おさえておきたい医療・医療保険情報 No.2

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介護・医療連携の推進に向けておさえておきたい医療・医療保険関連の最近の動きを紹介します。

地域医療構想を織り込み 次期医療計画に向け議論

平成30年度からの次期医療計画に向けた議論が、厚生労働省で進んでいる。次期医療計画は医療機能の分化・連携を推進するための地域医療構想を盛り込んだ最初の計画だ。また介護保険事業(支援)計画との整合性を図る必要がある。

30年度は診療報酬・介護報酬の同時改定をはじめ、日本が超高齢社会を乗り切るために、対策を総動員しなければならない大事な時期だ。在宅医療の充実や医療・介護連携の強化も重要な課題となっている。

医療計画の見直しは「医療計画の見直し等に関する検討会」(遠藤久夫座長)で議論が進んでいる。5月に始まり、すでに3回の会合を経ており、現在は検討会のもとに置かれたワーキンググループで、個別の課題に取り組んでいる。WGは「地域医療構想に関するワーキンググループ」(初会合は7月29日)と「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」(同8月3日)がある。

医療計画は都道府県が作成する。地域の病床数を管理しつつ、患者が質の高い地域完結型の医療を受けられる体制を目指している。また、がんや脳卒中など5疾病と救急医療や災害医療など5事業ごとに目標を掲げる。一般的な医療を地域内で完結させる圏域である2次医療圏や病床規制から始まった基準病床数も設定している。

厚労省は検討会で、現行の医療計画の課題として、▽患者の流出入を勘案した2次医療圏と基準病床数▽5疾病・5事業と各種疾病対策▽地域医療構想の位置づけ▽医療・介護連携▽医療従事者の養成・確保──をあげた。

これらの課題のうち、5疾病・5事業の各種疾病対策や医師偏在対策を含む医療従事者の養成・確保に関しては別途、検討している。医療計画に反映できるよう、これらも年内に報告される予定である。

●必要病床数と基準病床数

検討会での大きな課題は、地域医療構想WGが検討する地域医療構想の医療機能別の必要病床数と基準病床数との関係の整理だ。

地域医療構想は高度急性期、急性期、回復期、慢性期に分けて、将来の必要病床数を推計する。一方、基準病床数は一般病床・療養病床の全国統一の算定式で、現時点の需要に見合うよう病床数を算出している(精神病床などは別途推計)。

基準病床数と新たにできた必要病床数の関係はわかりにくいが、性格が違うものと整理されている。基準病床数は現時点の需要をみて、病床数を規制する。

それに対し、必要病床数は将来の需要を見込む。将来の需要であるため、機械的な削減ではなく、医療機関の自主的な取り組みを前提に、需要に見合う病床数に収束させていくとの考えが背景にある。

急性期や回復期など機能別に、地域内の病床数が規制されるとの警戒感が、医療機関側にあるのが、両者の違いが強調される理由の一つである。2025年の病床数は現状よりも20万床程度少なくても賄えるとの全国推計も出ている。医療機能別の必要病床数が、行政の権限で規制される可能性がある。

ただ病床数をめぐる状況は複雑だ。7月29日の地域医療構想WGの初会合では、大阪府の事例が話題になった。

大阪府の病床数は現在8万9,256万床で、6万9,587床の基準病床数よりすでに2万床近く多い。一方、必要病床数は10万1,474床と推計され、1万床ほど増やす必要がある。しかし、すでに基準病床を超えているため、増やせない状況にある。

全国推計と逆の結果になっているのは、今後急速な高齢化が起こる都市部の特色だが、地域により状況が異なることの一例だ。厚労省はいくつかのモデルを示して、議論の材料とする考えを示している。

●地域実態の考慮で賛否

基準病床数と必要病床数を別物として考え、両者を並存させるとしても、基準病床数の算定式をどこまで必要病床数と整合性あるものにするかという課題がある。急性期から回復期病床、療養病床から在宅等への移行などをどこまで見込むかという問題だ。

技術的には、基準病床数の算定式で平均在院日数や病床利用率の数値をどう設定するかということになる。その場合、地域の実態に合わせてきめ細かく設定する方法と、なるべく全国一律に近い数値を使う方法がある。全国一律に近い数値を使うと、地域差の是正が促されるので、WGでは賛否が分かれた。

●在宅医療の増加を想定

療養病床から在宅等への移行に関しては、在宅医療及び医療・介護連携WGで議論が行われている。

在宅医療はこの間、訪問看護の充実などもあり増加しているが、それとは別に地域医療構想では政策によって在宅医療を増やすことを想定している。

増やす数は全国推計で約30万人。一般病床と療養病床で医療の必要性が低い患者の在宅等への移行と療養病床の地域差が是正されることを見込んだ数字だ。それに大きな影響を与えるのが、介護療養型医療施設と看護配置の少ない療養病床の受け皿となる施設の行方であり、社会保障審議会特別部会で協議が進んでいる。

●在宅医療を充実させるための指標を設定

このような状況のもと、医療計画においては、在宅医療を充実させるための指標を設ける。より実効性のある指標とするために、実際に提供したサービスの実績を評価する方向となっている。

例えば、多くの都道府県が在宅療養支援診療所の増加数を目標に掲げているが、実態は在支診でも実績が少ない施設がある一方で、在支診でなくても、在宅医療に積極的な施設もある。

また、医療・介護の連携状況を把握する指標や、介護サービスの整備状況に関する指標を、医療計画においても記載する方向で議論が進んでいる。

医療・介護連携を進める体制をみると、介護に関しては主に市町村が、医療は主に都道府県が担っており、連携を進める上で、行政の役割分担の問題も生じている。そこで、都道府県が市町村の取り組みを支援するよう、介護保険の在宅医療・介護連携推進事業を「施策」の一つとして医療計画で位置付けることを厚労省は提案している。

新専門医制度は30年度スタートに延期

来年度のスタートが予定されていた新専門医制度が1年延期されることになった。日本専門医機構(吉村博邦理事長)が7月25日に決定した。

新専門医制度は、専門医の種類が多く、質の担保が不明確で、患者・国民にとってわかりにくいとの指摘を踏まえ、中立的な第三者機関(日本専門医機構)が統一的な基準で専門医を認定するという仕組みだ。国は関わらずプロフェッショナル・オートノミー(職業的自立性)で運営する。

当初は29年度開始を予定していたが、研修医や指導医が地域の民間病院に来なくなり、医師偏在が拡大して、新臨床研修制度後の混乱が再燃するとの声が高まった。そして今年2月に日本医師会が地域医療への懸念を表明すると、病院団体からも延期を求める意見が相次ぐようになった。

また、学会の新プログラムは、これまでより条件が厳しくなった。それにより症例の集まる大学病院と周辺の大病院でしか研修が受けられず、指導医の大病院への引上げも起こりかねないことから、都市部への医師偏在が加速することも懸念されている。

このため機構は、執行部を刷新した上で、「一度立ち止まる」との方針を打ち出した。

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