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介護マスト

おさえておきたい医療・医療保険情報 No.1

2016-09-02 15:09 カテゴリ[おさえておきたい医療・医療保険情報] 閲覧数[100]

介護・医療連携の推進に向けておさえておきたい医療・医療保険関連の最近の動きを紹介します。


社会保障関係費の抑制で高額療養費など見直しへ

政府は来年度予算編成に向け、社会障関係費を抑制するための議論を進めている。医療分野では年末までに一定の結論を得る必要のある検討テーマとして、高額療養費制度がある。さらに、入院時の光熱水費、外来時の定額負担などの検討も要請されている。中長期的には、医療提供体制の効率化やデータを使った保健事業の強化の効果も期待するが、来年度に効果を出せる政策が求められている。


●これまでの経緯


政府は2020年度までの基礎的財政収支の黒字化を目指している。基礎的財政収支とは、国の国債費を除いた歳入と利払い費を除いた歳出の収支のこと。2018年度はその進捗度合を評価する年度だが、消費税の再延期もあり、財政健全化の達成は、より難しい目標になりつつある。


財政健全化の目標達成のカギを握るのが、社会保障関係費の抑制だ。2016~18年度の3年間の目標を設定し、社会保障関係費の伸びを3年間で1.5兆円程度に抑えるとしている。


社会保障関係費は高齢化により、主に医療、介護、年金で増える。しかし特に医療では高齢化以外の伸びの部分も大きく、「医療の高度化等」と言われる。


昨年6月に閣議決定した骨太方針2015では、過去3年間の歳出抑制努力により、給付増が3年間で1.5兆円程度にとどまり、高齢化相当分の伸びに抑えられたと指摘。それを踏まえ、2016~18年度の3年間も、同程度の伸びに抑えられるとし、目標を設定した。


過去の機械的な歳出抑制策が政権批判を招いたため、抑制の「表現」については慎重を期している。


今年度予算では、社会保障関係費が6,700億円伸びると見込まれたため、1,700億円削った。それを主に診療報酬改定で達成した。医科本体は一定のプラス改定を確保しつつ、一定規模以上の売り上げのある医薬品の薬価引き下げや調剤報酬の適正化などを行って財源をねん出した。


来年度予算案も、社会保障関係費の伸びを5千億円程度に抑えることが目標となりそうだ。その場合、来年度中の抑制効果が期待できる改革が求められる。その候補は、骨太方針2015に盛り込まれた「経済・財政一体改革」に記されており、その改革工程表に沿って検討が進んでいる。


●改革工程表のポイント


改革工程表によると、医療・介護分野では、年末までに結論を得て、今年度中に必要な措置を講じる項目として、(1)高額療養費制度(月額負担上限)の見直し(2)高額介護サービス費(月額負担上限)の見直し(3)軽度者に対する福祉用具貸与・住宅改修に係る給付の適正化の3点がある。


一方、年末までに結論を得るが、法改正を含め具体的な措置は来年度に行う項目としては、▼入院時の光熱水費負担の見直し▼かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担▼介護保険の利用者負担のあり方▼介護納付金の総報酬割▼金融資産等を考慮した負担を求める仕組みの医療保険への適用拡大──などがある。


これらの項目は、厚生労働省の関係審議会などで取り上げられ、秋以降に議論が本格化する見込みだが、7月14日に開かれた厚労省の社会保障審議会・医療保険部会では、高額療養費制度が議題となった。


●高所得の高齢者に負担増


(1)高額療養費制度は、医療費の自己負担に月額上限を設けているもの。自己負担割合は高齢者などを除き3割だが、医療費が高額になっても通常9万円以下に抑えられている。


ただし70歳以上の高齢者はその半額程度に抑えられ、外来の負担上限も設定されている。また、現在、段階的に70~74歳の自己負担割合の2割への引上げが進んでいるが、自己負担割合が1割である75歳以上の高齢者と、負担上限が同じであることは不合理だと指摘されている。


高額療養費制度は、「世代間・世代内での負担の公平を図り、負担能力に応じた負担を求める観点」から、見直しを図るとされており、所得のある高齢者の負担上限が見直される方向だ。ただし、その医療費抑制効果は限定的との指摘がある。


(2)高額介護サービス費(月額負担上限)は、高額療養費制度の改革に準じて行われると考えられる。


来年度に具体的な措置を講じる入院時の光熱水費負担の見直しについては、介護保険施設の入所者にあわせて、入院患者の自己負担を引き上げることが検討課題となる。


しかし昨年の医療保険制度改革法の成立で、今年度から段階的に、入院時の食事代が引き上げられることになったばかりであることから、批判もある。


外来受診での定額負担は、財務省が導入を図り何度も検討課題にあがりながら、医師会など関係者の合意が得られず、見送られてきた。例えば、受診時に定率負担とは別に、100円を定額で支払うことなどが検討されていた。


今回の提案では、「かかりつけ医以外を受診した場合」と限定つきになっている。だが何をかかりつけ医と認定するかについては、様々な意見があり、意見集約は容易でない。また、フリーアクセスの制限にもつながる恐れがあるとの指摘もある。


●今後のスケジュール


政府は近く、社会保障関係費の見込み額を推計し、社会保障以外を含めた予算全体の枠組みを示す。各省庁はそれを受け、8月末までに予算要求・要望案をまとめる。その後、年末まで財務省との予算折衝が行われることになる。


今年度予算では1,700億円だったが、来年度予算案では、どれだけ社会保障関係費の伸びを圧縮する必要があるかが注目される。


その手段は、前述のとおり、医療分野では、高額療養費制度が候補だ。他の分野も含め、社会保障関係費全体で目標額を達成することになるが、全体像は12月下旬に決まる。なお政府は、秋の臨時国会に大型補正予算案を示す方針も示している。本予算で社会保障関係費を圧縮する一方で、補正予算での計上も期待される。


外来の診療室で別料金選定療養の対象を拡大

厚労省は、医療機関で医療を受ける際に、保険外で自己負担するサービスの変更を6月24日に通知した。透析外来での診療室代や検査の当日キャンセル料を患者から徴収できることなどを明確化している。


公的医療保険では、保険と保険外の医療を併用する混合診療は基本的に禁止されている。例外的に、保険外併用療養費制度という仕組みがあり、併用を認めている。保険外併用療養費には先進医療などの評価療養と、いわゆる差額ベッド等の選定療養などがある。


今回変更したのは選定療養で、差額ベッドに関しては入院だけでなく、外来でも「特別の料金」を請求できるようにした。透析治療など長期にわたり行われる治療で、療養環境が整った診療室の場合、別料金を設定できる。


検査の当日キャンセル料も患者に請求できることを明確化した。高額な薬剤の準備が必要なPET(陽電子放射断層撮影)などを想定し、医療機関に逸失利益が生じた場合に、損害の範囲内で請求できる。がん患者を対象にしたかつらの貸与や化粧の方法の講習の費用も別料金にできることを明確化した。


医療保険外の予防接種と同様に、入院中に治療中の疾病とは直接関係なくタミフルやリレンザといった感染症予防の薬を投与すると別料金になるとした。


患者の不安を軽減する必要がある場合に診療報酬の回数制限を超えて行われる腫瘍マーカー検査についても、その対象範囲を広げ、PSA(前立腺特異抗原)などを加えた。


「介護保険情報」8月号より(発行元:株式会社社会保険研究所)