おさえておきたい医療・医療保険情報 No.7

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介護・医療連携の推進に向けておさえておきたい医療・医療保険関連の最近の動きを紹介します。

29年度政府予算案を提出 社会保障1,400億円抑制

政府は昨年12月22日に平成29年度予算案を閣議決定し、1月20日に召集された通常国会に提出した。

 社会保障関係費は32兆4,735億円で、対前年度比4,997億円増(1.6%増)。伸びを5千億円程度に抑えるという財政健全化目標を28年度に続き達成した。ただその手段は医療・介護の給付抑制が目立つ。

 一方、消費税の10%への引上げが2年半延期される中で、子ども・子育て支援など社会保障の充実は、一部を除き予定通り行う。「新三本の矢」を始めとする安倍政権の重点分野の予算はメリハリをつけた。

 厚生労働省予算案は30兆6,873億円(対前年度比1.2%増)。大部分を占める社会保障関係費は30兆2,483億円(同1.3%増)。これに内閣府の子ども・子育て支援新制度などの予算を合わせると32兆4,735億円となる。

 夏の概算要求の段階では、社会保障費の「自然増」を約6,400億円と見込んでいた。しかし政府の財政健全化の方針では、経済財政再生計画により28~30年度(3年間)の社会保障費の伸びを1.5兆円程度に抑えることを「目安」としており、28年度予算でも約5千億円の伸びとした。28年度は診療報酬改定があり、主に薬価改定で社会保障費の抑制を達成。

 一方、29年度は診療報酬と介護報酬の改定がなく、大きな制度改正も見当たらず、達成は困難との指摘もあった。しかし医療・介護の様々な制度改正で1,400億円を削り、伸びを4,997億円に抑えることで、目標を達成した。以下その具体策をみていく。

●医療・介護の制度改正

 医療で▲630億円、介護で▲450億円を抑制した。他に、全国健康保険協会(協会けんぽ)の国庫補助額を320億円減額し合計で1,400億円となる。

 協会けんぽの国庫補助額減額が別なのは、他の抑制策が来年度以降も効果が続くのに対し、国庫補助減額は29年度のみの措置であるため。法定準備金を超えて準備金が積みあがった場合に、国庫補助(16.4%)を減額するもので、27年度に導入された。29年度以降の国庫補助の取扱いは協会けんぽの財政状況による。

 医療の▲630億円の内訳は、(1)高額療養費の見直し▲220億円(2)後期高齢者の保険料軽減特例の見直し▲190億円(3)入院時の光熱水費の見直し▲20億円(4)高額薬剤(オプジーボ)の薬価引下げ▲200億円である。なお介護の▲450億円の内訳は高額介護サービス費の見直し▲10億円と、介護納付金への総報酬割の導入▲440億円。

 (1)1カ月の医療費自己負担の上限を定めている高額療養費の見直しは、主に70歳以上の現役並みの所得がある者に対する負担の引上げだ。70歳以上だけにある外来の月額上限額も段階的に廃止する。70歳以上の一般所得者の負担も上がる。

高額療養費の見直しに連動して、高額医療・高額介護合算療養費制度も見直される(30年8月から)。同制度の現役並み所得者に対する上限額は、一律67万円であったが細分化し、年収1,160万円以上は212万円、年収770~1,160万円は141万円になる。年収370~770万円は67万円で据え置く。

 (2)後期高齢者医療制度の保険料軽減措置も段階的に解消する。20年度の発足時に導入した所得割や元被扶養者に対する軽減特例を2~3年かけて廃止する。後期高齢者医療制度は75歳以上のすべてが被保険者になるので、新たに負担が生じる元被扶養者に配慮した経緯がある。

 (3)医療療養病床に入院する65歳以上の患者の光熱水費相当額の負担は、介護保険施設や在宅との負担の公平化を図る観点から、医療の必要性が低い医療区分Iで日額320円から370円に上がる(29年10月)。また医療の必要性の高い医療区分II・IIIの患者は、これまで負担がなかったが、29年10月から日額200円、30年4月からは医療区分Iと同じ日額370円の負担を求める(難病患者は除く)。なお食事代の引上げは別途、28年度から実施されている。

 (4)他の項目が経済財政再生計画の工程表に沿ったものであるのに対し、オプジーボの薬価引下げの対応は異例だ。薬価設定時の想定より市場が大幅に拡大した状況を踏まえ、30年度の薬価改定を待たず2月から薬価を半額とする。あわせて年度内に最適使用推進ガイドラインをまとめる。薬価制度の抜本改革の議論も始まっている。

 介護の高額介護サービス費の負担も増えるが、1割負担の被保険者のみの世帯に対しては時限的な配慮がある。被用者保険が負担する介護納付金への総報酬割導入による国費の捻出は、29年8月から2分の1の実施だが、440億円と大きい。30年度も2分の1、31年度に4分の3、32年度から全面実施となる。

●社会保障充実は予算確保

 消費税を財源にした社会保障・税一体改革の社会保障の充実は、国・地方分を合わせ1兆8,368億円を確保した。子ども・子育て支援新制度で1千億円規模を増額、国民年金の受給資格期間の25年から10年への短縮も法改正で実現させた(256億円)。地域医療介護総合確保基金も医療分で904億円、介護分で724億円と前年度と同額を確保した(地方分含む)。

 消費税引上げの延期にも関わらず、社会保障の充実が一部を除き予定どおり行えるのは、これまでの医療・介護などの重点化・効率化により▲5千億円を抑制できたためだ。

 ただ今回、安倍政権が掲げる「新三本の矢」の政策を実現するため予定が変わったものもある。具体的には、保育士の処遇改善(544億円)や、さらなる介護・障害福祉人材の処遇改善(408億円)などのため、30年度の都道府県単位化に向けた国民健康保険の財政安定化基金の積み増しが遅れる。29年度は2千億円規模を予定していたが1,700億円に。一方、それ以外の財政支援は800億円の増額としている。

30年度改定の議論始まる 医療・介護体制の節目に

 中央社会保険医療協議会(田辺国昭会長)が30年度診療報酬改定に向けた議論を開始した。厚労省は昨年12月に次期改定のスケジュールを提示。1年間を第1~3ラウンドに分けて、在宅、入院、外来、歯科、調剤を議論する方針。薬価制度の抜本改革や費用対効果評価の本格的導入などもあり、医科以外も大改定になりそうだ。1月11日の中医協の総会では、在宅医療の総論的な議論を行った。

 30年度は、診療報酬・介護報酬の同時改定になる。団塊の世代が全て75歳以上となる2025年を見据えると、36年度(2024年度)同時改定は直前になるため、30年度が超高齢社会に対応するための最重要の同時改定となる。さらに30年度は、医療介護総合確保方針や医療計画、介護保険事業計画の見直しのほか、国民健康保険の都道府県単位化など様々な制度改正があり、医療・介護の提供体制の大きな節目となる。

 一方で社会保障をめぐる財政状況は厳しい。政府予算の一般歳出の約55%が社会保障関係費で増加傾向にあり、歳出が歳入を上回り、国債残高が累増している現状を厚労省は説明した。

 今回、「バイオテクノロジー、ICT、AI(人工知能)といった革新的技術で、医療そのもののあり方が変わりつつある」と指摘したことも、一つの特徴。また、医療・介護の連携が特に重要だと考えられる事項として、(1)療養病床・施設系サービス(2)居宅等における医療(訪問診療・訪問看護、歯科訪問診療、薬剤師の業務等)(3)維持期のリハビリテーションをあげた。

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