おさえておきたい医療・医療保険情報 No.3

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介護・医療連携の推進に向けておさえておきたい医療・医療保険関連の最近の動きを紹介します。

来年度の厚労省予算は自然増の圧縮が課題に

厚生労働省は8月31日、12月下旬に決める来年度予算案の概算要求を財務省に提出した。要求額は31兆1,217億円で、対前年度比2.7%増加した。

うち年金や医療などの経費は29兆1,060億円。高齢化などで伸びる社会保障の自然増は6,400億円となり、今後の予算編成で5千億円程度まで圧縮することが課題となる。重点施策では、安倍政権が掲げる一億総活躍社会の実現に関連する項目が並んだ。

●1,400億円圧縮が必要

厚労省の概算要求のうち大部分を占めるのが、医療や年金、介護など社会保障の義務的経費で、29兆1,060億円と全体の94%を占める。対前年度伸び率は2.3%。内訳は、医療が11兆5千億円で対前年度伸び率が2.5%、年金が11兆4千億円で同1.4%、介護が2兆9千億円で同3.8%、福祉その他が3兆3千億円で同3.0%。

いわゆる自然増は6,400億円で、医療が3千億円、年金が1,600億円、介護が1千億円、福祉その他が1千億円程度である。自然増は主に高齢化により不可避的に増加するものとされている。だが、特に医療においては高額薬剤の保険適用のように、技術の進歩による要因も大きい。

政府の予算編成の方針(骨太方針2016)では、財政健全化のため、自然増の伸びを高齢化の水準にとどめることを要請している。金額にすると5千億円程度だ。概算要求の自然増は6,400億円であるため、1,400億円程度を削る必要がある。

●効果が確実な方策とは

そのための方策は、経済財政再生計画に記載がある。医療・介護の提供体制の見直しを含め、様々な項目の工程表が示されている。だが提供体制の見直しの成果は中長期的に表れるもので、効果の検証もすぐにはできない。そこで、来年度に効果が確実に見込める方策が候補となっている。

具体的には、医療では▽入院時の光熱水費負担▽高額療養費制度(月額負担上限)の見直しや金融資産等を考慮した負担の仕組みの導入などが検討課題だ。介護では▽高額介護サービス費(月額負担上限)▽利用者負担▽軽度者への生活援助サービスや福祉用具貸与・住宅改修等の見直し▽介護納付金の総報酬割導入などの議論が進んでいる。

しかし利用者・患者、被保険者の負担増になるため、合意を得ることは簡単ではない。合意されても、法改正が必要なものは来年度中の実施は難しい。また厚労省の社会保障審議会を中心に議論が進んでいるが、負担増が重くならないよう関係者に配慮するほど、その効果は小さくなる。

一方、経済財政再生計画に明示されていなかった削減策として、抗がん剤のオプジーボ(小野薬品工業)の薬価引下げが検討されている。薬価は通常、診療報酬改定にあわせて2年に1度改定される。診療報酬改定は28年度にあったので、29年度は改定のない年だ。しかしオプジーボの売上げが医療保険財政に影響を与えるほど大きくなる(1,260億円以上)見通しであるため、特例的な対応を行うことが課題となった。

実施には賛否があり、結論はまだ出ていない。ただ個別の医薬品の薬価であり、3~5割の引下げになった場合でも、それ程の規模ではないと考えられる。

消費税率10%への引上げが2年半延期された影響も出ている。社会保障・税一体改革による社会保障充実の財源が確保できないためだ。当初予定していた介護保険の1号保険料の低所得者軽減の強化などは29年度の実施が難しくなっている。一方、年金の受給資格獲得のための保険料払い込み期間を25年から10年に短縮する見直しは、優先実施が決まっている。

●革新的医薬品の開発推進

安倍政権は、先の参議院選挙でも経済対策を第一に掲げ、一億総活躍社会の実現に向けた「新三本の矢」を打ち出した。今秋の臨時国会では、一般会計で4兆円規模の大型補正予算案が審議される。29年度の本予算案でも重点施策に位置づけている。

新三本の矢は、(1)GDP600兆円の実現、(2)希望出生率1.8の実現、(3)介護離職ゼロ・地域共生社会の実現であり、厚労省の施策と深く関連する。厚労省は、それに関連する施策に予算を重点配分する優先課題推進枠として2,167億円を要望。推進枠以外でも新三本の矢に関し、既存予算項目を含めて要求を行っている。

(1)GDP600兆円の関連では、医療系ベンチャーの育成支援を行う。革新的医療機器早期承認制度の創設や厚労省に「ベンチャー等支援戦略室」を設け、医療分野のイノベーションを促す(22億円)。高額薬剤の薬価に対する締め付けが強くなってきたが、革新的新薬・医薬品の開発は国として推進していく。

ゲノム医療や再生医療、人工知能など最先端の科学技術を重点に、AMED(日本医療研究開発機構)を通じた研究開発費には577億円を計上した。医療情報のデータベース化や医療IDの導入に向けては627億円を要望。医療のICT化を進めるとともに、保険者機能を強化する。

医療の国際展開では、塩崎恭久厚労相の肝いりで策定した「保健医療2035」で強調された施策が並ぶ。アジアの保健医療政策を先導する「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」ではグローバルヘルス人材戦略センターを設置(21億円)。AMR(薬剤耐性)対策では、薬剤耐性感染症制御研究センターの設置など対策を講じる(5.7億円)。

(2)希望出生率1.8の実現は、子ども・子育て対策だが、医療関連では、分娩施設が少ない地域の新規開設を支援するため、費用を助成する。不妊治療の助成を継続するとともに、不妊専門相談センターの箇所数を増やす(子育て世代包括支援センターの予算などを含め207億円)。

(3)介護離職ゼロ・地域共生社会の実現では、介護サービス基盤の確保で576億円を計上した。高齢者の自立支援・介護予防の取り組みや地域ケア会議によるケアマネジメント支援などを講じるとしている。月額1万円相当の介護・福祉人材処遇改善は29年度から実施するが、予算規模などは明示していない。

地域医療確保対策では、636億円を要望。修学資金の貸与事業や医師の異動情報のデータベース化など地域医療支援センターに対する予算や、日本専門医機構と各都道府県協議会が連携するための予算も計上した。また、口腔保健支援センターの設置の促進として12億円を要望した。

●「医務総監」を新設

29年度税制改正要望では、かかりつけ医(歯科医)または在宅医療の診療体制を備える診療所に対する不動産所得税等の優遇措置を新規で要望した。過疎地域などの医療機関に対し、事業継続を要件とする相続税等の猶予・免除も新規で要望。サービス付き高齢者向け住宅の固定資産税や不動産取得税での特例は延長を求めている。また、急性期から回復期の病棟など地域医療構想に沿った病床の機能分化・連携などに資する固定資産を医療機関などが取得した場合の優遇措置も、引き続き要望する。

厚労省の組織に関しては、事務次官級ポストとして、「医務総監」の新設を求める。医療・保健の重要施策を専門的観点から統括。医療技術革新の実用化の推進や医療関係者とのハイレベル交渉などを行うとしている。実現すれば医系技官の最高ポストになりそうだ。

このほか政権が重視する「働き方改革」を実現するため、労働関連部局の再編も要望。「人材開発局」「雇用環境・均等局」「子ども家庭局」を新設し、「職業能力開発局」「雇用均等・児童家庭局」がなくなる。全体で局が一つ増える再編となる。

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