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コミュニケーション改革のきっかけは主要職員の離職 スタッフ誰もが働きやすい職場環境の実現へ-アデリーケア 練馬事業所-


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西武池袋線 石神井公園駅から徒歩2分。アクセスの良い好立地に事務所を構える「アデリーケア 練馬事業所」。ご利用者やそのご家族、関係事業所、そして介護職自身…介護に関わるすべての人を明るく照らすことをミッションに掲げる、代表取締役の田近さんに、訪問介護事業におけるコミュニケーションの重要性を語ってもらいました。

創業5年目で従業員ファーストを徹底

――事業所の概要を教えてください。

練馬区内で訪問介護事業を中心に提供しています。サービス種別ごとの提供割合は訪問介護が5割、障害福祉の居宅介護が3割、その他に重度訪問介護や移動支援(外出)、育児支援や保険外サービスなどです。

――スタッフは何名でしょうか。

私以外には正社員が1名、パート15名の合計16名のスタッフがいます。パートの年齢は20代~70代まで幅広く、当社を自分の娘さんに勧めて頂き、母娘二代で勤めている方もいます。私の母親もパートとして創業当初より手伝ってもらっています。

――重度訪問介護は2019年からの事業と聞きました。新たに始められた背景は?

ご利用者の中に重度訪問介護を必要とされる方がいて、その方のニーズに合わせてサービス提供の幅を広げた形です。そのため重度訪問介護のご利用者は現在1名となります。

――会社の基本方針にもある「コミュニケーションの重要性」を意識するようになったきっかけは?

当社は「ヒューマンリライトケア」という社名なのですが、この名前には「介護に関わるすべての人を照らしたい」との想いがあります。支援させて頂くご利用者はもちろん、その方々を支えるスタッフ自身が明るくやりがいをもって働ける職場環境を作ろうという気持ちが創業当初からありました。

ですが、事業が始まると経営者という立場ではなく、現場に出てご利用者のケアに率先して関わるようになっていました。そのため、私が事業所に不在の時間が多くなり、スタッフが相談したいことや不満に感じていることがあったとしても、意思疎通が上手く図れず、職場に不信感が募り、結果として離職が続いてしまいました。創業5年目の2015年には主要だった複数の正社員が離職し、居宅介護支援事業の休止など事業規模の縮小を余儀なくされました。

――経営者としては、かなりショックな出来事だったのでは?

はい、その時は相当ショックを受けました。知り合いの経営者にもよく相談をしたものです。しかしそのタイミングで、私自身がすべての元凶であり、今まで間違った行動や考え方をしてきたのだと気づき、「ご利用者を支えるスタッフがもっと明るく輝いて働ける職場にしたい」という創業当初の想いに改めて向き合うことができました。それを実現していくため、「経営者はまず、ご利用者のために頑張ってくれるスタッフのことを第一に考える」と自らの行動指針を決めました。そこから、残ってくれたスタッフたちと沢山コミュニケーションを取るようになりました。

経営理念や会社の基本方針も改めて明確にし、代表である自らが率先して体現するようにしました。また、毎年の決算期にはスタッフへ経営計画を発表する場を設け、事業運営の想いを共有しています。そういった取組の成果が出ているのか、現在はスタッフの平均在職年数も4年半ほどになり、離職率0%を達成することができました。

経営発表会では、頑張ってくれたスタッフの表彰式も行うとのこと(写真提供:ヒューマンリライトケア)

スタンプ帳とサンクスカードで貢献を「見える化」

――コミュニケーション促進のために取り入れている仕組みがあるそうですね。

「100回帳」と「サンクスカード」というものを取り入れています。

――それはどういうものでしょうか?

100回帳は簡単に言うとスタンプ帳です。「誰かが休むので代わりにケアに入った」という時や、研修や飲み会への参加など、スタッフが会社への貢献につながる取組をした際に1つスタンプを押します。スタンプが100個貯まると特典と交換できる仕組みです。

――飲み会への参加でもスタンプが貯まるのはユニークですね。

飲み会もスタッフ同士の交流が目的なので、参加自体が会社への貢献だと考えています。また、ちょっとしたことでも誰かの貢献をしてくれたと思えばスタンプを押すようにしています。ささやかですがこうした取組で、スタッフ同士がお互いに支え合っていこうと思える環境になってもらえたらという考えがあります。

――ちなみに、スタンプが100個貯まった時の特典は?

