訪問介護の窃盗疑惑対策 〜「ヘルパーが盗んだ!」と言われたら〜

テーマ 【コラム】外岡潤  2017-04-28
訪問介護では、ご利用者のお金や貴重品等が紛失し、担当ヘルパーが疑われる等「盗った、盗られた」の問題が起きがちです。認知症のご利用者であれば、実は物盗られ妄想による濡れ衣事件ということもあり、慎重な判断が必要となります。事業所としてはどのような点に気をつけ、対策を講じるべきでしょうか。

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まずは先手で契約時に説明を

 本コラムで繰り返しお伝えするように、何事も先回りして問題を予防しようとする「先手」の姿勢が大切です。今回の窃盗という問題に関しては、先手で何ができるでしょうか? 考えてみてください。

 「ヘルパーを教育し、窃盗は犯罪であることを叩き込む!」……それは確かにそうですね。ただ余りに社会人として当然すぎる内容であり、登録ヘルパーは犯罪予備軍でも無いでしょうから、いちいちそのような社会の常識を教えるまでも無いと思います。

 正解は、「万が一にも窃盗をする気が起きない環境をつくる」です。人間は弱い生き物ですから、自分しかいない部屋で目の前に札束があれば、「一枚くらい抜いても分からない」という悪魔の囁きに負け、つい手を出してしまうかもしれません。部屋の中をそのような危険な環境にしないよう、例えば契約時にご利用者にお願いするのです。

 こんなご利用者はいないでしょうか。お金の管理がルーズで、所構わず一万円札を裸で置いている。年金の入った封筒が机の上に出しっぱなし。あるいは、通帳や印鑑の隠し場所をしょっちゅう変えるので、自分でもどこに仕舞ったか分からなくなる……ご高齢で、認知症ともなれば致し方ないところもあるのですが、一人暮らしであればそれこそ悪い輩に盗まれる危険があり、見てみぬ振りはできません。

 お一人で、かつ財産管理ができそうもない場合は成年後見制度を申し立てたり、市区町村の実施する地域権利事業に繋げることが解決策として考えられますが、もしご家族がいたり、お一人でも判断力がある程度ある方であれば、次のようにサービス開始前にお伝えするようにすると良いでしょう。

契約段階でのご利用者への説明の仕方

 「訪問介護は、ご利用者様一人ひとりのプライベートな空間にどうしても立ち入らざるを得ないお仕事です。生活援助で、お掃除等させて頂くと、ご自身にとって都合のいいものの配置や重ね方などが変えられてしまい、勝手が違ってしまうこともあるかもしれません。ですから、ヘルパーが掃除などをするときに「これは注意してほしい」という点がございましたら、何でも事前にお伝え頂ければと思います。全てに対処しきれるかは分かりませんが、できる限り配慮させて頂きます」

 「それと同時に、例えば現金や宝石類など、貴重品は厳重に決められた場所に保管頂き、紛失や盗難の疑いが生じない様な環境づくりに、ご協力をお願い致します。勿論うちのヘルパーが盗みを働くということは御座いませんが、後から「もしかして」と思えてしまう様な状況ですと、お互いに嫌な思いをすることにもなりかねませんので、貴重品の管理だけはご自身でしっかりと行って頂きたいと思います。宜しいでしょうか」

 「君子は瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず」という故事成語があります。瓜(うり)畑で、わざわざしゃがんで履き物を直すようなことをすれば瓜を盗んでいると疑われるし、李(すもも)の木の下で冠をかぶり直せば、これを盗んでいると疑われてもおかしくない。だから賢い人はそのような紛らわしいことはしないという意味です。「人に疑いをかけられるような言動は慎むべき」とも言い換えられます。

 訪問介護の現場は、正に瓜畑、李の果樹園といえるかもしれません。金品以外にも、トイレットペーパーや洗剤等、少しずつちょろまかそうと思えばできてしまうもので溢れています。そのような環境を、少しでも間違いの起きないものとすべく、せめて現金の管理だけはしっかりして頂く様協力を求めることが重要であると考えます。勿論、ちゃんと隠し場所を決めて管理できているご家庭は何も問題ないのですが……。

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