“離職ゼロ”を実現した「地域に寄り添う」経営戦略 -ファミリーケア 希望が丘さくら物語-

“離職ゼロ”を実現した「地域に寄り添う」経営戦略 -ファミリーケア 希望が丘さくら物語-
横浜市旭区、相鉄線希望が丘駅からほど近い住宅街に事業所を構える、従業員14名の地域密着型デイサービス「ファミリーケア 希望が丘さくら物語」。2019年4月に移転したばかりの事業所では、職員とご利用者の楽しそうな話し声が日常的な光景となっています。

「手を伸ばせばすぐ届くところにいる方のため」との思いで、地域に寄り添う事業所経営を目指す代表取締役の堀切裕一さんに、地域密着型サービスだからこそ出来る従業員の離職防止・定着への取組みや今後の展望を伺いました。

採用も地域密着で“離職ゼロ”へ

――早速ですが、こちらの事業所が”離職ゼロ”になったのはいつ頃からでしょうか

時期としては直近2~3年くらいですね。厳密に言えば、「介護支援専門員の資格を取ってケアマネジャーとして働きたい」など前向きな理由で当社を離れた者はいますが、人間関係を始めとしたマイナス要因での離職者はゼロになります。

――それ以前はいかがでしたか?

最初に事業を始めたのは7年前ですが、その当時は退職者も一定数いて、人材定着も安定しませんでした。一時はご利用者のニーズに応える形で訪問介護事業も行っていたのですが、恒常的な人材不足によって安定したサービス提供体制を整えられず、残念ながら事業を畳んだこともあります。デイサービスを始めて2~3年目から社内環境の改善に力を入れ始め、徐々にですがその成果が出てきて、結果として今に至る形です。

――成果につながった取り組みはどのようなものですか?

取組みの方針は大きく二つあります。一つは経営者と管理者がコミュニケーションをしっかり取ることです。管理者は経営者以上に現場をしっかり見てくれている存在でありながら、職員と経営者の板挟みで孤立することも多いです。様子を見てこまめに声をかけるなど、精神的な面も含めフォローに努めるようにしていました。こういった視点は他の地域密着型デイサービスの運営を指導・助言してきた経験も役立っており、事業所の規模に関わらず重要なことだと思っています。

もう一つは、日々の介護業務に関して一定のガイドラインを決めた後は、経営者の立場からはあまり口を出さず職員の意見を重視することです。「全員参加経営」を法人理念として掲げていますが、現場のルールづくりは100%、職員たちからの意見をもとに決めることとしています。

取材に伺った当日のレクリエーションは季節の工作。慣れた手つきで思い思いに、画用紙を鮮やかに彩ります。

――採用面で力を入れていることは?

職員の採用については、今勤めている職員の周りで、介護の仕事に興味がありそうな人に声をかけてもらうことが多いですね。当社のような小規模事業所ですと、職員同士も非常に仲が良いですし、知り合いということで繋がりが一定ある状態です。直近では求人情報に応募してくださった方も採用していますが、そういった方も当社ではすぐ職場の雰囲気になじんでいますね。

――職員からの紹介は、経営的にもメリットがあるのでしょうか

パートの人に関しては、職場を選ぶ際の決め手として「距離の近さ」を一番に挙げています。その人が通いやすい環境で採用を行っていくことは離職率の低下にもつながるため、経営、職員双方にメリットがある採用方法だと感じています。

また、今勤めている職員は、当社の理念や現場の雰囲気もよくわかっています。そのような人物からの紹介であれば、当社にマッチングしやすい方を迎え入れやすくなる点も、結果として働きやすさにつながっていると思います。

「全員参加経営」で納得感のある職場を実現

――「全員参加経営」について具体的に教えてください

当社は小さい事業所ながら、看護師の資格を持ったスタッフが4人おり、介護に強い人材と看護に強い人材、お互いが尊重しながらそれぞれの目線でご利用者へのサービス提供に努めています。毎月の定例会議でも、各自の強みや経験に基づいた意見が活発に飛び交います。そこで上がった現場のルール改善がご利用者へのサービスの質の向上につながっていますね。そういった点はまさに「全員参加経営」かと思います。

