを見ながら、学習療法を進めていく職員

――学習療法を行う上での注意点はありますか。
「楽しく、ストレスなく行える」ように教材のグレード設定がとても重要です。問題がスムーズに解けないなどご利用者のストレス負荷が高くなると、認知機能に良くない影響を与えるといわれていることが理由です。教材のグレードは24段階に分かれており、ご利用者の認知機能の状態に合わせ一人ひとりに適切な教材を提供しています。

また、学習療法を始める前には、脳にどのような効果があるかの説明を毎回行います。「脳に良いトレーニングだ」とイメージすることで、取組への意識が高まるんです。

職員がイラスト図を使って学習療法の効果を説明する

――ご利用者の様子はどのような感じでしょうか。
「脳に良いことだから」と、皆さんとても前向きに、集中して学習療法に取り組んでいます。コミュニケーションの時間も、ご利用者同士の相性が良ければ、職員が話題を振らずとも話が膨らんで止まらないくらいです。


 

――職員の方はスムーズに学習療法を行えるのでしょうか?
学習療法を行う職員は、研修などを受けて「学習療法実践士」という資格を取得していますので、その点は問題ありません。当社には9名の学習療法実践士がおり、その内4人は「学習療法マスター」という上位資格も取得しています。マスターは講師ができるので、今は自社内で学習療法実践士の研修も行っています。

――事業所を挙げて学習療法に取り組んでいるんですね。
その成果もあってか、当社はKUMONから「学習療法実践モデル施設」の委嘱を受けています。KUMONが主催する学習療法地域交流会では、年に数回、当社を対象とした見学会を行っており、そこから学習療法の導入につながった施設もあったそうです。

――ちなみに学習療法は保険外サービスなのでしょうか?
保険外サービスの扱いになるため、教材費として月に2,100円をご利用者に負担いただいています。月の利用回数に関わらず一定の金額です。

利用者の状態変化をデータで「見える化」

――ご利用待ちの方もいらっしゃるとのことでしたが、問い合わせは多いのでしょうか。
ケアマネジャーからご利用者を紹介いただく他、ご利用者家族が学習療法のことを調べて、当社に直接問い合わせされるケースもあります。中には四国からのお問い合わせもありました。ただ、創業して半年くらいは、ご利用者がほとんどいない状態でした。

――そこからどうやって、ご利用者の獲得につなげられたのでしょう。
創業当初、学習療法は地域内でほとんど認知されておらず、サービスの特徴を理解いただくことに難しさを感じていました。そんな折、狛江市のケアマネジャーの方から「ケアマネ勉強会で学習療法を紹介してほしい」と声をかけてもらい、それをきっかけにして徐々にご利用者を紹介してもらうことができました。

――なぜ「ケアマネ勉強会で紹介してほしい」という声がかかったのでしょうか。
日頃の学習療法の成果を「学習療法経過報告書」という形にまとめ、定期的にご利用者のご家族にお渡ししています。これは当社が独自で作っているものですが、こういったものを地域のケアマネジャーのみなさんや地域包括支援センターにお渡しすることで、学習療法の効果の理解につながったのではないかと思います。

今では調布市の地域包括支援センターから介護予防教室の講師を依頼されることもあり、少しは学習療法の認知自体も広がってきたなと思っております。

学習療法経過報告書の見本

――報告書にはどのようなことが書かれているのでしょうか。
ご利用者は定期的にMMSE(認知機能検査)、FAB(前頭葉機能検査)を行っており、その数値をグラフにして状態変化をデータとして見れるようにしています。その他、日頃の事業所での様子などをコメントとして記入しています。

――学習療法の成果が目で見えるのはいいですね。
良い結果が出ていると、学習療法の効果があったのだという実感が湧きますね。FABの検査結果や事業所での様子から「感情の抑制が難しくなっている」ことが見受けられる場合、そのことをコメントしたりもします。するとご家族が自宅での様子と照らし合わせることができ、ご家族のご利用者への接し方にも良い影響があります。

「家族会」で、職員のモチベーションもアップ

――学習療法の成果を伝える取組は、他にどのようなものがありますか。
この事業所にご利用者家族をお呼びする「家族会」を年に2回開いています。ご利用者家族に学習療法の成果・データを直接伝えることができ、自宅での学習療法の実施を促す効果があります。先ほどお話した報告書もこの家族会でお渡しします。

