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介護マスト

おさえておきたい医療・医療保険情報 No.8

2017-02-28 10:38 カテゴリ[おさえておきたい医療・医療保険情報] 閲覧数[37]

介護・医療連携の推進に向けておさえておきたい医療・医療保険関連の最近の動きを紹介します。


入院、外来、在宅の見直しを総論的に議論

 厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)が1月11日以降、次期診療報酬改定に向けた検討を進めている。すでに入院医療、外来医療、在宅医療について総論的に議論した。入院では地域医療構想との関係、外来と在宅では情報通信技術の活用をめぐり、活発な議論が行われた。


●遠隔医療への対応


 はじめに外来医療と在宅医療については、情報通信技術を活用した遠隔医療で、診療側と支払側の意見が分かれた。政府全体では遠隔医療推進の方向で、医療の質向上が見込めるサービス提供モデルの診療報酬上の評価を、今後検討していくことになっている。

 例えば、政府の規制改革会議や未来投資会議、保健医療2035などが、ICT、AI等を活用し、遠隔医療を推進することを求めている。特に規制改革会議は、遠隔診療で初診料を算定できるよう、具体的な見直しを要請している。

 一方、医師法は、医師と患者が対面して診療するのが原則と定めている。厚労省は、その範囲内で遠隔医療の是非を解釈する。

 その場合、直接の対面診療と代替できる程度の患者の心身の状況であれば、遠隔医療は医師法に抵触しないとする。直接の対面診療が困難であり、なおかつ代替が可能と判断されれば、離島・へき地などの場所、在宅酸素療法や難病、がんなど9種類の患者の状態に該当した場合に、遠隔診療ができると例示している。

 診療報酬の取扱いでは、この場合、再診料等は算定できるが、初診料は算定できない。遠隔診療だけで診療を完結させることは、対面診療の原則に抵触するからだ。「遠隔診療はあくまで補完的な役割。診療報酬上の評価は、対面診療に比べて患者へのサービスの質が上がるという科学的なデータが必要」というのが、厚労省の考えだ。

 厚労省は、「近年、遠隔診療や遠隔モニタリング等で、画像転送による診断や在宅における療養指導・助言に加え、慢性疾患の重症化予防や健康指導・管理といった多様なサービス提供モデル」の試行があると指摘。サービスの質向上が認められる科学的なデータがあれば、新たなサービス提供モデルを診療報酬で評価するとの方向性を示した。

 しかし、遠隔医療をめぐっては、推進に消極的な診療側と積極的な支払側で認識の隔たりが大きい。

 2月8日の中医協の総会では、支払側の委員が「ICTの活用が医師と患者のあり方を変える。慎重にではあるが、推進していくべき」、「高血圧の患者のモニタリングなどは、遠隔診療で代替できる」と主張した。しかし診療側は「ICT、AIを医療に活用すること自体は否定しない」としつつも、「対面診療をスマホに代替させることには反対」と述べた。


●病床の適正化


 入院医療では、診療報酬と地域医療構想の関係がポイントの一つだ。団塊の世代が75歳以上になる2025年になっても、制度を持続可能としサービスの質を向上させるため、医療機能の分化・連携を進め、地域包括ケアシステムを構築するという目的は同じだ。両者ともその手段となる。

 診療報酬が直接、医療機関の収入に影響を与えるのに対し、地域医療構想は医療機関の自主的な取組みが基本となる。

 具体的には、人口減少・高齢化の影響も医療資源も地域ごとに異なることを踏まえ、2次医療圏単位の構想区域における調整会議で検討し合意を得ることで、将来的に必要となるサービス需要に医療提供体制を適合させることを目指す。

 急性期の病床は、現状でも多くの地域で過剰になりつつある。病床稼働率が低下し、急性期病床から回復期への転換は進んでおり、「診療報酬で誘導しなくても、地域医療構想による自主的な取組みで目指すべき姿に収れんされる」。診療側の委員は1月25日の中医協総会でこう主張した。しかし支払側の委員は、診療報酬改定による一定の誘導が必要との考えを示した。

 厚労省は、「地域医療構想に診療報酬がどう寄り添うかは議論になる」と回答した。診療報酬で誘導するのか切り離して考えるのかの両極ではなく、地域医療構想の取組みを横目でみながら、両者の整合性を図るための議論を促した形だ。

 地域医療構想との整合性の問題は、急性期病床を代表する7対1入院基本料を次期改定でどう見直すかの議論につながる。28年度改定で要件を厳しくしたことで、回復期機能に位置づけられる地域包括ケア病棟への移行が進んでいる。30年度改定でさらに要件を厳しくすれば、一般病床の約半数を占める7対1から回復期への移行が加速すると見込まれる。

 介護療養病床の受け皿となる施設の創設を踏まえた療養病床の取扱いも議論になった。介護療養病床と同じく人員配置基準の特例を受けている医療療養病床も、30年3月末に経過措置の期限を迎える。介護療養病床の移行では、6年間の経過措置が設けられることになったため、医療療養病床についても6年間の経過措置を求める意見が出た。

 医療療養病床には、看護配置が20対1と25対1の病棟があり、経過措置で存続している25対1は、28年度の診療報酬改定で厳しい要件が設定された。ただし医療区分の要件と看護職員の配置基準が満たせない場合に限り、5%減算した特例の算定を認めた。この病棟の6年間の延長を求める意見が出ている。


●高額薬剤への対応も課題


 27年度の概算医療費の総額は41.4兆円で対前年度比は3.8%増と、最近では比較的高い伸び率となっている。特に調剤は9.4%増で突出。入院1.9%増、入院外は3.3%増で入院外の伸びが高かった。入院外と調剤を合わせると5.4%の伸びである。

 医療費は高齢化を背景に増えている。しかし27年度は3.8%増のうち1.2%が高齢化の影響で、残りの2.7%は医療の高度化等の伸び。高齢化以外の寄与が大きい。特に、ハーボニーやソバルディなどC型肝炎治療薬の画期的新薬の保険適用の影響が大きかった。また、高額な医療機器を用いる医療技術の保険適用も進んでいる。

 中医協では、このような状況を踏まえ、高額な医薬品や医療機器、医療技術が医療費に与える影響を踏まえた議論を進めている。

 医薬品については、昨年12月に「薬価制度の抜本改革の基本方針」が4大臣会合で決まった。これに基づき、今年末までに抜本改革案を固める。

 高額薬剤に効能追加があり、さらなる売上げが見込まれる場合には、最大年4回の機会を使って、薬価を引き下げる案などを検討している。

 また、抗がん剤のオプジーボ(小野薬品工業)とキイトルーダ(MSD)について、医療経済的な観点から使用の適切性を考えてもらう最適使用推進ガイドラインが2月8日の中医協総会で了承された。

 現在、試行的な運用を行っている費用対効果評価の仕組みについては、「薬価制度の抜本改革の基本方針」を受け、30年度の本格的な導入に向け、議論を加速させることになった。医薬品と医療機器、高額な医療機器を用いる医療技術が対象になる。費用対効果の低い医薬品などの価格を下げることを念頭に議論を進めてきたが、基本方針では、費用対効果が高い場合には、価格を引き上げることの検討も求めている。

 革新的な医薬品などを開発するインセンティブを高めるためだが、診療側の委員は開発意欲を高めるための報酬は、医療保険ではなく、補助金で行うべきと主張している。また、医療費のうち、高額薬剤の影響などを除いた調剤医療費の伸びが高いことを問題視する意見も出ている。