おさえておきたい医療・医療保険情報 No.5

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介護・医療連携の推進に向けておさえておきたい医療・医療保険関連の最近の動きを紹介します。

医療事故調施行から1年 1割で患者の納得得られず

医療事故調査制度が始まって1年が経過した。医療事故調査・支援センターを運営する日本医療安全調査機構(高久史麿理事長)は11月2日、開始1年の動向を報告書にまとめ公表した。それによると医療機関が報告する調査結果の約1割で患者遺族の納得が得られていないことがわかった。

昨年10月に始まった医療事故調では、医療事故による死亡・死産を医療事故調査・支援センター(センター)に報告し、院内事故調査を行う義務が医療機関に生じる。センターの役割は調査結果を集積し、分析。再発防止につなげること。遺族や医療機関はセンターに調査を依頼できる。

施行1年の事故報告件数は388件。医療事故による患者の死亡は当初1千~2千件との予測もあり、報告件数が少ないとの受け止めもある。

理由の一つとして「医療に起因し、管理者が予期しなかったもの」という医療事故の判断基準の解釈が、医療機関によって異なることが、指摘されている。例えば、死亡が予期されることを説明していれば報告対象外だが、どの程度の説明なのか明確ではない。

このためセンターへの相談は、医療事故が報告の対象か否かの判断に関するものが多い。医療機関・支援団体等からの相談件数1,531件のうち、「報告対象の判断」に関する相談は347件。「相談・報告の手続き」500件、院内事故調査に関すること」475件に次いで多い(複数回答)。

遺族などからの相談は567件で、同様に「報告対象の判断」に関するものが406件で7割以上を占める。しかしその中身は、「非死亡事例」、「制度施行前の医療事故」など明らかに制度対象外のものが多い。

センターに報告があった医療事故のうち、すでに院内調査結果が報告されている事例は161件ある。事故発生から結果報告までの期間は平均120日。発生後半年を過ぎても結果報告がない事例は59件で、遅れている理由は「外部委員の選出に時間がかかっている」が7件で最も多い。

院内調査結果をみると、解剖の実施件数は52件で32.3%、死亡時画像診断(Ai)の実施件数は56件で34.8%。Aiの実施件数の方が若干多かった。Aiは、遺体を傷つけずに、CTやMRIで撮影して死因を判断する。

調査の公正・中立性、専門性を担保するために望ましいとされている外部委員の参加は120件で74.5%(施行後半年は61.2%、その後半年は81.1%)。調査報告書に再発防止策が記載されていたのは、「防止策がない」との記載を含め96.3%だった。

センターへの調査依頼は、161件の報告件数のうち16件(遺族から13件、医療機関から3件)で1割程度。依頼時期は院内調査終了後が11件、終了前が5件となっている。依頼理由では、遺族からの「院内調査結果に納得できない」が複数回答の36件中29件(80.6%)を占める。うち「治療」に関して納得できない事例が10件で最も多く、次いで「死因」7件、「再発防止策」4件となっている。

388件の報告件数のうち、どのような医療に起因する医療事故かは、手術(分娩を含む)が195件で突出。内訳は「開腹」が35件で最多。次いで「分娩(帝王切開術含む)」33件、「腹腔鏡下」28件、筋骨格系(四肢体幹)22件など。

 

手術以外では、「処置」38件、「投薬・注射(輸血含む)」と「診察(兆候・症状)」がともに26件などがある。

 

同制度は今年6月に制度の改善を図っている。

医療機関のウェブサイト 虚偽・誇大な情報に罰則

社会保障審議会医療部会(永井良三部会長)は10月20日、虚偽・誇大な医療情報が含まれる医療機関のウェブサイトに、国が是正の命令や罰則を課すことができるよう医療法を改正することを了承した。

医療に関しては厳しい広告規制がある。広告できる情報は制限され、違反した場合は中止・是正の命令や罰則が課される。しかし医療機関のウェブサイトは医療法で規定する広告とみなしていない。個人が検索して閲覧するもので、通常の広告と比べ誘引性が低いと判断しているためだ。

しかし近年、ウェブサイトの虚偽・誇大な医療情報に対する消費者からの苦情が増え、行政としての対応が必要になった。しかしウェブサイトを広告に含めると厳しい規制がかかり患者・住民の利便性が大きく下がると予想される。

このため、引き続き医療機関のウェブサイトは広告とはみなさないが、広告と同様に命令、罰則を課すことができるよう、医療法を改正する。来年の通常国会に改正法案を提出する。

外来定額負担導入の是非 結論には一定の時間必要

社会保障審議会医療保険部会(遠藤久夫部会長)は11月18日、財政健全化に向けた経済財政再生計画で検討が求められている医療保険関連の事項などを議論した。財務省が提案する、かかりつけ医以外を受診した場合の外来の定額負担に対しては、前回と同じく反対意見が大勢を占めた。子どもの医療費助成の国保の減額措置については、少子化対策の推進を踏まえ、減額措置を一部廃止すべきとの意見が多かった。

かかりつけ医以外を受診した場合の外来の定額負担の導入に対しては、厚労省が前回の議論を踏まえ、結論を出すには「一定の時間を要する」との見解を示した。委員の多くも同調。年内の結論は難しく、外来の機能分化やかかりつけ医の普及の観点から、幅広く検討する必要があるとした。

子どもの医療費については、市町村が国よりも手厚い助成をしているが、助成に対し国保の減額措置がある。このため国が少子化対策を推進する中で、減額措置を廃止すべきとの要請がある。委員からは、年齢や所得制限、自己負担ゼロは認めないなど要件を設けた上で減額措置を一部廃止すべきとの意見が相次いだ。

初の患者申出療養認める 先進医療との違い不明確

4月に始まった患者申出療養が初めて実施されることになった。腹膜に転移した胃がんの抗がん剤療法で、評価会議の審査を経て10月14日に告示された。しかし同19日の中央社会保険医療協議会(中医協)の総会では、「先進医療B」との違いがわからないとの意見が出て、今後の動向を注視することが必要とされた。

患者申出療養は、保険外併用療養費の新たな類型。保険外と保険医療を併用できる。困難な病気と闘う患者の思いに応えるため、有効性・安全性が未確認の医療であっても、患者の申し出により、身近な医療機関で迅速に治療を受けられる制度として創設された。

初の患者申出療養は「パクリタキセル腹腔内投与及び静脈内投与並びにS-1内服併用療法」。抗がん剤を腹腔内、静脈内、内服の3種で併用する療法である。東京大学医学部附属病院が申請した。先進医療Bの適格基準を外れた患者を対象に、100例に実施する。

中医協では、「先進医療Bとの違いがわからない」との意見が相次いだ。患者申出療養は患者の申し出により実施計画を定める。しかし今回の事例は、先進医療Bの適格基準から外れた患者が、引き続きその療法を受けられるよう、適格基準を緩めただけにみえる。

100例を集めるという手法が、患者よりも医療機関主導との印象を与えた形だ。また保険収載が遅れる可能性も指摘された。これらを受け厚労省は、患者申出療養の実施計画の設定について、改めて整理する必要があると回答した。

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