家族会では、通所回数に応じたご利用者の状態変化なども伝えている(写真提供:合同会社 創)

――家族会について、職員の反応はいかがですか。
ご利用者の自宅での様子を聞いてケアに活かそうとするなど、職員もご利用者家族とのコミュニケーションの機会を大切にしています。

また、職員にとっては自分たちの仕事を実際に見てもらえるのがすごくやりがいとなっていて、家族会を開催する意義として、そこも重視しています。ご利用者家族に自分たちが行うケアを認めてもらえることでモチベーション向上につながっています。

――学習療法の取組自体は、職員にどのような影響がありますか?
学習療法では30分ほどご利用者の様子を集中して観察するため、そこで感じた体調の変化などの気づきを普段のケアに活かすことができます。

それだけではなく、学習療法の計画・実行・改善といったサイクルは介護サービスに求められるPDCAとも共通しており、学習療法の習熟を通じて介護自体のスキルも上がっていると、職員を見ていて感じます。

――学習療法を通して、普段のケアの質も高まるのですね。
もちろん、普通のレクリエーションなどに比べると学習療法の提供は大変な部分もあります。ですが職員たちもやりがいを感じてくれていますし、学習療法は認知機能の維持・改善を数値で判断するため自分が行っているケアの成果を実感しやすい特徴があります。

そのことは結果として離職の少なさにもつながっていますし、人材獲得にも好影響を生んでいます。実際、当社の職員は「学習療法を行いたい」という志望動機で入社してくる人がほとんどです。

――学習療法には、それだけの魅力があるということでしょうか。
学習療法自体はとても素晴らしいプログラムだと思っています。ですがその前提として、人材である職員は大切にしなければいけません。学習療法に「人こそすべて」という言葉があるのですが、職員が働きやすい環境を作ることでご利用者への良い介護につながっていると思います。

――働きやすい環境への取組はどのようなものが?
学習療法実践士、実務者研修、介護福祉士の資格取得に向けた各種補助を行っています。私自身も小さい子供がおり子育てや介護の大変さがわかるので、休みが取りやすいような社内制度を、改めて整備しているところです。

学習療法で、介護予防にも力を入れる

――今後は、学習療法をどのように活用していきたいですか。
介護予防の取組として、この事業所で「頭のトレーニング教室」を日曜日に開催しています。多い時は20人くらいの方が来てくださり、学習療法を広める機会にもなっています。そして、まだ企画段階ですがふくろう舎の2号店をオープンさせたいと考えています。そちらではより、介護予防にも力を入れていこうと考えています。

いずれは学習療法をメインにしつつ、重度の要介護度の方、認知症の方、MCIの方などあらゆる方に在宅の全面的な支援ができる施設を作りたいですね。

取材メモ
山口さんは介護事業の運営について「同じ目的に賛同してくれる人が集まるのが、介護事業ではとても大切。目的を一つにできるようなものがあれば、皆が同じ方向を向きやすい。そういうシステムが作れれば辞める人も少なく、良い施設になると思う。当社であれば学習療法を通して、スタッフ全員が同じ方向を向いてくれています」と話していました。取材中、ふくろう舎に通っている80代の女性にお話を伺ったところ「同じ一日でも家にいるだけよりとても楽しいし、脳にも良いからいいことづくめ。このデイサービスに来ることが生きがいです」とのことでした。学習療法を柱とし、ご利用者も職員も一丸となって「認知機能の維持・改善」という目標に向かっていることが実感できました。

今回のとなりの事業所は?


山口雅之(やまぐちまさゆき)
合同会社 創 代表 生活相談員
介護施設での勤務時、学習療法に興味を持ち、実践の場として「アタマの体操教室 ふくろう舎」を創業。積極的な学習療法への取組が評価され、事業所はKUMONから「学習療法実践モデル施設」を委嘱されています。

アタマの体操教室 ふくろう舎
京王線国領駅から徒歩4分。従業員11名の地域密着型デイサービス。年2回開催する家族会はご利用者家族同士で悩みを共有するなど、介護の孤立化を防ぐコミュニケーションの場にもなっているそうです。

サービス種別:地域密着型通所介護
住所:東京都調布市国領町3-8-15 くすのきアパート5-108
運営:合同会社 創

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