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介護事業所の「稼働率」をアップさせるには?

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介護事業の立ち上げを検討している方、あるいは介護事業経営者の皆様。現在、2018年度の介護報酬改定に向け準備と対応、そして新たな経営戦略等を考えていることと思われます。

2018年度介護報酬改定では、社会保障費抑制の観点から、また、「共助」という概念である介護保険においての保険料負担増抑制という視点から、介護事業所においても「アウトカム(成果)」「アウトプット(稼働率)」に特に焦点が向けられています。

改めて今、事業所を経営する上で重要な、経営分析指標「稼働率」に注目が集まっています。

効率化

介護事業所の「稼働率」とは

稼働率計算の前提条件

「稼働率」というのは定員数に対してのご利用者数の割合のことですが、介護事業所の稼働率を考える上での前提条件として、現在の事業所が持つスペック(実施している介護サービスやその受入可能定員等)を把握する必要があります。

事業所で行うすべてのサービスと、その受入可能定員を100%とした場合の事業活動収入が、その事業所の持つスペックの上限ということになります。

経営分析では、平均要介護度との組み合わせが重要

介護報酬はそれぞれのご利用者に対して提供した介護サービスの対価であるため、要介護度が高いほど介護報酬が上がります。経営的な目線としては、平均要介護度も稼働率とセットで考えることが重要です。

入所事業所の役割と稼働率

入所事業所の場合、その役割として、「最重度の要介護者への専門的支援を真に必要としている」ご利用者のニーズに応える、という社会的使命があります。

平均要介護度が高く、稼働率も高い事業所というのは、ただ単に事業活動収入が上がるだけではなく、社会的な視点からも高評価となります。

介護事業所の稼働率の計算方法

稼働率の計算方法と、その低下原因を分析する

稼働率というのは「年間延べご利用者数」÷「年間延べ定員数」×100で計算できます。

例えば、年間延べ入所者数12,000名(毎月行う介護報酬の請求を集計すればすぐに確認できます)で、35名定員の特別養護老人ホームの場合、年間延べ定員数は35名×365日=12,775名となるので、12,000名÷12,775名×100≒94%ということになります。

特別養護老人ホームのような入所事業所は、基本的に入所者が固定される傾向にあるため、稼働率はほぼ100%であることが想定されます。そのため、入所事業所で稼働率が低い場合は、以下のような要因が考えられますので、しっかりと分析することが必要となります。

  1. そもそもその地域にニーズがない
  2. 競合する他事業所との競争あるいはその事業所自体の評判が芳しくない
  3. 職員の人員配置体制が整っていないことによる受入拒否
  4. 入所者の医療機関への入院が多いあるいは入院期間が長い
  5. その他、感染症発生に伴う新規受入の自粛等

通所事業所での低い稼働率には様々な要因があります

基本的に、通所事業所の場合でも、稼働率が低い要因は入所事業所とほぼ同様ですが、事業所の経営方針や機能等により稼働率が低くなる場合があります。

例えば、入所事業所と一体的に運営されている通所事業所で、入所事業所を本体事業として、通所事業はあくまで本体事業の収入を補完する役割(特に入所事業所と同じ人員かつ設備で行える介護サービス系)として明確に位置づけている場合などです。

通所事業は、その時々の状況により受け入れが可能な範囲内で実施している場合があります。社会福祉法人の場合は、改正社会福祉法第24条第2項に規定する地域における、公益的な取り組みの観点から、社会貢献の一環として利益度外視で事業を行っている場合もあります。

いずれにしても、稼働率が低い場合については原因を明確にしてください。

介護事業所の稼働率の平均

全国の特別養護老人ホーム(従来型)の平均稼働率

事業所の稼働率を算出した時、それが果たして高いのか低いのか判断する材料がありません。そこで参考となるのが、独立行政法人福祉医療機構が調査している「特別養護老人ホームの経営分析参考指標」となります。