――職員の皆さん同士の関係性はいかがでしょうか

職員同士はあだ名で呼び合うほど仲が良いですし、同僚でありながら時に相談役、仲間のような関係でもあったりします。また、2人いる社員が他の職員からの一つ一つの業務に関する投げかけなどにも真摯に対応してくれています。特に当社の女性管理者は小さなことでも丁寧に話を聞いて答えている。これは長年かけてそういう社風になっていったものですが、このような細かいことの積み重ねが、良い関係性に繋がっているのだと思います。

――それだけ関係性が良いと、休暇なども取りやすそうですね

家庭の事情で急に休む必要がある時などでも、自然とフォローし合えるようになっている感じです。生活圏域も近く、お互いの状況が理解できるから"お互い様”で譲り合えるのだと思います。

職員の誕生会での1コマ。和気あいあいとした様子が伝わってきます(写真提供:株式会社ブライト・アース)

地域のニーズを捉えた「宿泊」サービス

――保険外で宿泊サービスを提供されていると聞きました

開所当初から、ご利用者の家族のニーズが高いであろう宿泊サービスが一つのコンセプトでした。ご利用者の家族が急に2~3日家を空けなければならない場合でも、柔軟にご利用者を受け入れられる点は、他のデイサービスとの差別化になると思ったからです。利用契約の段階で宿泊サービスの説明も行い、出来るだけ気軽に利用してもらえるよう心がけています。受け入れ可能人数は最大4名で、現在は毎日2名ほどのご利用者に活用いただいています。

――宿泊サービス提供の流れを教えてください

宿泊サービスの時間は18時~翌9時までとなります。宿泊サービスをご利用いただく方は、デイサービスが終了した後そのまま事業所に滞在いただき、夕食を提供します。その後は自由に過ごされ、就寝時間もこちらで設定することはなく、ご利用者のタイミングにお任せする、という形です。人員は夜勤の見守り担当を専任で置いています。

「介護タクシー」から「旅行業」への挑戦

――今後の展望や経営のビジョンはどのようにお考えでしょうか?

今までのようにご利用者の声を聞いてニーズを拾い上げ、自分に出来る範囲でその方の生活を支えていきたい、という気持ちが強いです。その一つとして、通院や補装具の調整といった用途だけではなく、買い物や余暇で車を使って外出したいというニーズに応えるため、保険外サービスとしての介護タクシー事業を2019年10月から開始しました。現在は、横浜市地域ケアプラザとの共同企画として、移動手段がない高齢者の買い物支援などを対象とした送迎サービスの準備を進めています。

介護タクシー事業で使用する車両(写真提供:株式会社ブライト・アース)

また、ユニバーサルデザイン旅行※とは違う形で、ちょっとした旅行をより気軽に楽しんでいただけるような旅行サービスを立ち上げたいという構想があり、具体的に動き出しているところです。そのために国内旅行業務取扱管理者の資格も取得しました。旅行業界と介護業界、両方を経験している自分だからこそ提供できるサービスがあると思っています。これからも自分に出来る範囲で、ご利用者が望む暮らしを最大限サポートしていきたいですね。

※ユニバーサルデザイン旅行…高齢や障害の有無に関わらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行

取材メモ

ご利用者のニーズに応える形でさらなる地域貢献を目指す「ファミリーケア希望が丘さくら物語」。堀切さんはインタビューの途中で「小規模だからこそ、意見をぶつけ合える管理者が一人いることは経営者にとって大事なこと」と話していました。堀切さんと管理者の方が現場でフラットに意見交換をしている様子からも、「全員参加経営」を実践していることが感じられました。

今回のとなりの事業所は?

堀切裕一(ほりきりゆういち)

株式会社 ブライト・アース代表取締役

33歳で旅行業界から介護業界へと転身。介護施設での勤務経験を経て、関東エリアを中心とした地域密着型デイサービスのフランチャイズ運営指導に携わりながら、「ファミリーケア 希望が丘さくら物語」を始め2か所で地域密着型デイサービスを経営。2019年10月から保険外サービスの介護タクシー事業をスタートさせている。

写真提供:株式会社ブライト・アース

ファミリーケア 希望が丘さくら物語

相鉄線 希望が丘駅から徒歩5分、従業員14名の地域密着型デイサービス。事業所の向かいには大きな桜の木があり、ご利用者とのお花見が今から楽しみとのこと。

サービス種別:地域密着型通所介護

住所:神奈川県横浜市旭区中希望が丘64‐133 コートタウン101

運営:株式会社ブライト・アース

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