3万円の特別手当が出ます!

――スタンプ1つで約300円…結構なモチベーションにつながりそうですね。

そうかもしれません。この間スタンプが100個貯まったスタッフがいるので近々授与式を行う予定です。

――サンクスカードはどのような取組でしょうか。

サンクスカードは、「自分の代わりにケアに入ってもらった」「ご利用者のことで相談に乗ってもらった」など、誰かへの感謝の気持ちを表したい時に名刺サイズのカードに書いて渡すものです。手書き・手渡しというルールで行っています。

――導入の背景は?

コミュニケーションを生むきっかけとして、ですね。訪問介護の業務は入れ違いになることが多く、スタッフ同士が関わる機会が少ないと感じていました。サンクスカードを書くことで「今度○○さんに渡そう」と、スタッフ同士が顔を合わせる動機付けになっています。

サービス提供責任者の安部さんに送られたサンクスカードの一部。受け取った側もカードを見返すことでやる気につながるそう

――これらの取組の効果はいかがですか?

どちらもスタッフ同士の関わりが生まれやすくなる仕組みとして有効だと感じています。100回帳に関しては、スタッフの貢献度の指標を作ることができたのが特に大きいですね。スタッフ自身にとっても、誰かがケアに入れない時には率先してケアを代行し合うなど、助け合いの気持ちが高まるきっかけになっていると思います。

また、サンクスカードという、感謝の気持ちを相手に見える形で伝えるきっかけを作ったことで、すれ違いがちだったスタッフ同士、コミュニケーションが活発になっている印象があります。

――こういった取組は、スタッフの働きやすさにつながっていますか?

そうですね。飲み会や社内研修も含め、日頃顔を合わせる機会が少なくても、スタッフの人となりが見える関係を作っていくことは、訪問介護の事業運営においてとても重要だと感じています。そのことが訪問介護事業所での「働きやすさ」につながるのだと思います。これらの取組のおかげか、社内での助け合いも「お互い様だよね」といった感じの良い雰囲気です。

――ホームページでは研修の様子も公開されていますね。

社内研修を昨年から毎月、実施するようにしています。内容は私が設定することが基本ですが、スタッフからの依頼や要望を取り入れた内容も多くあります。訪問介護は自転車移動が多いため「自転車の安全対策」という研修を行いましたが、これはスタッフの一人がそのような講習を外部で受けたことから実現しました。

――過去に好評だった研修はありますか?

スタッフが一同に介し、訪問先での対応などを共有する研修です。介助方法やご利用者への声掛けなどについて話し合います。普段、ご利用者と1対1でサービスを提供するスタッフは介助技術に関する情報共有が中々出来ませんが、研修を通して「それならできる、やってみよう」という気づきやモチベーションアップにもつながると大変好評でした。

研修ではオムツ交換などの介助をお互いに実践して、気づきや参考にしてもらうことも(写真提供:株式会社ヒューマンリライトケア)

業界未経験者を積極採用、ゼロから研修

――採用に関してどんな取組をしていますか?

現在はハローワークやホームページを中心に取り組んでいます。採用数を少しでも増やすために、2018年度に「TOKYO働きやすい福祉の職場宣言」を行いました。自分たちの職場がどれだけ働きやすい取組を行っているか、求職者はもちろん、スタッフに向けても具体的な内容を示しやすくなると思っています。

「TOKYO働きやすい福祉の職場宣言」事業所に交付される通知書

――採用に関する方針はありますか?

当社では未経験の方の採用を積極的に行い、その上で資格取得などのキャリアアップをしっかりとサポートしています。そのためにも、東京都の「介護職員就業促進事業」を受託しました。

――受託した効果はどうでしょう?

介護職員就業促進事業の制度を利用して、これまで2名の採用がありました。この制度の特徴として、初任者研修等の取得に要する研修時間の給与や受講費が事業者に支払われるため、介護業界で働きたい人を積極的に受け入れやすくなりましたね。

――キャリアアップ支援はどのようなことを?

