おさえておきたい医療・医療保険情報 No.4

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介護・医療連携の推進に向けておさえておきたい医療・医療保険関連の最近の動きを紹介します。

高額薬剤の費用抑制でオプジーボの薬価引下げ

高額な薬剤の登場が医療保険財政に与える影響が大きくなっており、その費用抑制を目指す議論が進んでいる。来年度予算では、抗がん剤のオプジーボの薬価の緊急引下げや最適使用推進ガイドラインにより薬剤費を削減。医療費抑制につなげていく方向だ。10月14日には安倍首相が財政健全化に向け塩崎厚労相に対応策の具体化を指示した。

●27年度の概況

平成27年度の医療費は、近年では高い水準の対前年度比3.8%増で、主な原因は薬剤費の伸びだ。具体的には、C型肝炎治療薬の画期的新薬であるハーボニー(ギリアド・サイエンシズ)とソバルディ(同)の保険収載が影響した。ただし、それらの薬価は28年度薬価改定で大幅に下がり販売量も低下傾向を示しているため、今後の影響は限定的と考えられている。

●28年度の動向

しかし、28年度は抗がん剤の画期的新薬であるオプジーボの影響が懸念されている。27年7月に保険適用されたが、効能は対象患者の少ない悪性黒色腫(メラノーマ)で、予想販売額は31億円にすぎなかった。

ところが27年12月に肺がんに対する効能が追加され、その後、用法・容量も追加。効能追加のタイミングにより、28年度の薬価引下げの対象とならず、高い薬価のまま市場が大きく拡大する見通しとなった。特に財務省の財政制度等審議会のヒアリングで、年間売上げが1兆7千億円に達する可能性があるとの話が出ると、厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)でも早急な対応が必要との意見が沸き起こった。

製造・販売する小野薬品工業の28年度の売上予測は1,260億円で、1兆7千億円は過大との見方が大勢だ。しかし腎臓がんに対する適用もすでに薬事承認され、類薬であるキイトルーダ(MSD)も薬事承認され、保険収載を待っている。さらに、他のがん種についても、現在治験が行われている状況にある。

●中医協の動き

薬価制度を決める中医協は、高額薬剤に対する早急な対応が必要との認識で現在、(1)薬価制度全般の抜本的見直し、(2)オプジーボを念頭においた薬価の「期中改定」、(3)最適使用推進ガイドラインの3つを検討課題としている。

(1)抜本的見直しは30年度改定に向けた課題で、原価計算方式と類似薬効比較方式という仕組みそのものを見直すべきとの意見が出ている。ただし製薬企業が画期的新薬を開発する意欲を失わないような設定にする必要がある。

(2)「期中改定」は、通常の改定は2年に1回だが、特例的な対応として、期中である来年度に行うもの。オプジーボに限って、薬価を最大25%下げる方向だが、「50%以上下げるべき」との主張もある。

(3)最適使用推進ガイドラインは、高額薬剤の処方に関して医療機関や診療体制に条件をつけて、最適な使用を目指す。同じ効用が期待できるのなら、できるだけ価格の低い薬を使ってもらう。試行的に、オプジーボと高コレステロール血症治療薬のレパーサ(アステラス製薬)を対象とする。

これらの取り組みは、高額薬剤が医療費に与える影響を軽減すると同時に、政府の財政健全化目標に沿った対策でもある。具体的には、29年度予算案の社会保障の自然増を5千億円程度に圧縮する手段に使うとの目論見がある。ただし高額薬剤はそもそも自然増を想定以上に押し上げているもの。また薬価を25%下げても、その効果は限定的だ。

かかりつけ医以外の受診 外来の定額負担導入検討

財務省の財政制度等審議会財政制度分科会(吉川洋分科会長)は10月4日、医療・介護制度改革を議論した。吉川分科会長は、かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担の導入に複数の委員が賛意を示したと報告した。また、高額療養費制度については「年齢ではなく負担能力に応じた負担」とする方向で見直すべきとの意見が出た。

診療報酬改定でかかりつけ医機能を評価する「地域包括診療料」を設けたが、算定は広がらず、外来の機能分化が進んでいないと財務省は指摘。比較的軽微な受診で「一定の追加負担は必要なのではないか」と提案した。

具体的には、一定の要件を満たす診療所などを患者が「かかりつけ医」として指定(保険者に登録)。それ以外の医療機関を紹介状なしで受診した場合は、定額負担を求める。また、診療所の場合は低額とし、病院はそれより高く、規模に応じてより高額の負担を設定するとした。

「かかりつけ医」の要件は、診療報酬で評価している地域包括診療料などの要件よりも緩くする。糖尿病や認知症など特定疾病の有無や年齢要件は問わず、24時間対応も求めない。

一方、高額療養費については、70歳以上で設定している外来のみの上限設定を速やかに廃止するとともに、高齢者の自己負担上限を所得区分に応じ、現役と同水準にすべきとした。

これらは厚労省の社会保障審議会医療保険部会でも検討テーマとなっている。政府は年内に結論をまとめる予定だ。

強力な医師偏在対策 分科会が年内にまとめる

厚労省の「医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会」(片峰茂座長)が今秋から、医師偏在対策の議論を続けている。

10月6日の第8回会合では、参考人として出席した地域医療機能推進機構(JCHO)の尾身茂理事長が、医師不足地域での診療経験を保険医や医療機関開設の要件とすることを提案した。年末までに「強力な医師偏在対策」を検討するとしている。

医学部の定員増を今後も続け、医師総数を増やし続けることに対しては、医療界に賛否がある。だが医師偏在がある程度解消できなければ、医師総数を増やしても、地域の医師不足は改善しないとの認識では一致している。厚労省もこれまでの医師の自由意志を尊重した緩やかな対策から、一定の規制を伴う対策の検討に入っている。

厚労省が示している検討課題は多岐にわたる。対策の主体としては都道府県を重視。医療計画に目標を記載し、地域医療支援センターを積極活用していく。

また医師の異動状況を、医師・診療行為情報のデータベース化により把握する。国が講じる措置として、管理者の要件や医療機関の承継税制の検討に踏み込む。また、フリーランス医師への対応も課題だ。

●3段階での対策を議論

9月15日の第7回会合では、医師の養成過程である(1)医学部、(2)臨床研修、(3)専門医の各段階での対策を議論した。

(1)医学部の定員に関しては、地域枠の見直しが論点となった。医師不足問題を受け、各大学は臨時的に定員を増やしているが、その多くが地域枠。ただし地域枠で卒業した医師の一部は出身地に戻ってしまう。厚労省は地元出身者の地域定着率が高いことをデータで示し、地域枠を厳格化する方向での検討を促した。

(2)現行の臨床研修制度では、大都市への集中を招かないよう募集定員の倍率に制限を設けている。将来的に実績に対する募集の割合を1.1倍にするよう調整する。研修医が出身大学と同じ都道府県で研修を受ける対策の強化が論点だ。

(3)専門医制度に関しては、来年度から新たな制度が始まる予定だったが、医師偏在の拡大を招くとの懸念が高まり、制度開始を1年延期した。現在、日本専門医機構が新たな体制のもとで医師偏在対策を検討している。地域・診療科別に専門医の定数を設定することも検討課題となっている。

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