地域包括ケア時代に、医療と介護は何を求められるか?―2.「ケアの質と倫理」

よりよい在宅医療のプラットフォームを作るために、医療や介護など、多職種がともに学び合う定期研修会・在宅医療カレッジ。その特別企画『地域包括ケア時代に求められる医療と介護の役割』で交わされたディスカッションが非常に興味深い。各界の名だたる専門職が一堂に会し、3つのテーマで、それぞれ熱い意見を放つ。2つめのテーマは「ケアの質と倫理」。経営理念から職員の給料にまで切り込むパネリストたちの冴えわたる意見のエッセンスに、耳を澄ませてほしい。

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在宅医療カレッジとは?

よりよい在宅医療、地域連携を実現するため、在宅医療に関わる多職種がともに学び、知識や交流を高めていく定期研修会。医療法人社団悠翔会が企画・運営。

今回のパネリスト(50音順)

●浅川 澄一 ジャーナリスト(元日本経済新聞編集委員)

●加藤 忠相 株式会社あおいけあ代表取締役・慶應義塾大学客員講師

●亀山 大介 厚生労働省医政局地域医療計画課 救急医療対策専門官/医師

●川島  実 前本吉病院院長/医師

●木村 弥生 衆議院議員(前日本看護協会 政策秘書室長)

●小早川 仁 学研ココファンホールディングス代表取締役社長

●下河原忠道 株式会社シルバーウッド代表取締役社長

●西村 周三 医療経済研究機構所長(前国立社会保障・人口問題研究所所長)

●平井みどり 神戸大学医学部教授・神戸大学医学部附属病院薬剤部長

●野島あけみ 楓の風グループ副代表/保健師

モデレータ●佐々木 淳(医療法人社団悠翔会理事長・診療部長/医師)

カレッジ学長●町亞聖(フリーアナウンサー)

職員と目的意識を共有することがケアの質を高めることにつながる

小早川 ケアの量と質、両方を実現することは難しいが、量の拡大が、質を高めることに寄与すると考えている。企業は、その企業の普遍的な価値観、経営理念を実現するために、事業を拡大していく。そして、全スタッフがその理念を共有することで質も高まっていくと考える。

また、介護離職をゼロにしたいと考えるが、それにも量の拡大が必要になってくる。量を拡大し、資金を集める。ではその際に、質の担保をどうするか? 経営理念を共有して全スタッフ、社員一人ひとりが、自分の働いている会社が何を実現するために事業をやっているのか、明確に共有できていることが大事。社長は、お金がないときは、銀行を出し抜いてでも金を持ってこないといけない。さらに、スタッフを最後まで信じ、スタッフに逃げ道をつくってやることも大切だ。たとえばカメラの設置を入居者に求められた場合。その目的を、スタッフを守るためにやるならよいが、スタッフの悪を暴くためだったら、だめというふうに。

野島 私が携わる訪問看護の質についても、看護そのものの質というよりは、「自分たちが世の中に何をしていきたいのか」、旗を上げて、そこに集まってくる人が同じ夢を共有することが大切と感じている。中心に置くのは、「目的」だと思います。

また、医療や看護に対して、「地域での安心・安全」とよく言いますが、すべてに安心して何も不安がない、などということはありえない。生きていくことは、ある意味不安があること。不安を取り除く、穴を埋めるということではなくて、今日生きていることの価値を作って行くことが大事です。患者さんも家族もそれを喜んでくれる。「安心・安全」を言ってしまったら、ナースコールひとつで飛んできてくれる施設のほうがいい、となってしまい、在宅は難しくなる。

患者さんは病衣を着ると患者になり、病衣を脱ぐと自分らしくなる。「本当はこう生きたいよね」ということが言える社会がいい。

野島あけみさん( 楓の風グループ副代表/保健師)

佐々木 目的共有がコアであるという点で、小早川さんと野島さんの意見は共通していますね。在宅と施設とでは目的意識が違う。したがって、在宅では規模優先ということは考えにくい。

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みんなのコメント

  • 家族だけで支えあうことは難しいと思います。認知症が取り上げられるようになり、一緒に暮らす人の気持ちや、労力は言葉では言い尽くせません。他の人がその人のタイミングで・・理想はそうです。実際にそれが出来たらどんなに良いかと考えます。
    1週間介護施設やご自宅ケアの現状をご覧になってください。
    人はいずれ死んでいきます。その時が穏やかでありたいと思います。

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