2015年度決算現在の特別養護老人ホーム(従来型)の平均稼働率を見てみましょう。

2015年度決算現在 特養入所 短期入所
平均入所者数(1日) 67.9名 11.2名
平均定員数(1日) 71.0名/td>

13.4名
稼 働 率 95.6% 83.7%

※独立行政法人福祉医療機構発行「特別養護老人ホームの経営分析参考指標」より

全国と東京都の稼働率の比較から現状を分析する

自治体単位で考えてみると、例えば東京都は平均定員数が全国より17.4名多い88.4名ですが、稼働率が94.2%と全国より1.4%低くなっています。

これは、一つには入所申込の要件が厳格化されたことにより、入所の必要性が特に高いと考えられる「在宅・要介護3以上かつ優先限度高」のご利用者が、2013年度調査段階の6,137人から2016年度調査結果では3,956名へと約36%減少していることが挙げられます。

入所要件を満たす「在宅・要介護3以上」のご利用者についても約24%減少しており、入所ご利用者の確保が厳しくなっています。

もう一つには、職員の人材確保の問題です。労働人口が減少傾向にある上に、日本経済が上向きであることから、就職希望者が介護福祉分野より一般企業に就職する傾向が高くなっています。

そのため、2015年度の介護関連職種の有効求人倍率は4.94倍と、全職業の1.54倍を大きく上回っています。人材の確保が困難となっていることから、入所の空きはあるけれども人員配置上の問題から受け入れを制限せざるを得ないことも稼働率を下げている要因としてあります。

各自治体の詳細なデータについては、すべての事業所を集計して公表している場合(東京都・山梨県など)とそうでない場合があるので各自治体にお問い合わせください。

介護事業所の稼働率をアップさせるには

ネガティブ要因をポジティブ要因に転換させること

稼働率をアップさせる方法は、「介護事業所の稼働率の計算方法」で分析した稼働率低下の原因から導くことができます。

それは、稼働率が低下しているというネガティブ要因をポジティブ要因に転換させればよいのです。「介護事業所の稼働率の計算方法」で記載した一例をもとに考えてみたいと思います。

そもそもその地域にニーズがない

裏を返せば地域拠点となり得るので、行政機関や他地域の居宅介護支援事業等と連携して地域拠点として売り込む。余力を活かし、通所系サービスなどの新設、ニーズの掘り起こしなども検討する。

競合する他事業所との競争あるいはその事業所自体の評判が芳しくない

競合する他事業所との相違点、あるいは自社の事業所のブランドを積極的にアピールする。

職員の人員配置体制が整っていないことによる受入拒否

広く人材確保を図る観点から、職員採用に際し人材紹介会社等の活用など採用ツールを強化する。

入所者の医療機関への入院が多いあるいは入院期間が長い

日常の健康管理、重病化する前にすぐに通院ができるよう医療機関との連携、協力医療機関の確保を行う。 

様々な可能性を秘めている短期入所事業

「介護事業所の稼働率の平均」で短期入所事業についても紹介しましたが、短期入所事業は様々な可能性を秘めています。

特に空床型である場合、入所ご利用者が入院や長期帰宅等により空いた部屋を、他ご利用者の受け入れに利用することができます。短期入所の利用率は全国平均で83.7%でした。これは16.7%がまだ受入の余裕があることを意味します。

短期入所を利用するご利用者は、施設入所の待機中であるため、短期入所を繰り返す方もいれば、介護するご家族の方が入院や用事で急きょ短期での入所が必要な方など理由は様々です。

しかし、一つだけ共通していることは、「早急に短期入所サービスを利用したい」ということです。定員に空きがある場合は、積極的に受け入れることが重要です。

短期入所事業のご利用者受け入れの体験談

私の勤めた事業所の体験談を紹介します。短期入所に空きが続いていた時期があったため「現在、空きがあるので短期入所の受入が可能です」と各関係機関をくまなく営業しました。すると、営業した翌日から電話が鳴り響き、嬉しい悲鳴を上げたことがありました。

先述の通り、短期入所の利用希望者は基本的に緊急性の高い方々が多いです。そのため、お互いの利害がすぐに一致しますので、広告媒体よりも直接関係機関へ営業を行う方が、効果的だと感じさせられたエピソードです。

まとめ

稼働率が低いということは、いわば「社会的資源を損失させている」ことでもあるので、積極的にご利用者の受け入れを行うことが、稼働率を上げるだけではなく超高齢化社会の社会的課題の解決にもつながります。

ぜひとも稼働率が100%になるよう事業所の体制を整備し、積極的にご利用者の受け入れを行ってほしいと思います。

参考になった方は、ぜひともシェアしていただけると嬉しいです。

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