初任者研修、実務者研修はスタッフ全員に取得してほしいので、研修の受講費用はすべて会社が負担します。介護福祉士の資格取得を目指す人にも受験費用などを全額補助しています。その他、キャリアアップに繋がる社外研修への参加には1万円を上限として補助しています。

――働きやすさ、という点では処遇改善もポイントになるかと思います。

事業所全体としては、介護職員処遇改善加算(Ⅰ)、特定事業所加算(Ⅱ)と、2019年10月から新設された介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ)を算定しています。

――特定処遇改善加算を算定しているんですね。

当社のような事業規模で算定しているのは珍しいと、他の事業所から言われることがありますが、介護業界で長く働いてもらう人材を育てるためには必要だと考えています。ご利用者にとっても、質の高い人材が介護サービスを提供することは結果として自立支援や重度化防止につながると思っています。

管理者=「サポート役。まずはすべてを受け止める」

――事業所の管理者も兼任していますが、心がけていることなどはありますか?

訪問介護はご利用者とスタッフが基本1対1で向き合うため、私の立場は個々のスタッフとなるべく連絡を取り、業務のフォローを行っていくことが重要だと思っています。その上で、どうすればスタッフがもっと仕事をしやすくなるかを考え、実行に移すのが管理者の役割と考えます。そのためには雑用でも事務所の掃除でも、何でも自ら進んで動くようにしています

――業務のフォローではどういった話をすることが多いのでしょうか。

ご利用者と接する上での課題や悩み、要望はもちろん、プライベートでの大変なこと…時には愚痴のようになっていたりしますので、できるだけ時間を取ってコミュニケーションの機会を増やし、何でも話してもらうようにしています。

――スタッフの方からはどんな要望がありますか。

「訪問先で使うゴム手袋の在庫が足りない」といった事務対応から、「他社とやり方が違っているので統一するよう話してほしい」といった要望や、ご利用者のケアに関する疑問の確認依頼まで、それこそありとあらゆることを受け止めています。その辺りも、私が「まずはすべてを受け止める」という姿勢でいるからこそ、スタッフも細かい気づきや要望を伝えやすくなっているのだと思います。

――田近さんが管理者としてこれから目指していきたいことは?

訪問介護事業は、ご利用者にどれだけ良いサービスを提供できるかが肝心です。そのために研修を継続して開催し、スタッフが知識やスキルをもっと磨いて更に成長していけるよう後押ししていきたいですね。

理念や方針とは少し違うのですが、ウチの事業所は最近「ファミリー、フレンドリー、スマイリー」というキャッチフレーズを謳っています。どん底の会社だったにも関わらず、今も働き続けてくれるスタッフを大切な存在だと私は思っています。感謝の念に堪えません。だからこそ、スタッフも私のことを何でも言える家族のような存在だと思ってほしいので、要望やそれこそ不満もどんどんぶつけてほしいです。私はスタッフが働きやすい職場環境をできるだけ整えていき、スタッフにはやりがいを感じてもらいながら、自分たちができるケアの幅を広げていってもらいたいです。

取材メモ
取材に同席してくださったサービス提供責任者の安部さんに、田近さんとスタッフのやり取りについて伺ってみたところ「スタッフとコミュニケーションを取りながら具体的な指導やアドバイスをしているので、それがきちんと次につながっていると感じます。ミスなどがあっても皆さん正直に報告されているのは、田近さんの誠実な人柄による部分が大きいと思います」とのことでした。より良い職場の環境づくりに全力で取り組む田近さんの想いがスタッフにもしっかり伝わり、良好なコミュニケーションが取れているのだと実感できました。

今回のとなりの事業所は?


田近 郷(たぢか ごう)
株式会社ヒューマンリライトケア代表取締役 介護福祉士・社会福祉士・介護支援専門員
訪問介護を中心に事業を展開する「アデリーケア 練馬事業所」の管理者を兼務し、自身も現場に立ってご利用者のケアを行う。

アデリーケア 練馬事業所
西武池袋線 石神井公園駅から徒歩2分、従業員16名の訪問介護事業所。
田近さんと一緒に写っているのはサービス提供責任者の安部さん。事業所名のアデリーケアは「きちんとした介護」という意味で、「アデリー」にちなんで事務所ロゴはペンギンがモチーフだそうです。

サービス種別:訪問介護・居宅介護・重度訪問介護・育児支援・家事代行サービス他
住所:東京都練馬区石神井町4丁目3−15 カーサ・ヴェルデ石神井公園1階
運営:株式会社ヒューマンリライトケア

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